命令(読み)メイレイ

デジタル大辞泉 「命令」の意味・読み・例文・類語

めい‐れい【命令】

[名](スル)
上位の者が下位の者に対して、あることを行うように言いつけること。また、その内容。「命令を下す」「命令に従う」「部下に命令する」「命令一下」
国の行政機関が制定する法の形式、および、その法の総称。法律を実施するため、または法律の委任によって制定される。政令総理府令省令など。「執行命令
行政庁が特定の人に対して一定の義務を課する具体的な処分。
訴訟法上、裁判官がその権限に属する事項について行う裁判。「略式命令
コンピューターで、コマンドのこと。
[類語](1言い付けめいれい指令下命指示指図さしず号令発令沙汰さた主命君命上意達し威令厳令厳命(尊敬)仰せ尊命懇命(―する)命ずる言い付ける申し付ける仰せ付ける

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精選版 日本国語大辞典 「命令」の意味・読み・例文・類語

めい‐れい【命令】

  1. 〘 名詞 〙
  2. [ 一 ] 行なうように言いつけること。また、その内容。
    1. 上位の者から下位の者に対して申しつけること。また、その内容。下知。〔文明本節用集(室町中)〕
      1. [初出の実例]「忍辱の袈沙をぬりかさねて命令(メイレイ)を俟(まつ)分野(ありさま)は」(出典:地蔵菩薩霊験記(16C後)一一)
      2. [その他の文献]〔王周‐誌峡船具詩〕
    2. 特に、軍隊で指揮官または上級者が部下または下級者の行動を指定すること。また、その内容。
    3. 電子計算機に演算やその他一定の仕事を行なわせるための手順の一こま一こま。また、それに用いる機械用の単語。
  3. [ 二 ] 国などの機関が命じること。また、その内容。
    1. 国の行政機関が制定する法の形式、およびその法の総称。法律の範囲内で認められる。政令・省令など。
      1. [初出の実例]「天皇は法律を執行する為に、〈略〉必要なる命令を発し、又は発せしむ」(出典:大日本帝国憲法(明治二二年)(1889)九条)
    2. 裁判長受命裁判官など、裁判官がその権限事項についてする裁判。裁判官が合議体でする裁判である判決・決定に対していう。
      1. [初出の実例]「決定及命令は相当と認むる方法を以て之を告知するに因りて其の効力を生す」(出典:民事訴訟法(1926)二〇四条)
    3. 行政機関が特定の人または団体に対して一定の作為または不作為を課する具体的な処分。
      1. [初出の実例]「運輸大臣は、〈略〉日本国有鉄道に対し監督上必要な命令をすることができる」(出典:日本国有鉄道法(1948)五四条)
    4. 公務員の職務に関して、上司が一定の事項を命ずること。職務命令。〔国家公務員法(1947)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「命令」の意味・わかりやすい解説

命令
めいれい

一般には上位の者から下位の者に対する強制的な指図(さしず)を意味するが、法律上は種々の用法がある。

(1)行政機関の定立する法規をいい、議会の定立する法規たる法律と対比される。命令の主体によって、政令、省令、府令、行政委員会規則、庁規則、知事・市町村長規則などの別があり、内容上から国民の権利義務に関する定めである法規命令と、国民の権利義務に影響しない定めである行政規則に区別される。法規命令はさらに執行命令委任命令に区別される。

(2)行政庁が法令に基づいて国民に対してなす下命行為をいう。たとえば、違法建築物の除却、道路の通行禁止などがこれである。

(3)上司の部下に対する職務上の指図すなわち職務命令をいう。

(4)裁判の一形式で、合議体でなすべき裁判である判決・決定に対し、個々の裁判官のする裁判をいう。ただし、差押え命令など命令という名称を有しながら決定の性質をもつものが多い。

 (1)に関し、国会を唯一の立法機関(憲法41条)とする現行法の下では、命令は法律より劣位にあり、しかも、法律により委任された事項を定める委任命令、法律を執行するために細目的事項を定める執行命令だけが認められる。法律の委任の範囲や執行のための具体的個別的定めの範囲を越える命令は無効である。法律の委任がある場合のほかは罰則を設けること、権利を制限し、義務を賦課することはできない。なお、法律と無関係に発しうる独立命令緊急命令明治憲法では認められていたが、現憲法下では否定されている。

 国の行政機関が定める命令の種類としては、前述したように内閣の発する政令、内閣総理大臣の発する府令(内閣府令、旧総理府令)、各省大臣の発する省令のほか、各外局の長が発する公正取引委員会規則、国家公安委員会規則などの外局規則、および会計検査院規則・人事院規則などがある。

[阿部泰隆]

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改訂新版 世界大百科事典 「命令」の意味・わかりやすい解説

命令 (めいれい)

(1)国の行政機関の制定する一般的な法的規律(行政立法)を命令という。現行憲法下における命令の形式としては,内閣の定める政令(憲法73条6号),内閣総理大臣または各省大臣の定める総理府令または省令,委員会または庁の長が定める規則(国家行政組織法12,13条),会計検査院の定める会計検査院規則(会計検査院法38条),人事院の定める人事院規則(国家公務員法16条)などがある。またそれは法律を執行するための執行命令(施行命令)又は法律の委任に基づく委任命令としてのみ制定することが許される。命令に刑罰規定を設け,命令が国民に義務を課しまたはその権利を制限するには,必ず法律の委任に基づかなければならない(憲法73条6号但書,内閣法11条,国家行政組織法12条4項)。

 命令の効力はその性格上,法律に劣る。明治憲法下においては,立法手続をとりえない緊急の場合に法律に代わる緊急命令を制定し(明治憲法8,70条),法律から独立した独立命令を制定することができたが(9条後段),このような副立法は今日認められていない。

 歴史的には,議会の地位が低く,君主に直属する行政権が強大であった時代には,命令が支配的な役割を有していたが,議会の地位が高まるにしたがって,法律の支配が確立し,命令は法律を執行し,または法律の委任に基づくもののみとなった。日本においても現行憲法が国会を国権の最高機関であり,かつ国の唯一の立法機関であるとしたことにより(憲法41条),歴史の一般的な流れに沿った制度となった。しかし社会関係が複雑になるにしたがい,法律は大綱的規定を設け,その執行のために必要な規律を行政権にゆだねることも少なくなく,現実の法律適用上命令は重要な役割を果たしている。

 なお,上記の意味での命令のほか,裁判所の定める規則(裁判所規則。憲法77条1項),地方公共団体の定める条例・規則を含めた法律以外の国法形式を命令ということもある。

(2)行政機関が法律,条例の規定に基づいて国民に対し具体的に一定の義務を課することを命令という。この意味における命令は,いわゆる行政行為(処分)としての命令であり,(1)の意味における一般的命令とは異なる。
行政立法
執筆者:

訴訟法上は,司法機関の判断行為である裁判の一形式をいう。すなわち,裁判は判決,決定,命令の3種に分類され,命令は個別の裁判官が行いうる裁判形式である。比較的軽微な事項を対象とし,口頭弁論を経る必要がない。不服申立ての形式は,民事では抗告または異議,刑事では準抗告である。なお,支払命令,引渡命令のように法文上・慣例上命令の語が付せられていても,厳密には決定であり上述の命令でないものもある。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「命令」の意味・わかりやすい解説

命令【めいれい】

(1)国会で制定される法律に対し,行政機関が制定する法規。委任命令執行命令など。命令の形式としては,政令省令,庁令など。(2)行政庁が人民に対して作為・不作為給付・受忍などを命ずる行為。(3)訴訟法上,裁判長,受命裁判官受託裁判官などが単独でする裁判。決定と同様に訴訟中に生じた付随的事項や迅速を要する事項についてなされる。裁判所ではなく,裁判官がする裁判である点で,決定と異なる。
→関連項目許可抗告訓令抗告口頭弁論最高裁判所裁判施行令上訴特別抗告独立命令法令立法略式手続令状

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「命令」の意味・わかりやすい解説

命令
めいれい

(1) 行政法上の命令 議会の議を経て制定される国法形式である法律に対して,行政機関の制定する国法形式を命令と総称する。法律から独立な命令を独立命令,法律を実施するための命令を執行命令,法律の委任に基づいて発せられる命令を委任命令という。明治憲法は独立命令を認めていたが,現行憲法はこれを認めず,執行命令と委任命令だけを認めている。命令の形式には,政令,内閣府令,省令,外局規則,および会計検査院や人事院の独立機関の規則がある。以上のような法規としての命令のほかに,行政機関が特定人に義務を課する具体的処分としての命令 (処分命令) がある。また公務員の職務に関して上司が部下にくだす職務命令を法令上,命令と呼ぶ場合がある (国家公務員法) 。 (2) 民事訴訟法上の命令 裁判の一種であって,裁判所のする判決および決定に対する。裁判長,受命裁判官,受託裁判官など個々の裁判官がその資格に基づいてする裁判をいう。裁判所が合議体である場合は裁判所と裁判長は明らかに区別されるが,単独制の場合は1人で裁判所を構成し裁判長の職務も行なうので明確を欠く。この場合は,合議体であれば合議体に属するはずの裁判が決定であり,裁判長の権限でできるはずの裁判が命令である。ただし,法典の用いている名称には厳密でないものがあり,命令とあっても決定の性質をもつものが少なくない (たとえば,支払命令,差し押さえ命令,移付命令,仮差し押さえ命令,仮処分命令) 。命令をするにあたっては,口頭弁論を開くかどうかは任意的であり,その命令は相当と認める方法で告知すれば足りる。これに対する不服申立は常にできるわけではなく,法律で特に許された場合にのみ抗告という簡易な独立の不服申立方法が認められる。

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「命令」の解説

命令

コンピューターに処理を指示すること。命令によって演算処理やデータの入出力ができる。命令には、論理演算命令、算術演算命令、比較命令、無操作命令などさまざまな分類がある。

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普及版 字通 「命令」の読み・字形・画数・意味

【命令】めいれい

命ずる。

字通「命」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の命令の言及

【立法】より


[国会以外の公的機関による立法]
 国会以外の公的機関も,一般的には法律の範囲内で立法が認められている。両議院はそれぞれ議院規則を定めうる(憲法58条2項)し,内閣は政令(73条6号),大臣は命令について(国家行政組織法12条)それぞれ立法権を有する。また,最高裁判所は,裁判に関連した事務処理,裁判所の内部規律等について規則を定めることができる(裁判所規則。…

※「命令」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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