精選版 日本国語大辞典 「十返舎一九」の意味・読み・例文・類語
じっぺんしゃ‐いっく【十返舎一九】
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江戸後期の洒落本(しゃれぼん)、黄表紙(きびょうし)、滑稽本(こっけいぼん)、合巻(ごうかん)作者。本名重田貞一(しげたさだかず)、通称与七。十返舎は香道の十返(とがえ)しにちなみ、一九は幼名市九による。酔斎、十偏舎、十偏斎などとも号す。前半生の伝記は詳しくわからないが、駿府(すんぷ)で武家の子として生まれ、ある大名の家に仕えたがまもなく浪人し、23歳ごろ大坂で町奉行(まちぶぎょう)小田切土佐守(おだぎりとさのかみ)に仕えたというが、これもまもなく致仕したらしい。1789年(寛政1)近松余七の筆名で浄瑠璃(じょうるり)『木下蔭狭間合戦(きのしたかげはざまがっせん)』を若竹笛躬(ふえみ)、並木千柳と合作するが、94年江戸に出、翌年黄表紙『心学時計草(とけいぐさ)』以下3種を発表し、以後毎年20種近くの黄表紙を発表している。享和(きょうわ)(1801~04)に入っては洒落本も執筆するが、1802年(享和2)滑稽本『東海道中膝栗毛(ひざくりげ)』初編を出版した。読者の熱狂的歓迎を受けたこの作品は、22年(文政5)に完結するまで、21年間にわたって続編に続編を重ねて出版され続けた。この間、『道中膝栗毛』の作者として人気の高まるとともに、読本(よみほん)、人情本、咄本(はなしぼん)、滑稽本とあらゆるジャンルに筆を染め、黄表紙、合巻だけでも360種に達する作品を発表した、江戸時代の作家としては最大の多作家であった。読者の好尚に忠実にこたえようとした大衆作家としての姿勢からであり、同時に生活を筆で維持するためでもあった。事実、一九はその後半生を原稿料だけで生活をたて、そのためには戯作(げさく)以外にも、通俗的な庶民教科書としての往来案文類などを多数出版するとともに、また書肆(しょし)の依頼によっては素人(しろうと)作者の原稿を編集して出版し、名前を貸すなどしている。江戸後期の最大の大衆作家であった。天保(てんぽう)2年8月7日没。墓は東京都中央区の東陽院にある。
[神保五彌]
『松田修著『十返舎一九――東海道中膝栗毛』(1973・淡交社)』
(園田豊)
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1765~1831.8.7
江戸後期の戯作者。本名は重田貞一。駿河国府中生れ。近松余七の名で大坂で浄瑠璃修業ののち,江戸の蔦屋(つたや)の食客となる。「心学時計草(とけいぐさ)」などの黄表紙を自作・画で発表以後,毎年10種以上の黄表紙を出した。「化物太平記」が発禁となる事件もあったが,洒落本・滑稽本・合巻・人情本・読本・噺本・往来物と多くの分野で活躍。とくに滑稽本「東海道中膝栗毛(ひざくりげ)」が好評で,東海道編以後21年にわたって書き継がれた。合巻「金草鞋(かねのわらじ)」「滑稽旅加羅寿(たびがらす)」や読本「通俗巫山夢(ふざんのゆめ)」も滑稽本的要素が強く,式亭三馬や曲亭馬琴などとの違いをみせる。「清談峰初花(みねのはつはな)」は人情本の先駆とされる。
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…〈滑稽本〉とは明治以後の文学史用語で,江戸時代は人情本とともにその書型から〈中本(ちゆうほん)〉と呼ばれた。十返舎一九作《東海道中膝栗毛》(初編1802)以後明治初年までの滑稽諧謔を旨とする作品を指すが,文学史上は,中本の源流とみなしうる宝暦・明和(1751‐72)のころの,笑いを内包する教訓的作品をもふくめている。 文学史上,滑稽本の最初は1752年(宝暦2)刊の静観房好阿(じようかんぼうこうあ)作《当世下手談義(いまようへただんぎ)》とされ,当時の町の生活,風俗を批判,教訓するものであるが,説経僧の語り口を採用しておのずと笑いをかもし出す。…
…滑稽本。十返舎一九作。初編は栄水画,他は自画。…
※「十返舎一九」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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