池田大伍(だいご)作の戯曲。三幕六場。1918年(大正7)8月歌舞伎(かぶき)座で、2世市川左団次、4世沢村源之助、市川寿美蔵(すみぞう)(寿海)らにより初演。深川芸者美代吉には船頭三次という情夫があったが、金に詰まり、越後(えちご)からきた縮屋(ちぢみや)新助に100両の金の工面を頼む。美代吉にほれ込んでいた新助は、故郷の家や田畑を売って金をこしらえたが、旗本藤岡からの金が届いて窮地を救われた美代吉は、新助に返金し愛想づかしをする。怒り狂った新助は、深川八幡の宵宮(よいみや)に美代吉を切り殺す。河竹黙阿弥(もくあみ)作『八幡祭小望月賑(よみやのにぎわい)』に拠(よ)りながら、恋に賭(か)けたいちずで純朴な縮屋新助と、奔放な芸者美代吉との性格対比をみごとに描いた、作者の代表作。
[藤木宏幸]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
…この作を応用した3世河竹新七の《籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)》は内容的にはるかに粗く浅い。また直接これを新歌舞伎に改作した池田大伍の《名月八幡祭》もよく上演され,むしろ近年はこの作のほうに人気がある。しかし原作の〈噓から出た誠〉の諺どおりの新助の恋,美代吉の切ない愛想づかし,そして妖刀村正の魔力で逆上した新助が美代吉はじめ多くの人々を殺し,恋人が実妹と知り自滅するまでのキメこまやかなプロセスと歌舞伎味の濃さは本作が勝る。…
※「名月八幡祭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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