原子力事故により生じた損害の賠償金額や対象範囲などの基準を示す公的機関。損害賠償が紛争となるおそれがある場合に、原子力損害賠償法(正式名称「原子力損害の賠償に関する法律」。昭和36年法律第147号)に基づき、文部科学省に臨時的に設置される。略称は紛争審、原賠審。法務、医療、放射線、原子力工学などの専門家らによって構成され、原子力損害についての現地調査と評価の実施、原子力事業者と事故被害者間の自主的解決のための指針の策定、和解の仲介などを行う。これまで設置された事例は、1999年(平成11)に起きた東海村臨界事故の際(1999年10月~2010年8月)と、2011年(平成23)の東京電力福島第一・第二原子力発電所事故の際(2011年4月~ )の2件である。東電福島原発事故に対しては、2011年8月に、避難住民の避難費用、精神的苦痛への賠償、移住先の住宅確保費、農水産物の出荷制限による損失、放射線被曝(ひばく)による損害、風評被害などについて賠償額や原子力損害の範囲の基準を定めた中間指針を出した。電力会社などの原子力事業者は、指針に基づき、実際の損害賠償について事故被害者と交渉する。指針に基づく賠償額は、帰還困難区域の住民で1人1450万円、旧居住制限区域と旧避難指示解除準備区域で同850万円、旧特定避難勧奨地点で同490万円、旧緊急時避難準備区域で同180万円などとなっている。
政府は2011年8月、原子力損害賠償紛争審査会の下部組織として、双方を仲介し円滑・公平な合意を目ざし仲介手続を行う「原子力損害賠償紛争解決センター」を設けた。同センターは裁判外紛争解決手続(ADR)を進める公的機関の一つで、原子力損害賠償紛争審査会は裁判よりも被害者にとって負担が軽いADRでの迅速な解決を目ざす態勢をとった。しかし東電福島原発事故の被害者らが起こした訴訟では、指針に基づく賠償額を上回る賠償額を命じる判決が相次いでいるうえ、ADRの和解内容を東京電力が受け入れないケースも後を絶たず、指針の見直しやADRの限界を指摘する声が出ている。
[矢野 武 2021年6月21日]
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