南嶺(読み)なんれい(その他表記)Nán lǐng

改訂新版 世界大百科事典 「南嶺」の意味・わかりやすい解説

南嶺 (なんれい)
Nán lǐng

中国南部広東広西と江西・湖南の省境を北東から南西に走る山地総称で,長江揚子江水系珠江水系との分水嶺であり,華中華南境界である。南嶺はひとつづきの山地ではなく,五嶺山地とも呼ばれるように,西から東へ越城,都龐,萌渚,騎田,大庾の五つの独立した山嶺が連なる。高度はいずれも1000m前後の低い山地である。低い谷間や峠が多く,なかでも梅嶺路,摺嶺路,桂嶺路は古くから南北交通の要路であった。南嶺は森林が繁茂し,松,杉などの用材に富み,竹林も多い。地下資源も豊富で,世界最大の埋蔵量のタングステンのほか,スズ,鉛,亜鉛の埋蔵量が多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「南嶺」の意味・わかりやすい解説

南嶺
なんれい / ナンリン

中国南部、華中と華南を分ける山脈群。北の湖南・江西両省と南の広東(カントン)省・広西(こうせい/カンシー)チワン族自治区との省境を東西に1000キロメートルにわたって連なり、長江(ちょうこう/チャンチヤン)(揚子江(ようすこう))水系と珠江(しゅこう/チューチヤン)水系の分水嶺をなしている。別称を五嶺といい、西から東へ越城(えつじょう)、都龐(とほう)、萌渚(ぼうしょ)、騎田(きでん)、大庾(だいゆ)の五つの独立した山脈の総称である。平均標高は1000メートル前後で低い。これらの山脈の谷間や峠に、古くから梅嶺路、摺嶺(しゅうれい)路などの南北の交通路が開かれている。森林資源と地下資源が豊富で、とくにタングステンは世界最大の産地である。

[青木千枝子]

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百科事典マイペディア 「南嶺」の意味・わかりやすい解説

南嶺【なんれい】

中国,広東と広西,江西と湖南の各省境を東西に走る山脈の通称。長江と粤江(えつこう)へ流入する諸河川の分水嶺であり,華中と華南を分ける。大【ゆ】(だいゆ)・騎田・萌渚・都【ほう】(とほう)・越城などの諸嶺があり,標高は平均1000m前後。華中・華南交通の障害。
→関連項目華南広東[省]

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旺文社世界史事典 三訂版 「南嶺」の解説

南嶺
なんれい

中国南東部,広西壮族 (カンシーチワンツー) 自治区と広東 (カントン) ・江西 (チヤンシー) ・湖南 (フーナン) の三省の境界を東西に走る山脈
長江・西江ほか華南諸川の分水嶺をなす。中国を中部と南部に分ける自然境界で,かつては南嶺の南を嶺南とも呼んだ。各所に峠が通じ,特に五嶺と呼ばれる交通路が古くから存在した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「南嶺」の意味・わかりやすい解説

南嶺
なんれい

「ナンリン(南嶺)山地」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の南嶺の言及

【広東[省]】より

…雲貴高原に源を発する西江の流域を中心とする華南の東部を占め,南は南シナ海に臨み,雷州半島からトンキン湾岸地域を含んでベトナムと境する。長江(揚子江)流域を中心とする華中とは,数条の並行する山嶺からなる南嶺を分水界とし,北は湖南省,江西省,東は福建省,西は西江流域の広西チワン族自治区に接する。1996年現在,54市(広州,深圳,珠海,汕頭,韶関,中山,仏山,湛江など),43県,3自治県(連山チワン族ヤオ族,連南ヤオ族,乳源ヤオ族)から構成される。…

【湖南[省]】より

…周辺部の山地を構成する諸山脈のほとんどは北東~南西方向に走る。東部の江西省との境には,北から幕阜山,九嶺山,武功山,万洋山,諸広山の山脈が連なり,南部の広東省,広西チワン族自治区との境の山地は南嶺と総称されているが,西から越城嶺,都龐嶺,萌渚嶺,騎田嶺などの山脈から構成されている。北西部には武陵山,中部から南西部にかけて雪峰山がつらなる。…

【嶺南】より

…中国で古く南嶺山脈(五嶺山脈ともいう)から南の地域をさした名称。主として今の広東省と広西チワン(壮)族自治区に当たる。…

※「南嶺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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