改訂新版 世界大百科事典 「勢道政治」の意味・わかりやすい解説
勢道政治 (せいどうせいじ)
朝鮮の李朝において,国王の信認を得た特定の人物や集団が政権を独占する場合を指し,世道(せどう)政治ともいう。こうした人物や集団は王室と血縁関係か婚姻関係にある外戚の場合が多く,正祖時代(1776-1800)の洪国栄(1748-81)以来,外戚の勢道政治が李朝末期まで続いた。とくに純祖(在位1800-34)以降は幼少の国王が相ついだため勢道政治に拍車をかけ,安東金氏(純祖,哲宗の両時代),豊壌趙氏(憲宗時代),驪興閔氏(高宗時代)などによって政権の私物化が行われた。その結果,国内の政治紀綱は腐敗し,おりから強まった欧米など列強の外圧への的確な対応が困難となった。ことに,内外情勢が一段と険悪化した19世紀後半の閔氏の勢道政治は,国家的利害からではなく,大院君と対立する閔氏一族の私的利害から政策決定を行ったため,朝鮮の自立的近代化を大いに損ねた。
執筆者:原田 環
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報