4月8日を中心とした民間の年中行事。この日は花祭,灌仏会の行われる日であるが,民間では,釈迦降誕とは関係のない行事が多い。この日を野山に出て飲食をする遊び日としているところは全国的にみられ,東日本では山神の祭日や山開きの日にあてている例が多い。近畿以東の霊山にある神社では,この日を祭日とする所がかなりある。西日本では〈高花〉〈天道花(てんとうばな)〉〈夏花(げばな)〉などと称して,竹ざおの先にシャクナゲ,ツツジ,シキミ,ウノハナなどを束ね,庭先や木の枝に高く掲げる習俗が卓越している。兵庫県氷上郡では〈花折り始め〉といって,死者があった家では他家に嫁いだ子女が墓参りをする日となっている。また同県宝塚市,三田市では〈花施餓鬼〉といって,施餓鬼が行われ,死者を供養する(現行では5月8日)。卯月八日の民俗では,とくに春山入り,花立て,死者ないし祖先供養が目立つが,本来は家々で死霊・祖霊を迎え,まつる行事が重要なポイントを占めていたようである。
→灌仏会
執筆者:伊藤 唯真
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4月8日、およびその日の行事をいう。寺院では釈迦(しゃか)の降誕日として灌仏会(かんぶつえ)が行われ、草花で屋根を葺(ふ)いた中に釈迦の像を立て、甘茶を注ぎかける。ところが、各地のこの日の行事は、釈迦とは無関係のものが多い。それらを要約すると、軒(のき)に花を飾る、竿(さお)の先に花をつけて立てる、山へ花をとりに行く、花見のために山に登る、花に関係なく山に登る、仏壇か墓に花を供える、などの形があり、花を飾ることと、山に登ることとに大別することができる。これは、祖霊が山を通って人里に来臨するという考えを背景として、花に憑依(ひょうい)させた祖霊を、山から里へ迎え帰り、あるいは山を経由しないで直接、竿に花をつけて迎えようとするものである。4月初めは盆とともに重要な先祖祭りの機会で、また同時に農作業の開始時期にあたるので、このとき祖霊の一機能としての田の神を迎え、豊作を祈願したのが始まりであった。
[井之口章次]
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…【山崎 敬】
【民俗】
初夏に咲くツツジは農耕開始の象徴とされた。とくに,卯月八日(うづきようか)には〈天道花(てんとうばな)〉といって山から採ってきたフジ,ヤマブキ,ツツジなどの花をさおの先につけて庭先に立てる風習は広く行われたが,天道花は山から神を招く依代(よりしろ)とされたのである。また奈良県の明日香村では,八十八夜前後に苗代に播種した後に,牛玉(ごおう)宝印の札と松の枝にツツジの花をそえて田の水口にさす風もみられた。…
※「卯月八日」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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