台地(読み)だいち

精選版 日本国語大辞典 「台地」の意味・読み・例文・類語

だい‐ち【台地】

〘名〙 表面が平坦で周囲より一段と高く、ほぼ水平な地層から構成される地形広義では周囲より高く、表面が平坦な地形をいう。武蔵野台地牧ノ原台地など。
※土(1910)〈長塚節〉一「村落は台地に在るのでお品の家の後は直に斜に田圃へずり落ち相な林である」

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デジタル大辞泉 「台地」の意味・読み・例文・類語

だい‐ち【台地】

表面が比較的平らで、周囲より一段と高い地形。ほぼ水平な地層からなる。
[類語]高台丘陵高地

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「台地」の意味・わかりやすい解説

台地
だいち

四方ないし一方を崖(がけ)で縁どられ、周囲より一段と高い平坦(へいたん)地を頂にもつ卓状ないし階段状の高台。ほぼ水平な地層からなる。その平坦地を台地面といい、それを囲む崖や急斜面を台地崖(だいちがい)とよぶ。背後に段丘崖のある狭い台地は段丘とよばれる。数十万年前以降に扇状地三角州海岸平野、浅海底、あるいは火山の山麓(さんろく)などが隆起して侵食され、周囲に崖が生じることによって形成された洪積台地が日本各地に広く発達している。その代表例が関東平野である。

 台地の形成過程を理解するために、地球温暖化により陸地氷河が融解し、海面がしだいに上昇することを考えてみるとよい。東京湾は拡大し下町の低地が海になり、入り江は埼玉県から群馬県へと拡大するであろう。入り江に立つ波は周囲の台地を侵食して海食台を発達させ、そこで生じた土砂は入り江に堆積(たいせき)するであろう。さらに海面が上昇すると、入り江の水深は増して波が強まり、台地はさらに侵食され、ついには入り江の底は深い海の底になって大東京湾が生じるであろう。

 このような事変が今から15万年前から12万年前にかけて実際に生じた。当時の拡大した東京湾は古東京湾とよばれている。この海が10万年前、8万年前としだいに低下するにつれて、深かった入り江は浅くなり、海進期に海食台上に堆積していた土砂は沿岸環境下で強い波によって再移動させられ離水した。川によって陸地から土砂が供給された場所では、離水期に河成平野が発達した。たとえば、東京では多摩川が扇状地を発達させ、鬼怒(きぬ)川は筑波(つくば)台地に鳥趾状三角州(ちょうしじょうさんかくす)(水鳥が足を広げたような平面形をもつ三角州)を発達させた。これらの河成平野は数万年前以降に海水準がどんどん下がり、2万年ほど前には今より100メートルほども下がる過程で台地化した。

 当時の台地は関東平野では現在も残されているが、越後平野にはみられない。関東平野はこの10万年間に数十メートル(年間0.2~0.3ミリメートル)隆起し続けてきたが、一方、越後平野は信濃(しなの)川や阿賀野(あがの)川などからの大量の土砂が堆積し続けることによって沈降し、後氷期の海進によってふたたび入り江になり、台地は土砂に埋め立てられてしまったためである。

 なお、世界の安定大陸には洪積台地とはまったく異なる台地が発達している。たとえば、アメリカ西部のコロラド高原の南西部に広がるコロラド台地は、新生代や中生代の地層が1000万年という長い時間をかけて厚さ1000メートルほども侵食された結果、侵食されにくい石灰岩層が地表に露出してできた広大な台地で、スペイン語でテーブルを意味するメサとよばれる。日本にも香川県の屋島や群馬県の荒船山をはじめ、侵食されにくい水平層でできた台地があるが、いずれも小規模である。

[池田 宏]

『池田宏著『地形を見る目』(2001・古今書院)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「台地」の意味・わかりやすい解説

台地
だいち
plateau

平坦面の縁を急斜面で限られた比較的標高の低い台状の地形。表面の平坦化は堆積による場合と,浸食の場合がある。日本では海成,河成の堆積面が浸食によって台地化したものが多く,その形成時代の多くは更新世 (洪積世) と考えられることから,洪積台地と呼ばれている。比高はせいぜい数十mにすぎない。インドのデカン高原,アメリカのコロンビア川周辺などには玄武岩の溶岩台地が広く分布し,その比高は 1000mをこえる。日本では玄武岩質溶岩を多量に噴出する活動はなく (小規模なものは四国の屋島にみられる) ,カルデラの形成に関連して噴出した火砕流堆積物から成る台地 (鹿児島県シラス台地など) が広く分布する。

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世界大百科事典 第2版 「台地」の意味・わかりやすい解説

だいち【台地 upland】

地形学では,一般には台状,テーブル状の地形をさす。狭義には古期岩の水平層から成る台状の地形,すなわち〈大陸台地〉をいう。地形学的台地には大陸台地のほかに溶岩台地,石灰岩台地,火山灰砂台地,洪積台地が含まれる。日本の例では淀橋台,小日向(こびなた)台,富士見台など〈○○台〉の地名の場所は台地地形の一部で,多くは洪積台地にあたり,一方,秋吉台,平尾台,帝釈台,阿哲台などは石灰岩台地にあたる。また洪積台地の例である武蔵野(むさしの),羽曳野(はびきの),饗庭野(あえばの),那須野(なすの)など〈○○野〉の付された地名や,三本木原(洪積台地),大野ヶ原(石灰岩台地),笠野原(火山灰砂台地)など〈○○原〉の地名も台地に多くみられる。

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百科事典マイペディア 「台地」の意味・わかりやすい解説

台地【だいち】

上部が比較的平らな台状の地形。多くは浸食により上部が準平原化されたり,いったん沈水して地層が堆積した後再び隆起して形成されるもの。日本各地にみられる洪積台地は後者にあたり,段丘地形に属する。一般には先カンブリア時代の基盤岩類の上にほぼ水平な古・中生界が累重してつくる台状の地形(地形学の場合),またはそのような地域(地質学の場合)をさす。たとえばコロラド台地,ロシア台地など。卓地,卓状地とも。→溶岩台地

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普及版 字通 「台地」の読み・字形・画数・意味

【台地】だいち

高台。

字通「台」の項目を見る

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世界大百科事典内の台地の言及

【段丘】より

…ほぼ水平で平たんな地表面(段丘面)とその前方あるいは背後の急傾斜な崖(段丘崖)からなる。〈台地〉とほぼ同様な地形をさすが,台地が〈低地〉に対立する語として用いられ,その階段状の平たんな地形を構成する地層や地質のいかんによらないのに対して,段丘は過去の水面(河川,海,湖など)に関連して水中で形成された平たん面がその後に離水した地形をさし,河岸段丘海岸段丘,湖岸段丘lacustrine terraceなどに区分される。したがって溶岩台地とはいうが,溶岩段丘とはいわない。…

※「台地」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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