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出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
公家の家格の一つ。儒道より出身し,弁官,蔵人を経て大納言に至る家柄。古来,広くは名望ある家柄の意味に用いられた語であるが,平安末期の記録に勧修寺流藤原氏の蔵人顕頼や,大外記を世襲する中原広宗,清原信俊について〈累代の名家〉と書いているのは,代々故実を伝承し,才識をもって名を得ている家の意と解釈され,さらに顕頼の子光頼について〈数代弁官の家なり〉とする記述のあるのを考えあわせると,〈名家〉の語の系譜がほぼ推測される。室町時代の有職書《海人藻芥(あまのもくず)》には,〈名家は,日野,勧修寺,平家なり〉と見えるが,すでに《伏見院宸記》にも,〈凡そ日野,勧修寺,平家等の輩,労効に依りて立身起家す〉とあり,鎌倉末期以降ほぼ家格としての名家が成立したことがわかる。日野流諸家は藤原資業を,勧修寺流諸家は藤原為房を実質的な始祖とし,平家は平親信以来〈日記の家〉の声価を高め,みな才識と実務能力をもって摂関家に仕え,その家政を掌握したが,さらに院政時代以降は,院中の庶務を掌理し,室町時代には朝幕間の連絡の衝に当たり,長期にわたって権勢を保持し,繁栄を誇った。しかしその間も,一面では摂関家との主従的な関係を絶ち切れなかったため,公家社会における地位は相対的に低く,鎌倉末・室町期の記録に見える〈名家輩〉の用例には,蔑視的なニュアンスを含んでいる。明治の華族制度では,この家格は伯爵ないし子爵を授けられた。
執筆者:橋本 義彦
中国,戦国期の論理学派。恵施,公孫竜がその代表である。司馬遷の父,司馬談〈六家要指(りくかのようし)〉にみえる名称で,秦・漢期以後は,荀子・春秋学系の礼法制度と綱常倫理との一致をもとめる儒教的名分論のもとで,〈名家〉はその観点からの概念分析家〈名実を正す〉学派としてのみ認定された。外交折衝の弁析にたけた察士恵施は,時処位の無限性から相対価値を疑う詭弁を展開した。応戦した荘子,荀子,墨家らは,斉物(せいぶつ)の論,正名(せいめい)思想,墨弁(ぼくべん)のそれぞれの論証を深めた。実功(しごと=刑)と言辞(ことば=名)による臣下統御術の名実験証主義は,法家思想を支えたが,刑名家からでた弁者公孫竜は〈堅白異同〉〈白馬非馬〉の論で,触覚と視覚,色彩と形状などの概念分析を試み,思索をはばむ孤立語の漢語に省察を加え,墨家らを刺激して独特の実念論的論証法を発達させた。戦国中期に展開した名(名辞・概念)と実(事物・実体)との関係論,つまり知識と論理への考察と,政治思想としての名分論とは,秦漢帝国の形成期を通じての重要な政治思想的課題であった。
→諸子百家
執筆者:戸川 芳郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
中国古代、諸子百家の一つ。周末春秋戦国期に名(ことば)をめぐる論争が行われた。孔子、老子、荘子をはじめ当時のほとんどの思想書にそのことが記されている。孔子の正名、老荘の無名がその例であり、名の問題だけを論じていた思想家などはいなかった。ところが漢代になって学派の分別整理が行われたとき、周末に名の問題を専門的に論じていたと判断された思想家をひとまとめにして名家と名づけた。鄧析(とうせき)、恵施(けいし)、尹文(いんぶん)、公孫竜(こうそんりゅう)などである。今日からみれば、これらの人たちが同じ思想であったとはいいきれない。名の中心問題は名実論である。すなわち名と実(対象)との関係を考えることであり、今日の意味論(記号論三部門の一つ)に相当する。また論理学における概念論でもある。この意味論、概念論が中国論理学の主流となるので、その意味で先駆的役割を果たした名家を論理学派とみることができよう。ただし名家は判断論、推理論について詳しくない。それはむしろ同時代の別墨(べつぼく)(墨家の一派)である。
[加地伸行]
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公家の家格の一つ。弁官・蔵人(くろうど)をへて,大納言に進む家柄。平安末~鎌倉時代に,日野流藤原氏,勧修寺(かじゅうじ)流藤原氏,高棟(たかむね)流平氏が,弁官・蔵人から立身する家柄を形成し,家格としての名家が成立。これら3流諸家は,朝務などの実務能力をもって平安中期以来摂関家に仕え,平安後期からは院にも仕えた。明治の華族制度では,伯爵ないし子爵となった。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
諸子百家の一つ。名(言葉)と実(実体)の関係を明らかにしようとする論理学派。言葉の概念規定を中心とし,「白馬は馬にあらず」などの詭弁(きべん)術にとどまり,哲学的には止揚されず,秦漢以後衰えた。『鄧析子』(とうせきし)『恵施』(けいし)『公孫竜』『尹文子』(いんぶんし)(の4種)が現存する。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
…老子や荘子の考えは,道を根本として構成されるので,道家とよぶ。このほか論理学を説く名家,陰陽論を説く陰陽家,上述の蘇秦・張儀のごとく外交術を説く縦横家,農業技術や農民思想を説く農家など多くの流派の思想家が活躍し,互いに影響しあい,中国史上最も自由に思想が説かれた時代であり,これらを諸子百家と総称するが,後世に大きな影響を与えたのは儒家と道家であり,法家は思想として表面にあらわれなかったが,儒家の徳をたてまえとする政治を支える技術としてつねに利用された。 このように多様な思想が自由に展開したのは,人間精神の躍動を示すものであり,これは芸術にもあらわれた。…
…秦の始皇帝の天下統一は,この法家政策によって実現したものである。他方諸子百家の論争の激化に刺激され,議論を運ぶ論理そのものへの反省が生まれ,論理学派というべき名家が現れた。これを名家とよぶのは,名と実との関係を論ずるからである。…
※「名家」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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