司教(読み)しきょう(英語表記)episkopos; bishop

精選版 日本国語大辞典 「司教」の意味・読み・例文・類語

し‐きょう ‥ケウ【司教】

〘名〙 ローマ‐カトリック教会職制で、司祭の上に立ち、教区監督する。使徒たちの信仰を継ぐ者として始められ、その職を中心として、教会組織がなされてきた。〔改正増補和英語林集成(1886)〕
朝野新聞‐明治二一年(1888)六月二〇日「加特力教及び司教〈略〉去る十一日教会の命により横浜滞在のミドン氏に司教の位を授与し」

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デジタル大辞泉 「司教」の意味・読み・例文・類語

し‐きょう〔‐ケウ〕【司教】

カトリック教会の高位聖職。使徒継承者と見なされ、司祭の上に位する。司教区の長としてこれを統轄ギリシャ正教およびイギリス国教会では主教とよぶ。→大司教
[類語]牧師神父司祭大司教助祭祭司教皇法王

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「司教」の意味・わかりやすい解説

司教
しきょう
episkopos; bishop

ローマ・カトリック教会をはじめ伝統的な職制を保有するキリスト教会で,信徒を監督,指導し,司祭ないし長老以下の聖職者を叙階する権能を有する役務者。一般に一定地域 (司教区) における最高教導権を有し,歴史的にキリスト教会組織の根幹をなしていた。東方正教会聖公会では主教,その他のプロテスタント教会 (北欧およびドイツのルター派教会,アメリカのメソジスト教会,プレスビテリアン教会など) では監督と呼ばれる。使徒の後継者として使徒の権能を受継いだものと信じられているが,その継承 (→使徒承伝 ) がある司教座を歴史的に継いできたものか,あるいはサクラメントによるものか異論がある。ローマ・カトリック,東方正教会などは後者を主張している。司教の存在はすでに新約聖書に言及があるが (使徒行伝 20・28,ピリピ書1・1,テモテ1書3・2,テトス書1・7,ペテロ1書2・25) ,その起源と性格の詳細は明らかでない。いずれにしても2世紀の初め以後キリスト教の伝播した主要都市を中心に司教制度の確立がみられ,その基本的特徴は 16世紀の宗教改革によってプロテスタント系教会の多くがこの制度から離脱するまで変ることなく受継がれた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「司教」の意味・わかりやすい解説

司教
しきょう
bishop 英語
episcopus ラテン語

ローマ・カトリック教会の用語で、東方正教会や聖公会では主教とよばれる。キリストが福音(ふくいん)の宣教のために諸国に遣わした12人の使徒たちの後継者として、その使命を今日に受け継ぐもの。そのため、全世界の司教たちは、十二使徒の頭(かしら)、ペテロの後継者としてのローマ教皇の権威のもとに司教団を形成して教会活動の最高責任を担っている。また司教職は、司祭職の最高の完成ともいわれ、担当教区内の司祭たちのつくる司祭団の長として、布教、統治、秘蹟(ひせき)の授与など、一つの司教区の司牧、宣教活動の責任者ともなる。司教のなかには、管轄する教区の性質に応じて、総大司教(パトリアーク)、首都大司教(メトロポリタン)、大司教(アーチビショップ)、司教、名義司教などがある。現在、日本には、東京、大阪、長崎の三大司教区と、札幌、仙台はじめ13の司教区が存在する。使徒職の解釈を異にするプロテスタント諸教会では、司教職制度は存在しない。

[鶴岡賀雄]

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世界大百科事典 第2版 「司教」の意味・わかりやすい解説

しきょう【司教 bishop】

新約聖書のギリシア語エピスコポスepiskopos(監督)という言葉のもつ役割が制度化されたキリスト教会の役職。〈司教〉との訳語は,特にローマ・カトリック教会で用いられ,日本聖公会,日本ハリストス正教会では〈主教〉の語があてられる。按手礼によって使徒の後継者として立てられた,地方教会の統治者であり,各地に分散しているキリスト者が祭司の民として一致して礼拝を行うために,一同に奉仕する司祭(長老)団の中心人物。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「司教」の解説

司教(しきょう)
bishop[英],Bischof[ドイツ]

キリスト教会の指導職。ギリシア正教会の主教,イングランド国教会の監督にあたり,僧正と訳すこともある。起源は使徒にあり,2世紀には各教会に1名の最高指導者として現れた。教皇の叙任によりこれに直属する司教団を形成する。各司教は司教区を管理し,中世では司教領の領主を兼ね,世俗王侯によって叙任された。総大司教,首都大司教,大司教も司教で,重要地域に配される。司教杖,司教指輪,司教冠などでその権能を示す。

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百科事典マイペディア 「司教」の意味・わかりやすい解説

司教【しきょう】

キリスト教会の役職名。プロテスタントの一部では〈監督〉,英国国教会,東方正教会では〈主教〉の訳をあて,英語ではbishop。初期教会のエピスコポス(監督)に由来し,司祭(長老)団の長にして教区の統率者。カトリックのローマ司教は教皇

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旺文社世界史事典 三訂版 「司教」の解説

司教
しきょう
bishop

枢機卿 (すうきけい) につぐカトリック教会の最高聖職者の地位
大司教も法律的には司教の上位であるが,位階的な優位はもたない。教会行政区の支配者で,各教会の司祭の上に立ち,司法権・行政権・指導権をもつ。4世紀ごろから地位が確立した。特定の地域には大司教が置かれた。正教会や聖公会では主教と呼ばれる。

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世界大百科事典内の司教の言及

【主教】より

…キリスト教の聖職のうち最高の職制。カトリック教会では〈司教〉,プロテスタント教会の一部では〈監督〉と呼ぶ。主教職の起源については不明の点が多いが,1世紀の教会ではエピスコポスepiskopos(〈監督〉の意,のち主教となる)とプレスビュテロスpresbyteros(〈長老〉の意,のち司祭となる)の区別が明確ではなかった。しかし2世紀中葉までにはエピスコポスが聖職の最高位として確立した。キリスト教の中心地は必ず主教をいただくことになり,その管轄区(教区と呼ぶ)は,ローマ帝国の行政区分に準じて定められた。…

【教書】より

…カトリック教会において,信仰・道徳問題について一般信徒を教導するため司教の発する書簡。司教が定期的に(たとえば四旬節または待降節もしくは年頭等に当たって),または特殊事情から(たとえば祝典,緊急問題に対する態度決定,異端弊害の排除等の理由から――このような場合にはその地域を担当する司教団の共同教書の形式でなされる。…

【主教】より

…キリスト教の聖職のうち最高の職制。カトリック教会では〈司教〉,プロテスタント教会の一部では〈監督〉と呼ぶ。主教職の起源については不明の点が多いが,1世紀の教会ではエピスコポスepiskopos(〈監督〉の意,のち主教となる)とプレスビュテロスpresbyteros(〈長老〉の意,のち司祭となる)の区別が明確ではなかった。…

【聖職者】より

…なお助祭が生涯その職にとどまることも少なくない。ローマ・カトリック教会では中世末期までに7聖職位の制度が一般化し,13世紀以後,主教(司教)と司祭,助祭,副助祭を上級聖職とし,その他の教役者(侍祭,祓魔師,読師,守門)を下級聖職とした。副助祭は1972年に廃止され,現在ではカトリック教会も東方正教会と共通の聖職位を有する。…

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