吠える(読み)ホエル

デジタル大辞泉 「吠える」の意味・読み・例文・類語

ほ・える【×吠える/×吼える】

[動ア下一][文]ほ・ゆ[ヤ下二]
獣などが大声で鳴く。「虎が―・える」
風・波などが、荒れて大きな音を立てる。「荒海が―・える」
大声で話す。わめく。どなる。「壇上で―・える」
雄叫おたけびをあげる。気合いを入れるために大声を出す。「マウンド上で―・える投手
[補説]書名別項。→吠える
[類語]鳴く嘶く囀る集く咆哮する遠吠えする時をつくる・喉を鳴らす・吠え立てる・唸るたけうそぶ鳴き頻る鳴き立てる歌う地鳴き笹鳴き蝉時雨虫時雨

ほえる【吠える】[書名]

《原題Howlギンズバーグの詩。1955年、サンフランシスコで行われた朗読会で発表後、他の詩編とともに翌年刊行。その際に、わいせつ文書にあたるとして告訴されるが、1957年に無罪判決となった。

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精選版 日本国語大辞典 「吠える」の意味・読み・例文・類語

ほ・える【吠・吼】

  1. 〘 自動詞 ア行下一(ヤ下一) 〙
    [ 文語形 ]ほ・ゆ 〘 自動詞 ヤ行下二段活用 〙
  2. 犬やけものなどが大声で鳴く。すさまじい声で鳴く。たけり鳴く。
    1. [初出の実例]「代(よよ)吠狗(ホユルいぬ)して奉事(つかうまつ)る者(もの)なり」(出典日本書紀(720)神代下(兼方本訓))
    2. 「しのびてくる人見しりてほゆる犬」(出典:枕草子(10C終)二八)
  3. 強い風で、木の枝や波などが大きな音を出す。
    1. [初出の実例]「山岳為之鳴呴〈也万奈利遠加保江岐(やまなりをかホエき)〉」(出典:御巫本日本紀私記(1428)神代上)
  4. 人が大声をあげて泣く。〔日葡辞書(1603‐04)〕
    1. [初出の実例]「ヤア皆何の為に其涙。ナナナナ、何吠えるのぢゃ女房ども」(出典:浄瑠璃・摂州合邦辻(1773)下)
  5. やかましく述べたてる。大声で言う。どなる。ののしる。
    1. [初出の実例]「尋る子細有、所詮鎌倉殿御前にてほへさせよ」(出典:浄瑠璃・曾我会稽山(1718)三)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「吠える」の意味・わかりやすい解説

吠える
ほえる
Howl & Other Poems

アメリカの詩人アレン・ギンズバーグの詩集。1956年刊。1950年代アメリカのビート世代を一躍有名にした詩集で、サンフランシスコの小出版社シティ・ライツからわずか44ページの小冊子で出され、アメリカ中の若者たちの深い共鳴を得た。かつてのダダイスト詩人で精神科病院に入っているカールソロモンに献じられた冒頭の長詩「吠える」は、文字どおり高度管理体制下の病めるアメリカの姿に対する慟哭(どうこく)である。現代詩の大家W・C・ウィリアムズ序文で「婦人たちよ、ガウンのすそをかかげなさい。これから地獄を通るのだから」といっている。ほかにホイットマンに呼びかけた「カリフォルニアのスーパーマーケット」や「ひまわり経典」が含まれている。

[新倉俊一]

『諏訪優訳『増補ギンズバーグ詩集』(1980・思潮社)』

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世界大百科事典(旧版)内の吠えるの言及

【ギンズバーグ】より

…アメリカの詩人。移民したロシア人を母にもつユダヤ系の詩人で,コロンビア大学を卒業後,サンフランシスコに放浪してG.スナイダーやL.ファリンゲッティたちと交わり,荒廃した世代を大胆に描いた散文的な詩集《吠える》(1956)で,一躍ビート・ジェネレーションの教祖となった。つづいて精神病院で死んだ母親ナオミのために感動的な鎮魂歌《カディッシ》(1960)を書く。…

【ヒッピー】より

…語源的には1950年代に流行した〈ヒップスターhipster〉に由来し,当初は〈現代感覚に敏感な者〉〈本当のフィーリングをもった者〉といった意味であった。A.ギンズバーグが《吠える》(1956)の冒頭で〈天使の頭をしたヒップスターたち〉とうたい,またノーマン・メーラーが《ぼく自身のための広告》(1959)の中でヒップスターについて詳しく論じたときには,ヒップスターはすでにヒッピーに近い意味をもちはじめていた。メーラーによると,ヒップスターはビートニクbeatnik(ビート・ジェネレーション)と不可分の関係にあり,前者は下層階級からの,後者は中産階級からの〈はみ出し者〉を意味する。…

【ビート・ジェネレーション】より

…そして,日常的な行動様式,性の問題,服飾など,一般の風俗的な価値観などにも多大の影響をおよぼした。この運動の端緒の一つに,解放された個性の自然発生的な発動に力点をおこうとする文学・芸術上の新運動があったが,アレン・ギンズバーグの詩《吠える》(1956),ジャック・ケラワックの小説《路上》(1957)などは,ビート運動の高らかな宣言であったともいえるし,ノーマン・メーラーの評論《白い黒人》(1957)などはその強力な擁護論であった。この運動に参加した人たちは,具体的には,それぞれの行動様式にニュアンスをもたせて,ヒッピー,ヒップスター,〈聖なる野蛮人〉などと呼ばれることもある。…

※「吠える」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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