こく‐はく【告白】
[1] 〘名〙
① 心の中に思っていたことや秘密にしていたことなどを隠さないでありのまま告げること。
※戦へ、大に戦へ(1904)〈
姉崎嘲風〉「
雄弁とは
辞令を巧にし身振りを弄するの謂でない、自信を告白するに過ぎない」 〔
晉書‐徐邈伝〕
② 世間に告げ知らせること。広告。
※新聞雑誌‐一八号・明治四年(1871)一〇月「告白〈略〉明治四年辛未九月十九日よりして予私塾を開き英学を教授す」
③
キリスト教で、自分の
信仰を表明したり、過去の罪を告げて神の許しを乞うたりすること。
※讚美歌(1903頃)目次「
信徒の生涯〈略〉悔改 告白」
[2]
[一] (
原題Confessiones) 宗教文学書。一三巻。
アウグスティヌス著。四〇〇年頃成立。回心にいたるまでの
自叙伝的
回想を中心に、自分の生活を反省し、神の
恩恵に対する感謝と
賛美を語ったもの。ローマ帝政末期の哲学、宗教思想が示され、
告白文学の傑作とされる。
告白録。
[二] (原題Les Confessions)
自伝。二部一二編。
ルソー著。一七六五~七〇年成立、
死後、
刊行された。誕生から一七六六年サンピエール島を去るまでの内面的
自己形成の跡をたどったもの。厳しい自己省察と強烈な
自我意識とが赤裸々に語られ、告白文学の傑作とされる。告白録。
懺悔録。
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デジタル大辞泉
「告白」の意味・読み・例文・類語
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普及版 字通
「告白」の読み・字形・画数・意味
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告白
こくはく
confession
キリスト教では、自分の犯した罪を痛悔し、それを神の前で述べて許しと恩恵を願うこと。プロテスタントでは「信仰告白」をさす。告白の行為には、神の救いと慈悲への信頼が込められており、告白を通じて、神の救いのわざを賛美するのである。『新約聖書』は、救いはイエス・キリストの十字架と復活のわざによって成就(じょうじゅ)されたと告げ、キリストへの信仰を告白することを求めている。カトリック教会では「告解(こっかい)の秘蹟(ひせき)」を略して告白というが、この場合、罪は司祭に告白される。
[門脇佳吉]
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告白〔小説〕
①湊かなえのミステリー小説。2007年に第1章にあたる「聖職者」が第29回小説推理新人賞を受賞、その後雑誌連載と書き下ろし原稿を加えて、2008年に単行本刊行。同年の週刊文春ミステリーベスト10の第1位に選出。
②2010年公開の日本映画。①を原作とする。監督・脚本:中島哲也、撮影:阿藤正一、尾澤篤史。出演:松たか子、岡田将生、木村佳乃、高橋努、井之脇海、田中雄土ほか。娘を殺された中学校の女性教師が犯人である生徒たちを追い詰めていくサスペンス映画。第34回日本アカデミー賞最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞受賞。第53回ブルーリボン賞作品賞、助演女優賞(木村佳乃)受賞。
告白〔ノンフィクション〕
旗手啓介によるノンフィクション。日本が初めて本格的に参加したカンボジアでのPKO(国連平和維持活動)における、一人の文民警察官の死の真相を追ったNHKのドキュメンタリー番組の書籍化。2018年刊行、同年第40回講談社ノンフィクション賞を受賞。
告白〔曲名:竹内まりや〕
日本のポピュラー音楽。歌はシンガーソングライターの竹内まりや。1990年発売。第32回日本レコード大賞最優秀ポップス・ボーカル賞(ポップス・ロック部門)受賞。日本テレビ系列で放映されたドラマ「火曜サスペンス劇場」の主題歌。
告白〔映画〕
1970年製作のフランス・イタリア合作映画。原題《L'aveu》。監督:コスタ=ガブラス、出演:イブ・モンタン、シモーヌ・シニョレほか。
告白〔曲名:平井堅〕
日本のポピュラー音楽。歌はシンガーソングライター、平井堅。2012年発売。テレビ朝日系で放送のドラマ「Wの悲劇」の主題歌。
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こくはく【告白 Confessiones】
アウグスティヌスの代表作の一つ。397年から400年にかけて書かれた13巻の書。そのうち1~9巻は自伝であって,幼少年時代の思い出,学業,読書,交遊,マニ教への入信とそこからの離脱,32歳のときの回心,その後しばらくのカッシキアクムでの生活と母モニカの死を記録している。第1巻冒頭に〈あなたはわたくしたちをあなたに向けて造られた。それゆえ,わたくしたちの心はあなたの内に憩うまでは平安を得ない〉とあり,この自伝は罪を表白しつつ神の愛と導きをたたえていることから,《懺悔録》とも《賛美録》とも訳される。
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告白
こくはく
Les Confessions
フランスの作家,思想家 J.-J.ルソーの自叙伝。2部 12巻。 1765~70年執筆,没後 81年 (1部) と 88年 (2部) に刊行。生誕からパリに出るまでを扱う明るい第1部とスイスを出てイギリスに逃れるまでの病的で暗い第2部とから成る本書は,自伝であると同時に自己弁護の書でもある。内包する雑多な異質の要素によって,ロマン主義の自己表現に決定的な影響を与えるとともに,近代のリアリズム小説,さらには心理小説にも大きな影響を及ぼした。
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告白
こくはく
①カトリック教会の秘跡の1つ(confession)
②アウグスティヌスの著作
③ルソーの自伝
信者が洗礼後犯した罪を司教に述べて許しと恩恵を願うこと。
青年期の放縦な生活から,マニ教をへてキリスト教にはいるまでの自伝。
1760年代後半の作。2部に分かれ,各6巻よりなる。刊行は死後で,第1部1781年,第2部1788年。赤裸々な告白を行い,近代文学の先駆となった。
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告白【こくはく】
アウグスティヌスの著作。原題《Confessiones》で,《告白録》《懺悔録》《賛美録》とも訳される。397年から400年にかけて執筆,全13巻。1〜9巻は自伝,10巻以降は神認識を主題とし,有名な時間論を含む。
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世界大百科事典内の告白の言及
【懺悔】より
…すなわち阿弥陀仏に懺悔して福利を求める〈阿弥陀悔過(あみだけか)〉,薬師如来を本尊として懺悔する〈薬師悔過〉などがそれである。 キリスト教においては,告白,告解などが懺悔の意味に用いられている。〈告白〉は一般に自己の信仰を表明することによって過去の生き方を悔い改めることであり,〈告解〉はとくにカトリックの用語で,洗礼後に犯した罪を聴罪司祭に告白して許しを受けることである。…
【アウグスティヌス】より
…
[生涯]
北アフリカのヌミディア州タガステに,異教徒の父パトリキウスPatriciusとキリスト教徒の母モニカMonicaとの子として生まれた。46歳のときに書いた自伝《告白》によれば,16歳のときカルタゴに出て修辞学を中心とする自由学科を学んだが,ある女性と同棲して1子アデオダトゥスを生んだ。さらにマニ教の世界理解に興味を覚えて入信した。…
【自伝】より
…英語のautobiographyが,現在各国で通用する呼び名の原語とほぼいえるようで,これは19世紀初頭にようやく使われ出した。しかし,5世紀の神学者,アウグスティヌスの《告白》は,その切実な内面性と描写力によって卓抜な宗教的自伝であり,1世紀のユダヤの軍人ヨセフスの《自伝》もまた,みずからにふりかかった汚名をそそぐことを目ざした自己弁護型の自伝の先駆にほかならない。さらに古く,中国の司馬遷の〈太史公自序〉があり,また古代の碑文,遺言などの中に自伝の発端を探り出すことも十分に可能だろう。…
【ラテン文学】より
…313年のキリスト教公認を境に,4世紀から5世紀にかけて,《マタイによる福音書》を叙事詩にしたユウェンクスJuvencus,雄弁家ラクタンティウス,賛美歌作者で人文主義に反対した神秘主義者アンブロシウス,古代最大のキリスト教ラテン詩人プルデンティウスとその後継者ノラのパウリヌスなどが活躍したが,古代最大の2人のキリスト教作家も続いて現れた。一人は,全古典作家に精通した人文主義者である一方,聖書をラテン語に翻訳して,異教の伝統とキリスト教とを照応させたヒエロニムス,もう一人はヨーロッパ最初の自叙伝《告白》と,《神の国》などの著作で名高いアウグスティヌスである。こうみてくると,一部にアンブロシウスのような反人文主義の主張があったとはいえ,全体としてはキリスト教作家たちは古典を尊重し,これを習得研究してキリスト教思想と融合させようとしている。…
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