改訂新版 世界大百科事典 「双対」の意味・わかりやすい解説
双対 (そうつい)
dual
数学の理論において,いくつかの概念を二つずつ対応させるとき,定理が1対となって,そのおのおのは同じ構造をもつことがときどき起こる。この現象を双対性といい,対応する概念や定理を互いに他の双対という。例えば,平面射影幾何学で,“点”という概念と“直線”という概念を,“含む”という概念と“含まれる”という概念を対応させるとき,双対性がみられる。具体例をあげれば,〈3点A,B,Cが直線lに含まれ,3点A′,B′,C′が直線l′に含まれているとき,BとC′を含む直線およびB′とCを含む直線の両方に含まれる点をP,CとA′を含む直線およびC′とAを含む直線の両方に含まれる点をQ,AとB′を含む直線およびA′とBを含む直線の両方に含まれる点をRとすれば,点P,Q,Rは共通の1直線に含まれる〉(図1)というパップスの定理の双対は,〈3直線a,b,cが点Lを含み,3直線a′,b′,c′が点L′を含んでいるとき,bとc′に含まれる点およびb′とcに含まれる点の両方を含む直線をp,cとa′に含まれる点およびc′とaに含まれる点の両方を含む直線をq,aとb′に含まれる点およびa′とbに含まれる点の両方を含む直線をrとすれば,直線p,q,rは共通の1点を含む〉(図2)という定理となる。
執筆者:中岡 稔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報