精選版 日本国語大辞典 「勲章」の意味・読み・例文・類語
くん‐しょう ‥シャウ【勲章】
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種類 | 授与対象 |
大勲位菊花章 大勲位菊花章頸飾 大勲位菊花大綬章 | 旭日大綬章または瑞宝大綬章を授与されるべき功労より優れた功労のある者 |
桐花大綬章 | 同上 |
旭日章 旭日大綬章 旭日重光章 旭日中綬章 旭日小綬章 旭日双光章 旭日単光章 | 国家または公共に対し功労のある者:功績の内容に着目し、顕著な功績を挙げた者 |
瑞宝章 瑞宝大綬章 瑞宝重光章 瑞宝中綬章 瑞宝小綬章 瑞宝双光章 瑞宝単光章 | 国家または公共に対し功労のある者:公務等に長年にわたり従事し、成績を挙げた者 |
文化勲章 | 文化の発達に関し特に顕著な功績のある者 |
宝冠章 宝冠大綬章 宝冠牡丹章 宝冠白蝶章 宝冠藤花章 宝冠杏葉章 宝冠波光章 | 外国人に対する儀礼叙勲など特別な場合に、女性にのみ授与 |
国の栄典の一つ。国家または社会公共に対して優れた功績をあげた者を表彰するために国から与えられる名誉の標章。
[内閣府賞勲局]
日本においては、封建時代以前から勲位制度もあったが、これは名誉の称号で、勲章とは異なった制度であった。西洋に起源をもつ勲章が日本で活用されたのは、1867年(慶応3)にパリで開催された第5回万国博覧会の開会式当日、薩摩(さつま)藩が皇帝ナポレオン3世をはじめ文武官に贈った「薩摩琉球(りゅうきゅう)国勲章」(鹿児島市の尚古(しょうこ)集成館、鹿児島県歴史資料センター黎明館に保存)である。この勲章は、フランスのレジオン・ドヌール勲章を見本としてパリで製作され、赤い星形の中央に丸に十字の島津家の定紋を白く浮かし、星の間に薩摩琉球国の5字を配し、朱色の綬(じゅ)(リボン)をつけ、裏面に「贈文官兼武官」と記してあり、これが日本最初の勲章といわれている。
一方江戸幕府においても、薩摩藩の成果を見聞することにより、勲章制度の必要を感じ、勲章制度の調査研究を開始して、その図案を検討していたが、維新の混乱で実現されることはなかった。
明治新政府が成立し、外国使臣の訪日、政府高官の外国視察などによって、勲章の意義、価値が認識され、1871年(明治4)新政府は、賞牌(しょうはい)(勲章)制度の審議を左院(立法機関)に諮問して検討を始め、73年に「メダイユ」取調掛(がかり)を置き資料収集、調査研究にあたらせ、75年に勲等賞牌が制定された。これが現在の勲一等から勲八等までの旭日(きょくじつ)章で、翌年に勲章と改称された。ついで76年に、勲一等の上位の称号として大勲位を設け、これに対応する勲章の菊花大綬章および菊花章(菊花大綬章の副章)が増設された。その後88年に、叙勲制度の運用を容易にするため、諸外国の例に倣って、宝冠章、瑞宝(ずいほう)章、旭日桐花(とうか)大綬章および菊花章頸飾(けいしょく)が増設された。90年に忠勇を奨励する趣旨で金鵄(きんし)勲章が創設されたが、1947年(昭和22)の日本国憲法施行とともに廃止された。また1937年(昭和12)に、学術、芸術上の功績者に対して授与される文化勲章が制定された。
[内閣府賞勲局]
現行の日本の勲章制度は、文化勲章を除いて、大勲位を最高とし、その下に勲一等から勲八等までの8等級の勲等に区分され、この勲等に相当する勲章が授与される。この制度は、日本の古制(勲位)を参考として外国の例に倣ったものである。菊花章には、大勲位菊花章頸飾(最上級)と大勲位菊花大綬章がある。旭日章には、勲一等から勲八等まであり、勲一等のうちに旭日桐花大綬章(旭日章の最上)と旭日大綬章、勲二等は旭日重光章などのようにそれぞれ名称がつけられている。宝冠章および瑞宝章も、勲一等から勲八等までがある。なお、宝冠章は女性のみに授与される。
文化勲章は、勲等別がなく単一級である。金鵄勲章は、他の勲章の勲等に相当する功級があって、7等級に分けられていた。
[内閣府賞勲局]
菊花章の頸飾は、制定年代の「明治」の文字を古篆(こてん)で表し、菊の花と葉をあしらっている。菊花章は、その周囲に菊の花と葉をあしらい、中央は日章をかたどっている。旭日章は、旭日をかたどり、桐の葉をあしらっている。なお、勲七等、勲八等は桐の花と葉をあしらい、日章はない。宝冠章は、古代女帝の宝冠を模し、鈕(ちゅう)(つまみ)の部分に桐(きり)(勲一等)、牡丹(ぼたん)(勲二等)、蝶(ちょう)(勲三等)、藤(ふじ)(勲四等)、杏(あんず)(勲五等)、波紋(勲六等)をかたどっており、これは古代女官の衣紋(えもん)から取り入れた(勲五等以上の宝冠章には真珠がちりばめてある)。瑞宝章は、中央に宝鏡を模し、周囲は光線をかたどっている。文化勲章は、橘(たちばな)と勾玉(まがたま)をあしらっている。
[内閣府賞勲局]
勲章創設当時は、論功行賞として明治維新および西南戦争の勲功者がおもに叙勲されたが、1883年(明治16)に叙勲条例が定められ、一定年限、文武官の官職にある者の叙勲および勲等の進級に要する在職年数が定められるとともに、年2回定期的に叙勲の道が開かれた。その後86年に皇族叙勲内則、また88年に外国人に対する叙勲の標準として外国人叙勲内則、勲章が増設されたことによる叙勲条例の改正があり、92年の官吏制度の大改革に伴って、従前の内規の運用が困難となったため、新たに叙勲内則が定められ、これが1946年(昭和21)までの間、部分的改正はあったが叙勲基準となって運用された。1915年(大正4)に年2回の叙勲を月1回実施することに改め、19年には、叙勲内則に準じて貴族院議員、衆議院議員、市町村長および市町村助役に対する叙勲の方針が決定された。また同年には、女性の功労ある者に瑞宝章が授与されることとなった。日清(にっしん)戦争以後の論功行賞は、そのつど賞賜内規が定められて実施された。文化勲章は、原則として年1回授与され、現在に至っている。
1946年(昭和21)に官吏制度の根本的な改革などのため、従前の叙勲内則の運用が困難となり、生存者に対する叙勲は停止となった。53年の天災を契機に、緊急を要するものについて叙勲が一部開始された。63年に官公吏を中心とした従前の叙勲の運用を改め、各界各層の功労者を対象とする生存者叙勲開始の方針が閣議決定され、翌64年4月に叙勲基準(内規)を定め、4月29日に第1回の叙勲が実施された。以後、春は4月29日(みどりの日)、秋は11月3日(文化の日)に行うことが慣例となり、99年春までに延べ71回、約26万7000人が叙勲されている。なお、64年に第二次世界大戦における戦没者に対する叙勲の方針が決定され、毎月叙勲が実施されて、99年までに約205万人の叙勲が実施されている。
[内閣府賞勲局]
勲章は西ヨーロッパに発祥した制度で、十字軍遠征の際、12世紀、聖地エルサレムに設立された宗教騎士団religious orders of chivalryの標章に由来している。今日、勲章のことを英語で「オーダー(order)」というのはこの由来のためである。現在、勲章制度は西ヨーロッパのみならず世界各国で採用されているが、勲等を表す名称は、おおむね騎士団に由来するものが用いられている。勲等は5階級が一般的で、その上に最高勲章たる頸飾(けいしょく)がくることもある。5階級の勲等は、グランド・クロスgrand cross、グランド・オフィサーgrand officer、コマンダーcommander、オフィサーofficer、ナイトknightの順になっていることが多い。3階級、単級の勲章もあり、勲等を金星、銀星等で表すものもある。
頸飾は、正章をのど下に、副章を左胸に着用し、一等勲章は大綬を右肩から左脇(わき)に下げて正章をつるし、副章を左胸に着用し、二等勲章は右胸に、三等勲章は中綬でのど下に、四等以下の勲章は小綬で左胸に着用する方法が、ほぼ各国勲章に共通している。
イギリスには、1348年に定められたガーター勲章(単級)をはじめ、シッスル勲章(単級)、バース勲章(3階級)、功労勲章(単級)、聖マイケル聖ジョージ勲章(3階級)、王室ビクトリア勲章(5階級)、英帝国勲章(5階級)などがある。
フランスには、ナポレオン第一執政が1802年に制定したレジオン・ドヌール勲章(5階級)が存続しており、ドゴール大統領が1963年に制定した功労勲章(5階級)がある。そのほか各省の勲章の一つとして、文化大臣の芸術文学勲章(3階級)などがある。
ドイツの国家勲章としては、1951年に設けられたドイツ連邦共和国功労勲章(3階級、8等級)のみがある。科学芸術功労勲章(単級)は学術芸術団体の勲章である。
アメリカ合衆国には、勲章制度がなく、記章制度しかない。そのほとんどが軍関係のものであるが、大統領が授与する民間人を対象とするメダルには自由記章および国家安全保障記章があり、軍功勲章では各軍名誉章、同銀星章がおもなものである。
旧ソ連にはレーニン勲章、赤旗勲章など多くの種類の勲章があったが、ソ連崩壊後、現在のロシアでは勲章制度は確立していない。ソ連時代の勲章を恣意的に運用している。
オランダには、獅子勲章(3階級)、オラニエ・ナッソー勲章(6階級)、オラニエ家勲章(6階級)などがある。デンマークには単級の最高勲章である象勲章と、6階級のダンネブロー勲章がある。スウェーデンには、単級の最高勲章であるセラフィム勲章のほか、5階級の北極星勲章がある。
ブラジルの代表的勲章は、6階級の南十字星勲章と、5階級のリオ・ブランコ勲章である。
韓国には無窮花大勲章(単級)、建国大勲章(3階級)、武功勲章(5階級)、修交勲章(5階級)、文化勲章(5階級)、体育勲章(5階級)などがある。
中国には、現在、勲章制度は存在しない。
[外務省大臣官房儀典官室]
『藤樫準二著『勲章』(1972・保育社・カラーブックス)』▽『毎日新聞社編・刊『勲章』(1976)』▽『那珂馨著『勲章の歴史』(1973・雄山閣出版)』
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…その歴史は古く,1869年(明治2)太政官に造幣局が設けられたが,同年,造幣寮と改称,77年にふたたび造幣局となった。造幣寮は,1871年大阪で創業され,当時としては画期的な洋式の機械設備により貨幣の製造を開始し(〈大阪造幣寮〉の項参照),その後勲章の製造,貴金属の品位証明等,逐次事業の範囲を拡大し今日に至っている。大阪市所在の本局のほか,東京支局(1879東京出張所設置,1943支局昇格)および広島支局(1945設置)があり,いわゆる四現業の一つとして造幣局特別会計により運営され,定員は1475人(1997年度末)である。…
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