精選版 日本国語大辞典 「原子時計」の意味・読み・例文・類語
げんし‐どけい【原子時計】
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原子(分子)の固有共鳴周波数を基準にしたもっとも精密な時計。原子(分子)のエネルギーは、固有のとびとびの一定値をとり、あるエネルギーW1の状態から別の値W2に移り変わるとき、ボーアの振動数条件ν0=|W1-W2|/h(hはプランク定数)で与えられる共鳴周波数ν0の電磁波を放出あるいは吸収する。この現象を利用するのが原子時計であり、外乱のない自由な原子(分子)でのν0は一定不変である。しかし実際の時計では、このような理想的条件は一般に満足されず、ν0のずれや、共鳴線幅の広がりなどがおこる結果、原子時計の周波数の正確さや安定度(一定さの度合い)が損なわれる。
原子時計は、原子(分子)の共鳴線(共鳴特性)の利用方法により、吸収型と発振型の2方式に分類できる。前者では、水晶発振器の出力周波数を逓倍(ていばい)し(高調波を使って順次高くし)、共鳴線の中心周波数(ν0)近傍のマイクロ波を発生し、これを空胴共振器に導いて、その中に閉じ込めた原子(分子)にマイクロ波の共鳴吸収をおこさせる。共鳴検出器からは、振動を助長する励振マイクロ波周波数とν0との差に比例した誤差信号が出力として得られる。この信号を用いて水晶発振器の周波数をν0と一定の関係に固定すれば、安定な時計を得ることができる。後者の方式は、共鳴に関係する高低二つのエネルギー状態のうち、高いほうの原子(分子)だけを選別して、ν0に同調した空胴共振器に導く。すると、自然のマイクロ波(雑音)が引き金となって、原子(分子)からエネルギーの放出(誘導放出)がおこり、その結果、空胴内でν0の発振が持続する。
原子時計の着想は古いが、具体化されたのは、マイクロ波分光学が急速に発展した第二次世界大戦後のことである。1948年ころアメリカ国立標準局で、アンモニア分子の共鳴線を利用した吸収方式の原子時計が世界で初めて試作され、同時にセシウム原子を用いたビーム吸収方式の実験も開始された。その後、発振型のアンモニア分子ビームメーザーに続いて、水素メーザー、またルビジウムなどのアルカリ金属原子を用いたガスセル吸収型装置の研究開発も行われた。これらのうち、セシウム時計の正確さがもっとも高く、現在では誤差10兆分の1(30万年に1秒の誤差)に達している。セシウム原子時計は、時間の単位である秒の定義に用いられるとともに、国際原子時設定のもととなっている。国際原子時は、国際報時局が世界各国のセシウム時計の相互比較データを用いて計算する平均原子時であって、天体観測に基づく時系にかわって、58年以来時刻の基準として用いられている。一方水素メーザーは、短期(数時間程度)の周波数安定度が優れており(誤差約1000兆分の1)、超長基線電波干渉計や深宇宙探査など、精密な電波計測には不可欠である。またルビジウム時計は小型・軽量を特徴とする。これらの原子時計は、前述の用途のほか、通信、放送などの分野で広く使われている。また間接的ではあるが、身近な利用例として、20世紀末より急速に普及したカーナビゲーション用のGPS(Global Positioning System=全地球測位システム)がある。各衛星はセシウムとルビジウムの原子時計を搭載して、高精度な時刻信号を発射し、地上での測位精度を高めている。
[若井 登]
『吉村和幸・古賀保喜・大浦宣徳著『周波数と時間――原子時計の基礎 原子時のしくみ』(1989・電子情報通信学会、コロナ社発売)』▽『F・G・マジョール著、盛永篤郎訳『量子の鼓動――原子時計の原理と応用』(2006・シュプリンガー・フェアラーク東京)』
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…これは時計の歴史上最大のできごとだったといえる。その後49年にはアメリカで,水晶時計の100倍にも達する精度をもつ原子時計が生まれ,67年からは,それまで平均太陽時によって定めていた時間の標準に代わって,セシウム原子の共振周波数によって秒を定義することが国際度量衡会議で採択された。水晶時計もICの進歩に伴って急速に構造の簡素化,小型化が進み,69年にはアナログ式腕時計が発売されるまでになった。…
※「原子時計」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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