精選版 日本国語大辞典 「呼吸」の意味・読み・例文・類語
こ‐きゅう ‥キフ【呼吸】
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生物の生存には酸素の供給が不可欠である。細胞内では酸素と反応した栄養素がエネルギーを放出し、その結果、二酸化炭素(炭酸ガス)が生成される(これを物質代謝という)。このような酸素と二酸化炭素の出入りが呼吸であり、呼吸は、物質代謝の行われる組織細胞でおこり、さらに、それらのガスの受け渡しをする血液を介して肺でも行われる。前者の出入りを内呼吸(組織呼吸)とよび、後者を外呼吸(肺呼吸)という。内呼吸は主として生化学の研究対象であり、生理学で扱われる呼吸とは、おもに外呼吸をさす場合が多い。
ヒトの酸素と二酸化炭素の出入りは、安静状態の成人で、1分間に酸素が250ミリリットル、二酸化炭素が200ミリリットルくらいである。激しい運動をした場合には、この数倍以上にも達する。しかも、体内の酸素貯蔵量はせいぜい1リットル余りであるから、呼吸による酸素の取り入れは、すこしも休むことのできない重要な身体活動といえる。
[本田良行]
呼吸器は鼻腔(びこう)から始まり、咽頭(いんとう)、喉頭(こうとう)を経て気管となる。気管は、さらに左右の気管支に分かれ、肺内で数多くの分岐を繰り返し、細かく数が増えていく。分岐は20~23回にも及び、最終的には薄い袋状の肺胞で終わる。ガス交換は主としてこの肺胞で行われる。個々の肺胞は径100マイクロメートル余りの小胞であるが、左右の肺をあわせると約3億個にもなる。したがって、ガス交換のための表面積は約60平方メートルと、小さな教室くらいの大きさとなる。
[本田良行]
普通、肺内に存在する空気量は約2リットル余りで、これを「機能的残気量」とよぶ。これに1回につき約0.5リットルの空気が呼吸のたびに外から入ってくることになる。また、精いっぱい息を吐いても、肺内にはまだ空気が残っている。これは「残気量」とよばれ、およそ1リットル余りである。この残気量は、肺を取り巻いている胸膜腔の内圧が、大気と通じている肺の気道内圧よりも低く、肺を外に向かって広げる力が働くために生じたものである。最大呼息から最大吸息を行うと4~5リットルの空気を吸い込むことができる。これが肺活量である。このときの肺内の空気の総量は6リットル弱で「全肺気量」とよばれる。
[本田良行]
肺胞の周りは肺毛細管が取り巻いており、その表面積は肺胞表面積とほぼ同じく約60平方メートルである。しかし、この部位に存在する血液量は約70ミリリットルくらいにしかすぎないから、肺胞内のガスは、肺胞と肺毛細血管膜の薄膜(1マイクロメートル以下)を介して非常に薄い血液の層と接することになる。したがって、血液が肺毛細血管内を通過する約1秒間の間に、肺胞ガスと肺毛細血管内のガスとは完全な平衡状態に達するものと考えられている。この場合のガスの移動は拡散によることが1920~1930年代に証明された。拡散とは、気体や液体のような流動物質の濃度が場所によって異なるとき、物質の移動がおこり、濃度の平均化がおこる現象のことである。
こうした肺におけるガス交換の結果、肺胞内の空気は外界の空気よりも酸素が低く二酸化炭素が高くなる。酸素は約21%から14%に、二酸化炭素はほぼ0から5.6%となる。この肺胞ガスは、機能的残気量のガスに対して絶えず外界から呼吸により空気が出入りするため、きわめて一定に保たれている。また、ガス交換が拡散でおこるという理由から、酸素と二酸化炭素の濃度はガスの分圧でもよく表される。肺胞内の酸素と二酸化炭素の分圧は100ミリメートル水銀柱(mmHg)と40ミリメートル水銀柱である。これと平衡している動脈血でも酸素と二酸化炭素の分圧は100ミリメートル水銀柱と40ミリメートル水銀柱となる。静脈血では、組織でのガス交換の結果、酸素は40ミリメートル水銀柱に低下し、二酸化炭素は46ミリメートル水銀柱に上昇する。
[本田良行]
肺を取り囲む気密の容器である胸壁と横隔膜は、吸気の際、拡大する。したがって、外気と通じている気道内圧から肺周囲の胸膜腔内圧への圧勾配(こうばい)が大きくなり、肺は膨張する。胸部を動かすのは外肋間筋(がいろっかんきん)で、肋骨の間を斜め前下方に向かって走っている。この筋肉の収縮によって、肋骨は脊椎(せきつい)を支点にして上方に持ち上げられるため、胸部は前後左右に拡大することになる。横隔膜は強力な筋組織であり、上方に凸のドーム状をしている。横隔膜は、その収縮によって面積が縮小するため、肺は下方に押し下げられる。吸息が終わると、胸壁と横隔膜は自己の弾性によってもとの位置に戻り、胸膜腔内圧も初めの内圧に復するから、肺は圧迫されて受動的に呼息相に移る。呼吸運動が非常に激しくなると、内肋間筋などの呼息筋が働いて積極的な呼息がおこる。
[本田良行]
呼吸運動の命令は周期的に呼吸中枢から発せられる。呼吸中枢は、延髄に存在する吸息・呼息中枢、橋脳(きょうのう)下部のアプニューシス(強い持続性の吸息を意味する)中枢、橋脳上部の呼吸調節中枢などの呼吸中枢群などからなっている。今日では、呼吸の基本リズムは延髄での吸息・呼息中枢でつくられるという考えが有力である。呼吸のリズムはいくつかの神経細胞からなるニューロン(神経単位)のネットワークでつくられるものと推測されている。普通の呼吸では、肺の吸息による膨張が肺迷走神経末端の伸展受容器を刺激し、その情報が呼吸中枢に伝えられて、呼吸リズムを調整する作用が加わる。これを「ヘリング‐ブロイエルHering-Breuerの反射」とよぶ。
[本田良行]
呼吸の主目的は酸素の取り入れと二酸化炭素の排出にあるが、最初に述べたように、体内での酸素貯蔵量は非常に少ない。また、二酸化炭素は体液に溶けると、炭酸となって酸性化作用をもち、その量は1規定の酸にして1日15リットルにも達する。それゆえ生体には、酸素・二酸化炭素の出入りを確保し、血液中のこれらガスのレベルの安定を図るための強力な調節系が存在している。これを「呼吸の化学調節系」とよぶ。また、酸素と二酸化炭素、さらにこれによって強く規定される水素イオン濃度指数(pH)は血液ガスとよばれることが多い。この血液ガスは、いわゆる負のフィードバック・ループnegative feedback loopとよばれる化学調節系で調節される。この系は、呼吸中枢群―(呼吸筋)―肺―血液ガス―末梢(まっしょう)と中枢の化学受容器―呼吸中枢群のループで構成される。たとえば、なんらかの理由で肺のガス交換が障害されると血液中の酸素分圧が低下する。この酸素分圧の低下は、おもに末梢の化学受容器を強力に刺激し、呼吸中枢の活動を高めて肺の換気が亢進(こうしん)し、低下した酸素分圧をもとに戻すように働くことになる。末梢化学受容器は、1920年代の終わりにベルギーのハイマンスC. Heymansらによってその作用が明らかにされた。末梢化学受容器は、総頸動脈(けいどうみゃく)の分岐部で外頸動脈寄りにある頸動脈体と、大動脈壁に散在する大動脈体からなっている。前者は洞神経(内頸動脈近くの舌咽神経の枝)から舌咽神経を通って、後者は迷走神経を通って呼吸中枢に刺激を伝えている。これら受容器は、主として動脈血酸素分圧と血液pHの低下によって刺激され、血液pHの上昇によって抑制される。この末梢化学受容器は心臓の出口と脳の入口の部分に存在するわけであるが、その理由は、出口のところでは循環系全体の監視装置として、入口のところでは脳循環系の動脈血の血液ガス、とくに酸素欠之を防ぐ監視装置として働いているためと考えられる。一方、中枢化学受容器が知られたのは比較的新しく、1960年代にアメリカのミッチェルR. MitchellやドイツのレシュケH. Loeschckeなどによって延髄腹側表層に存在すると報告された。中枢化学受容器は、pHの低下によって刺激される。この部位は脳脊髄液に覆われているため、透過性の高い血液の二酸化炭素によって酸性化されて刺激されるといわれている。血液pHの低下は、水素イオンが簡単には脳脊髄液中に透過されないため、その濃度がかなり高まらないとこの受容器は刺激されないものと思われる。
正常の空気呼吸をしている動物は、一般に酸素よりも二酸化炭素によって呼吸が支配されている。これは、元来、生物は海水中に発生したものであり、周りの海水中に溶けた酸素を利用して呼吸していた。ところが、生物が空気中に生活圏を移すと、環境の酸素濃度は一挙に30倍以上となった。つまり、現在の空気呼吸動物air breatherは、系統発生的にみると、以前と比べて非常な高酸素呼吸の環境にすんでいるわけである。このため、換気量は水中呼吸動物water breatherの数分の1にしかすぎないこととなった。しかし、こうした低換気のために、やがて体内に二酸化炭素が蓄積し、体液が酸性化acidosisする危険が生ずることになった。それゆえ、現在の空気呼吸動物では、主として二酸化炭素により呼吸が刺激され、血液pHを一定に保つよう調節されている。
[本田良行]
動物は体制により呼吸器官の型が異なるので呼吸運動も異なっている。
[嶋田 拓]
(1)肺呼吸 哺乳(ほにゅう)類の肺呼吸では、発達した横隔膜の収縮により胸腔(きょうこう)が体下方に拡大し、同時に外肋間筋などの収縮により肋骨があがって胸腔が上方と横へも拡大して胸部が広がり、空気が肺に吸い込まれる。横隔膜と肋骨がもとに戻るとき、空気は肺から排出される。呼吸運動は延髄の呼吸中枢に支配され自律的であるが、血中の二酸化炭素分圧や酸素分圧の変動も中枢を介して呼吸運動に影響する。鳥類や爬虫(はちゅう)類では呼吸は主として外肋間筋の作用による胸部容積の変化で行われる。両生類、とくにカエルは、声門と鼻孔の交互開閉により空気を口咽頭(いんとう)腔に出入りさせ、同時に舌骨板の働きで肺内の空気が口咽頭腔へ出、ここで新鮮な空気と混じってふたたび肺に入る。魚類では肺魚が口から空気を吸って肺呼吸する。
(2)皮膚呼吸 これは体表面で酸素を取り入れる呼吸で、特別に分化した呼吸器官をもたない動物、たとえばミミズやヒルなどはこれによって呼吸する。ほかに呼吸器官をもつ動物でも皮膚呼吸をするものは多く、腔腸動物、甲殻類、ある種の昆虫、脊椎(せきつい)動物などがそうである。ウナギは条件によっては全呼吸の60%以上を皮膚呼吸でまかなうことができる。カエルも全呼吸の50%ぐらいを皮膚で行う。鳥類や哺乳類では皮膚呼吸の占める割合はわずかである。皮膚で水呼吸する動物もいる。
(3)腸呼吸 これは腸内腔表面の細胞層を通しての酸素吸収で、えらや皮膚による呼吸の補助として水生動物でよく認められる。ドジョウは水面で口から空気を吸い、腸でガス交換して肛門(こうもん)から排出する。ユムシは肛門から直腸に海水を入れる。ナマコの水肺(呼吸樹)による呼吸も腸呼吸で、直腸の律動により海水が肛門から呼吸樹に入り、その薄壁を走る血管の血液とガス交換する。
(4)えら呼吸 水生動物に普通にみられる呼吸で、水を恒常的にえら表面に流し、えらの毛細血管を流れる血液との間でガス交換する。魚類、両生類の幼生と一部の成体、ホヤ類、頭索類、甲殻類、昆虫の水生幼虫、軟体動物などがえら呼吸する。魚類は鰓蓋(さいがい)を動かして口から水を吸い込むが、サバやサメ類などは前進運動により口から水を入れる。二枚貝類は繊毛運動で水流をおこし、えらに水を流す。潮汐(ちょうせき)などによる水の動きに頼るものもいる。魚類は普通えらで水呼吸するが、他の器官で補助的に空気呼吸するものも多く、先にあげたウナギやドジョウのほか、トビハゼは皮膚と鰓腔で、タイワンドジョウは上鰓器官で、ナマズ類は気嚢(きのう)で、硬骨魚の多くがうきぶくろで空気呼吸する。
(5)昆虫は気門の開閉により空気を気管内に入れ呼吸する。
[嶋田 拓]
大部分の昆虫や線虫やクラゲなど体制の簡単な動物では、細胞への拡散のみで十分な酸素が得られる。体制が複雑で循環系をもつ動物では、ガス交換は呼吸媒質と血中の酸素運搬分子間でおこる。酸素運搬分子には、ヘモグロビン(原索動物と大部分の昆虫を除いた動物)、ヘモシアニン(軟体動物と甲殻類)、クロロクルオリン(一部の多毛環虫類)などの呼吸色素がある。無脊椎動物には酸素運搬分子が血中に溶けているものもいるが、紐形(ひもがた)動物、軟体動物の一部、棘皮(きょくひ)動物、脊椎動物では特殊な血球中に局在する。呼吸器官で酸素はヘモグロビンと結合し、血流で末端組織に運ばれる。酸素とヘモグロビンの結合は可逆的である。ヘモグロビンは酸素分圧の高いところ(呼吸器官)では酸素を安定に結合するが、酸素分圧の低いところ(末端組織)では結合が不安定になり、酸素は放出される。末端組織で生じた炭酸ガスは血液に溶け込んで呼吸器官に運ばれ、そこで呼吸媒質中に放出される。
[嶋田 拓]
ガス交換(外呼吸)によって取り入れられた酸素が、体内の細胞や組織に運搬されて消費され、二酸化炭素を放出する現象であり、細胞呼吸または組織呼吸ともいう。
[嶋田 拓]
生化学的な意味での呼吸は、ミトコンドリアやクロロプラスト(葉緑体)で行われるエネルギー代謝の総称である。これは化学的な基質の酸化還元により生化学的エネルギー、主としてATP(アデノシン三リン酸)を得るもので、ATPは光や運動、熱に変えられて生体機能を維持するために用いられる。すべての細胞にはミトコンドリアか、これにかわる細胞内器官が存在するので、呼吸は細胞呼吸をその原点としているということができる。
ミトコンドリアの中では、きわめて複雑な生化学反応が多数の酵素によって進行しているが、エネルギーを得る反応は、基本的には酸素を用いた酸化還元反応なので、これを酸素呼吸といい、ごく一部の例外を除き生体はこれにより維持されている。酸素呼吸以外の呼吸の例としては、硝酸や硫酸を酸素のかわりに用いるもので、硝酸還元菌などとよばれている細菌は、このような無酸素呼吸を行うことが知られている。
ミトコンドリア内で進行する生化学反応はクエン酸サイクル(TCA回路)とよばれる一連の反応である。ミトコンドリア内における物質の出入りは、ピルビン酸や脂肪酸が酸素とともに入り、かわりに二酸化炭素とATPを放出する。ピルビン酸、脂肪酸はアセチル補酵素Aとなり、TCA回路を通じてNADH(還元型のニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド)を生じる。NADHは電子伝達系とよばれるチトクロムを主成分とする生体膜反応によって酸化型のニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)に変換され、同時にADP(アデノシン二リン酸)とPi(正リン酸)からATPを生ずる。ATPは高エネルギーリン酸化合物の一種である。ADPとPiからATPを生じるエネルギー変換のプロセスのメカニズムについては完全に解明されていないが、現在のところ化学浸透圧仮説chemiosmotic hypothesisがもっとも有力である。
この仮説は、ミトコンドリアの機能に関連して四つの独立した仮定からなっている。
(1)ミトコンドリア内膜にある呼吸鎖(電子伝達系)はプロトン(H+)を動かし、電子が電子伝達系に沿って運ばれてきたときに、ミトコンドリアのマトリックスの外にプロトンを押し出す。
(2)ミトコンドリアのATP合成酵素複合体もまた、ミトコンドリアの内膜に沿ってプロトンを動かす。反応は可逆的であって、プロトンを押し出すのにATPのエネルギーを用いるが、もし十分な量のプロトンがあると、反応は主としてATP合成のほうに働く。
(3)ミトコンドリアの内膜はH+(プロトン)とOH-イオンに対し不透過性をもつ。
(4)ミトコンドリア内膜は、一組の必要な物質の出入りを仲介するキャリアタンパクをもつ。
ミトコンドリア内膜上に埋め込まれている呼吸鎖はH2+1/2 O2―→H2Oの反応により、エネルギーを獲得している。これはさらに多くの小さな段階にまで解析されている。この段階は電子伝達系ともよばれ、コエンチームQ(ユビキノン)が電子のキャリアであることが知られている。また、電子伝達系のタンパク質として5種類のチトクロムが知られている。これらは有色タンパク質で、電子の授受により第二鉄あるいは第三鉄の形で存在する。チトクロムに加えてさらに少なくとも6種の異なるFe(鉄)―S(硫黄(いおう))複合体と2種のCu(銅)原子、2種のフラビンが呼吸鎖に強く結合していて、電子を運んでいる。これら電子のキャリアは、つねに前者より大きい親和力をもつため、NADHからの一種のカスケード(小さな滝の意)ができて電子がより低いエネルギーレベルへと流れていく。
ATPをADPとPiに加水分解するのに必要な自由エネルギー(ΔG)は-11~-13kcal/molである。ATP、ADP、Piが等しい濃度で存在する、いわゆる標準自由エネルギーΔG0はわずかに-7.3kcal/molなので、ATPがADPとPiに比べて低い濃度のときにはΔGはほとんどゼロになり、このとき反応は平衡に達する。またADP+Piに比べてATPが高濃度に存在することは、ADPのATPへの効果的な変換を維持し、ATPの分解を細胞において平衡からはるかに離れた状態に保つため、ΔGは非常に大きい負の値をとる。この大きな非平衡状態なしには、ATP加水分解は細胞反応に用いられることなく、また多くの生化学反応が前向きよりも後ろ向きに進行することになろう。
生体が利用している細胞呼吸の効率は非常に高く、1分子のグルコースからは24ATP分子が、1モルのパルミチン酸からは96分子のATPができることになり、アセチル補酵素Aができる前から計算すると、1モルのグルコースの完全酸化により36ATP分子が、パルミチン酸のそれからは129ATP分子ができることになる。ガソリンエンジンや電動機のエネルギー変換効率は10~20%なのに、細胞呼吸の効率は50%以上になり、生物が熱をいたずらに捨てることなく、いかに効率よくエネルギーを利用しているかがよくわかる。
ミトコンドリアによく似た細胞内器官としてクロロプラスト(葉緑体)がある。クロロプラストは、ミトコンドリアのマトリックスに相当するクリスタのかわりに、ストロマという間隙(かんげき)をもつ。また、チラコイドという管もある。反応としては、光化学反応によってATPと還元型のニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)を生じ、二酸化炭素を炭水化物に変えることができる。このような炭素固定は、リブロース二リン酸カルボキシラーゼによって触媒される。クロロプラストはミトコンドリアのように、NADPHなしにATPをつくることもできる。したがって、広義の意味でクロロプラストも呼吸系をもっているということができる。また、呼吸系は、進化の過程において、発酵のような効率の悪い呼吸系(ATP合成系)から、ミトコンドリアや光合成もできるクロロプラストを生み出してきたのではないかといわれている。
[岡崎英雄]
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(垂水雄二 科学ジャーナリスト / 2007年)
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…これらの反射に関与する全経路を反射弓という。脊髄に反射中枢をもつ脊髄反射には伸張反射,屈曲反射,交叉(こうさ)性伸展反射などがあり,また脳幹に反射中枢をもつ反射には姿勢反射,呼吸反射,咀嚼(そしやく)反射などがある。(a)伸張反射 これは筋肉とくに伸筋が一過性にまたは持続的に引き伸ばされると反射的に収縮が生ずるもので,筋肉の長さを自動的に制御し,とくに背筋や下肢伸筋の抗重力筋群によく発達していて,直立姿勢の保持に役だつと考えられる。…
…哺乳類のからだの体腔を前半の胸腔と後半の腹腔とに隔てる筋肉性の厚い膜で,呼吸運動に関与する。原始的な魚類を除く脊椎動物では,体腔の前部に位置する心臓はその後ろに生じた隔壁によって体腔の主部から隔離されている。…
…無対の器官は,胎生期に正中線上の間膜と呼ばれる体腔を左右に二分する膜内に発生する器官で,血管系,消化器系が含まれる。これに対し,左右対称に発生する器官は,呼吸器と泌尿生殖器である。
[男女差と人種差]
男性と女性の体には性差がある。…
…【田隅 本生】
[ヒトの胸郭]
12個の胸椎が後正中部の支柱をなし,これと関節をつくって側方から前方へ伸びだす12対の肋骨と,前正中部でそれをまとめる1個の胸骨で組み立てられている。胸郭は胸壁の支柱をなして,重要な胸部内臓を保護するとともに,呼吸運動にさいしてその内腔すなわち胸腔の容積を増減させて,肺への空気の出入りを可能にする。この胸郭容積の増減は肋骨のあいだに斜めの2方向に張る内外肋間筋の作用で行われる。…
…けがやいろいろの病気で,呼吸運動が不十分となったり停止したりする。また,肺の働きが障害されたり,酸素の供給が不足したりすると,呼吸運動が十分であっても,血液が十分な酸素を得られない。…
…脊椎動物の頭の前部にある嗅覚器で,四足動物では呼吸器系の入口にもなっている中空の器官。外面に見える部分をさすことも多い。…
※「呼吸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
アデノウイルスの感染により、発熱、のどのはれと痛み、結膜炎の症状を呈する伝染性の病気。感染症予防法の5類感染症の一。学童がプールで感染して集団発生するのでプール熱ともいう。...
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