平安時代中期の歌謡。二巻。『和漢朗詠抄』『倭漢抄』『四条大納言(だいなごん)朗詠集』などともいう。藤原公任撰(きんとうせん)。「和漢」とは和歌と漢詩文をさし、朗詠に適した漢詩文の秀句588首、和歌216首の計804首を上下二巻に収める。上巻は「立春」以下歳時仕立ての四季を、下巻は天象・動植物および人事にかかわる雑題を百科全書風に総計114項目(付加項目を含めると125)に分類。各項目は、中国人の長句・詩句、邦人の長句・詩句・和歌の順に配列するのを原則とする。詩句のほとんどは七言二句のものであり、それも、七言律詩の頷聯(がんれん)・頸聯(けいれん)(もっとも対句の華麗な第3・4、第5・6句目)二聯のうちの一聯をとることが多い。『千載佳句(せんざいかく)』『古今和歌六帖(じょう)』からの引用が著しいが、中国作者はほぼ唐代の詩人に限られ、中・晩唐期の詩人が多く、なかでも白居易(はくきょい)は元稹(げんしん)以下を圧倒し、唐人詩句の実に7割近くを占め、本朝詩人では、菅原道真(すがわらのみちざね)(詩句数で第一位)、菅原文時(ふみとき)(詩句・摘句総数で第一位)に次いで、大江朝綱、源順(したごう)、紀長谷雄(きのはせお)など天暦(てんりゃく)期(947~957)の詩人が主流をなし、和歌作者では、紀貫之(つらゆき)、凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)が尊重され、いずれも一条(いちじょう)朝の美意識を反映する。貴族・武家の学問教養の基本図書にあげられ、和漢を問わず、後代文学への影響は甚大で、『新撰朗詠集』以下後続の類書をも生んだ。
[渡辺秀夫]
『大曽根章介・堀内秀晃校注『新潮日本古典集成 和漢朗詠集』(1983・新潮社)』▽『川口久雄著『平安朝日本漢文学史の研究』上中(1975、82・明治書院)』
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平安時代の歌謡集。2巻。藤原公任(きんとう)撰。1012年(長和元)頃,あるいは18年(寛仁2)頃の成立。上巻は四季,下巻は雑。漢詩文588首と和歌216首。朗詠題のあとに中国詩文・日本詩文・和歌の順に並べる。漢詩文の作者は白居易が圧倒的に多く,菅原文時・同道真(みちざね)が続く。和歌の作者は紀貫之(つらゆき)・凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)・柿本人麻呂・中務(なかつかさ)らが多い。成立の背景には朗詠の流行や,和漢の作品を並置する傾向の発生がある。後世の文学に与えた影響は大きく,和歌・漢詩のほか,物語・軍記・説話・今様・謡曲など多岐に及ぶ。「日本古典文学大系」所収。
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