告朔(読み)コクサク

デジタル大辞泉 「告朔」の意味・読み・例文・類語

こく‐さく【告×朔/視告×朔】

こうさく(視告朔)
古代中国で、諸侯天子から受けた新しい年の暦を祖先のびょうに納め、毎月1日に羊を供えて廟に告げ、その月の暦を国内施行したこと。

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精選版 日本国語大辞典 「告朔」の意味・読み・例文・類語

こう‐さくカウ‥【告朔・視告朔】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「視告朔」と書いても、「視」の字は読まないのが慣例 ) 毎月朔日(ついたち)に、百官の行事、上日(つとめび)を記した文を、天皇が閲覧する儀式。正月は二日か四日に行なわれ、後には、正月、四月、七月、一〇月の月初めにだけ行なわれた。ついたちもうし。こくさく。
    1. [初出の実例]「天皇御大安殿、受祥瑞、如告朔儀」(出典続日本紀‐大宝元年(701)正月戊寅)
    2. 「子日(ねのひ)若菜・卯日の御杖・視告朔(カウサク)の礼・中春両宮(ちゅうとうりゃうぐう)の御拝賀」(出典:太平記(14C後)二四)

こく‐さく【告朔・視告朔】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「視告朔」と書いても、「視」の字は読まないのが慣例 )
  2. こうさく(告朔)
    1. [初出の実例]「視告朔(コクサク) 視字不読之例也、正四七三ケ月朔有之」(出典:名目鈔(1457頃)恒例諸公事)
  3. 中国で、諸侯が天子から受けた暦を祖廟におさめておき、朔日ごとに羊を供え、その日が朔日であることを祖霊に告げる儀式。〔周礼春官大史

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改訂新版 世界大百科事典 「告朔」の意味・わかりやすい解説

告朔 (こうさく)

宮中儀礼の一つ。視告朔とも書くが,視の字を読まないのが例。中国の制度を継受したものであるが《日本書紀》の天武5年(676)9月朔(1日)条に〈雨降りて告朔せず〉とあるのが文献上の初見である。なお同書の古写本は,告朔を〈ついたちもうし〉と読んでいる。儀制令によると,毎月朔日に天皇が朝堂(大極殿)において,諸司の進奏する公文をみる儀とあり,その公文は,諸司が前月作成した符,移,解,牒(ちよう)などで,それに施行の有無を注したもの,また前月の行事や,あるいは奉写一切経所告朔解(《正倉院文書》)のごとく,同所が前月使用した料紙や用残物を書き上げた収支決算書など,広範囲にわたっている。なお故実書に前月の上日(勤務日数)も注して奏進したとする説があるが,これは月奏で,告朔とは本来別の儀である。告朔の時期は,奈良時代には毎月朔日を定日としたが,平安時代初頭には四孟月(正,4,7,10月の朔日)となり,正月は2日が恒常化し平安時代後期には行われなくなった。
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普及版 字通 「告朔」の読み・字形・画数・意味

【告朔】こくさく

暦を頒(わか)つときの礼。〔論語、八〕子貢、羊(きやう)(犠牲として供える羊)を去らんと欲す。子曰く、賜(子貢の字(あざな))や、女(なんぢ)は其の羊を愛(をし)む。我は其の禮を愛むと。

字通「告」の項目を見る

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「告朔」の解説

告朔
こうさく

「ついたちもうし」とも。古代,毎月1日に諸司が朝堂院で前月の政務や官人の勤務状況を記した公文を献上し,天皇に報告を行った儀式。676年(天武5)が史料上の初見。儀制令や「延喜式」によると,弁官が諸司官人を率いて公文を朝庭の案(机)の上におき,大納言が天皇に奏上する。造東大寺司管下でも月別や季別に告朔の文書が作られており,諸国でも郡司が同様の文書を国司に提出した。朝堂院での政務が衰退した平安初期以降は1・4・7・10月の四孟月(もうげつ)のみに行われ,平安後期には廃絶。


告朔
こくさく

告朔(こうさく)

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世界大百科事典(旧版)内の告朔の言及

【告朔】より

…宮中儀礼の一つ。視告朔とも書くが,視の字を読まないのが例。中国の制度を継受したものであるが《日本書紀》の天武5年(676)9月朔(1日)条に〈雨降りて告朔せず〉とあるのが文献上の初見である。…

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