しゅうかくていげん【収穫逓減】 の 法則(ほうそく)
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デジタル大辞泉
「収穫逓減の法則」の意味・読み・例文・類語
しゅうかくていげん‐の‐ほうそく〔シウクワクテイゲン‐ハフソク〕【収穫逓減の法則】
一定の土地からの収穫量は、資本・労働の投入量の増大に応じてある点までは増加するが、その点を超えるとしだいに減少するという法則。
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収穫逓減の法則
しゅうかくていげんのほうそく
law of diminishing returns
生産要素の増加量と生産物の増加量に関する経済学の基本的命題。最初は、D・リカードやT・R・マルサスなど古典派経済学によって、土地の収穫逓減の法則として理論化された。一定の土地からの収穫量は、労働投入量の増大に比例せず、追加労働1単位の収穫量は逓減していく。したがって、収穫量を増大させるためには、相対的に肥沃(ひよく)度が低く単位当り収穫量の低い土地も順次使用されるようになる、というのがこの法則の内容である。リカードはこの法則を基礎に、優等地と劣等地の収益の差が地代を発生させるものと考え、差額地代論を展開した。マルサスは、人口は放置すれば幾何級数的に増加するという独自の人口法則とこの法則とを結び付けて、貧困は、食糧増加が人口増加に追い付かないという自然法則によって生み出されるものと説明した。
近代経済学(新古典派)では、この法則はあらゆる生産部門のあらゆる生産要素(資本、土地、労働)にも適用できるものと考えており、この法則を基礎に限界生産力説が展開されている。所与の技術水準の下で、特定の生産要素のみを増加させ、他の生産要素の投入量を一定にしておくならば、増加された生産要素の追加1単位当りの生産量(限界生産物)は一般に逓減する。これを生産要素に関する収穫逓減の法則とよんでいる(工業の場合、収益逓減の法則ともいう)。この法則の作用は、工場や機械設備が一定の場合、生産量1単位当りの平均費用が、生産量が一定規模を超えると逓増していくという形で現れる。
農業の場合にも工業の場合にも、収穫逓減の法則は、発明や改良による生産性の上昇を考慮に入れた長期の過程には妥当しない。
[佐々木秀太]
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収穫逓減の法則
しゅうかくていげんのほうそく
law of diminishing returns
所与の状況のもとで,ある生産要素を増加させると生産量は全体として増加するが,その増加分は次第に小さくなるという法則。規模に関する収穫は次のように分類される。生産関数において,投入ベクトルをすべて k 倍 ( k>0 ) したときに,産出量が k 倍より小さくなるとき収穫逓減,ちょうど k 倍になるとき収穫一定,k 倍より大きくなるとき収穫逓増という。限界生産力逓減の法則ともいう。この法則性は D.リカードにより土地収穫逓減の法則性として最初に基礎づけられた。この法則が働くのは所与の技術状態の場合においてのみいえることで,技術進歩はまさにこの法則を打破するためのものである。
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「収穫逓減の法則」の意味・わかりやすい解説
収穫逓減の法則【しゅうかくていげんのほうそく】
生産技術を一定としたとき,生産要素(土地,資本,労働)のうちの一つを増加させると,他の生産要素の投入量を一定とすれば,増加要素1単位当りの生産量増分は逓減するという法則。最初は古典派によって,一定面積の土地から得られる収穫は,投下労働量に比例して増加せず,ある限度を越えると収穫が逓減するという土地収穫逓減の法則として述べられ,後に鉱工業についても,前記のように一般化され限界生産力説の基礎とされた。
→関連項目集約農業
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しゅうかくていげんのほうそく【収穫逓減の法則 law of diminishing returns】
他の生産要素の投入量を一定としたとき,一つの生産要素の投入量を増大させることに伴う生産量の増分(限界生産力)は当該生産要素投入量の増加とともに減少するという経験法則。限界生産力逓減の法則ともいう。また,この法則が成立するときには,生産を増加させるために必要な投入量が逓増するため,(限界)費用が逓増する。つまり,収穫逓減の法則と限界費用逓増は表裏の関係にある。 1760年代に重農主義者のチュルゴによって初めて主張され,ウェストEdward West(1782‐1828),マルサス,リカードらの古典派経済学者によって定式化された。
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法則の辞典
「収穫逓減の法則」の解説
収穫逓減の法則【law of diminishing returns】
もともと農業生産について述べられたものである.収量漸減の法則*という別名もあるので,農学分野についてはそちらも参照されたい.生産のために投人した資金・労働力(時間)等の投入量と,その成果として得られる収穫・産出量との間の関係で,初期段階では投入を増やせば収穫・産出は増加するが,やがて収穫の増加分はしだいに減っていき,ついに頭打ちになるというもの.最近ではマーケッティングや教育効果などを対象として述べられることも少なくない.
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