包丁人(読み)ホウチョウニン

デジタル大辞泉 「包丁人」の意味・読み・例文・類語

ほうちょう‐にん〔ハウチヤウ‐〕【包丁人】

料理人。また、料理名人包丁師包丁じゃ

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精選版 日本国語大辞典 「包丁人」の意味・読み・例文・類語

ほうちょう‐にんハウチャウ‥【包丁人・庖丁人】

  1. 〘 名詞 〙 包丁を使って調理することの巧みな人。また、それを業とする人。料理人。包丁師。包丁家。包丁者。ほうちょうじん。
    1. [初出の実例]「相語名誉之庖丁人、所種々料理也」(出典異制庭訓往来(14C中))
    2. 「其見事さ、はやさ、つねの庖丁人(ホウテウにん)十五人斗しても、是程は出来まじ」(出典:浮世草子西鶴織留(1694)四)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「包丁人」の意味・わかりやすい解説

包丁人
ほうちょうにん

庖厨 (台所) にあって魚,鳥を料理する人。もとは中国の有名な料理人の名前という。『徒然草』によると,包丁者の初めは山蔭中納言ということになる。平安時代の貴族社会では,日常の食料召使の者たちが料理したが,年中行事,一家祝賀などの料理をつくる際はもちろん,来客に料理を調進する際にも,その邸の主人がみずから包丁をふるって客をもてなすようなことがあった。これは包丁さばきを一つの技能として興じたもので,やがてこれが包丁式にまで発展するようになると,その技を披露する包丁人も一家の主人とはかぎらなくなり,調理に堪能なものがあたるようになった。またその後,室町時代には大草派や四条派などの料理の流派もでき,その包丁人たちによって包丁式も一つの型の大成をみた。一方,料理そのものを職業とする者も現れ,これがやがて「板前」と呼ばれるようになる。

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世界大百科事典(旧版)内の包丁人の言及

【日本料理】より

…日本に職業的料理人が最初に姿を見せたのは律令制下の宮内省内膳司(ないぜんし)と大膳職(だいぜんしき)においてで,その任務は中国直輸入の食禁(じつきん)(食合せ)に基づいて食事を調進し,とくに内膳司では供御(くご)の毒味をすることであった。その後は,宮廷外でも庖丁人として名を得た人々があり,その逸話が《今昔物語集》その他に伝えられているが,いずれもいかにみごとに材料を切るかが関心の的だったらしく,調味のしかたなどを記録したものはない。〈柚(ゆ)をきることは杯酌至極のときの肴物(さかなもの)〉(《古今著聞集》)といったように,どういうわけか酒宴たけなわのときにユズを切ってみせるのが酒興を添えるさかなだとするような通念があり,そうした場合,故実に基づいた正しい切り方をするのが〈名誉の庖丁人〉とされた。…

【包丁(庖丁)】より

…料理用の刃物。本来は《荘子》に見える古代中国の名料理人の名で,転じて料理する人をいった。日本では〈料理すること〉をもいうようになり,料理する人を包丁人,包丁者,料理に使う刀を包丁刀と呼ぶ風を生じ,さらに包丁刀を略して包丁というようになった。包丁刀を単に包丁と呼んだ例は《今昔物語集》巻二十八に見られる〈鞘(さや)なる庖丁〉あたりが古く,それ以前は小刀,短刀の意味で刀子(とうす)と呼んでいた。《延喜式》内膳司の条下には,供御用の刀子として年間77枚が計上され,その中には〈蠣(かき)〉をむくためのもの10枚,〈鰒(あわび)〉を切るためのもの2枚も含まれていた。…

【料理人】より

…令制下の大膳職,内膳司,春宮坊主膳監には調理,饗膳(きようぜん)のことに従う膳夫が所属し,磐鹿六鴈を祖とする高橋氏は代々内膳司の長官に任ぜられた。平安末期ころから庖丁者(ほうちようじや),庖丁人といったことばが現れてくる。《徒然草》の園別当入道(そののべつとうにゆうどう)藤原基氏の話に見られるように,伝統的な規式によって魚などを切りうる人を指したことばで,それが料理の名人と同義であったことは,まさしく日本の料理のありようを象徴するものであった。…

※「包丁人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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