品種改良(読み)ひんしゅかいりょう

精選版 日本国語大辞典 「品種改良」の意味・読み・例文・類語

ひんしゅ‐かいりょう ‥カイリャウ【品種改良】

〘名〙 家畜栽培植物などを人為的に改良してよりすぐれた品種をつくり出すこと。育種

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デジタル大辞泉 「品種改良」の意味・読み・例文・類語

ひんしゅ‐かいりょう〔‐カイリヤウ〕【品種改良】

農作物や家畜の品種の遺伝形質を、交雑突然変異などの方法で改良し、より有用な新しい品種を作り出すこと。

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百科事典マイペディア 「品種改良」の意味・わかりやすい解説

品種改良【ひんしゅかいりょう】

生物遺伝質改善して,利用価値の高い作物・家畜の新品種を作り出すこと。育種とほぼ同義。収量増加,環境適応性・耐病性の強化,品質の良化,生育時期の移動などを目的とする。日本では古くからイネ,麦などで変種の利用や他国からの品種導入により,簡単な品種改良が試みられ,江戸時代にはカイコなどで交雑による新品種の作出が行われた。今日,作物では分離育種法,交雑育種法,突然変異育種法,倍数体育種法,雑種強勢育種法,栄養雑種育種法,組換えDNA技術によるバイオテクノロジーなどを用い,家畜ではおもに交配選抜により品種改良が行われる。日本における実際的な事業は,主穀については国・公立の農業試験場が,蔬菜牧草等については民間企業が中心になって行い,優秀性,均等性,永続性を備えているとされたものが新品種として,農林水産省や公共団体により登録される。→遺伝子組換え食品
→関連項目アンチセンスRNA遺伝子導入動物イネゲノム解析研究系統育種レトロトランスポゾン

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「品種改良」の意味・わかりやすい解説

品種改良
ひんしゅかいりょう

人類がその生物から利益を受ける度合いをさらに高める目的で、既成品種のもっている遺伝的特性を合目的的に変えるために行う諸操作をいう。ときによっては育種と同義語として用いられる。しかし、普通、育種では既存の品種のみを対象とするものでなく、新しい遺伝資源の開発、導入、保存などのように、品種改良を取り巻く周辺の整備までが包含される。

[飯塚宗夫]

作物の品種改良

作物は利用目的によって食用、観賞用、薬用、工芸用などの別があり、利用目的とする器官、物質などはおのずから異なる。品種改良では各作物を利用する目的に沿って、それらの形質が最高に発現できるように遺伝的構成を改善することを主眼とする。このため、たとえば食用作物では品質、収量などに関与する遺伝的形質を主とし、それらと関連する耐病虫性、ストレス抵抗性などの形質をも総合的に改善する育種技術の適用が必要となる。

[飯塚宗夫]

家畜の品種改良

家畜の場合、主として各実用品種の泌乳量、産肉量、産卵数などの量的形質の改良とともに、それらの生産物の食品としての質的改良も対象となる。また飼育の容易性、耐病性、環境への適応性などの強化もその目的となる。したがって家畜の品種改良には複雑な育種技術が用いられる。

[西田恂子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「品種改良」の意味・わかりやすい解説

品種改良
ひんしゅかいりょう
improvement of breed

生物の遺伝質を改善して作物や家畜の新しい品種を育成,増殖することで,育種とほとんど同義に用いられている。作物と家畜がその対象となる。作物の場合は繁殖様式の違い,遺伝的変異の作成方法の差異,選抜方法の違いなどを基準にして分類される。実際にあたってどの方法を採用するかは,作物の種類,繁殖様式の差異,目標,遺伝様式の違いなどによって異なり,接 (つぎ) 木,挿木,株分けなどの無性繁殖や人工授粉で改良,選抜が行われているが,第2次世界大戦後は各種の放射線または化学薬品の利用によって,人為的に突然変異を起させ,新しい品種を得る方法も実用化している。家畜の場合は近親交配から交雑まで行われ,選抜にあたっては個体選抜,血統選抜の2方法がとられている。

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知恵蔵 「品種改良」の解説

品種改良

作物や家畜の新品種を作出すること。育種とほぼ同義。品種とは、ある生物種のうちで、特定の遺伝的な特徴を有する個体集団をいう。従来の交配法では、親同士の遺伝子群を混合し、得られる新しい組み合わせの遺伝子群をもつ子のうちから、優良なものを選別していくことにより、望ましい遺伝子を集積させた。現在では、交配法以外にも、様々な手法が用いられる。雑種強勢を利用したF1品種(雑種第1代品種)は野菜や食用家畜に普及し、放射線や薬剤(突然変異誘発剤)を用いた突然変異育種法では、多くの品種が生み出されている。バイオテクノロジーの進展によって、細胞融合、組織培養/細胞培養、胚培養、受精卵操作、遺伝子組み換えなどの手法によっても新品種が作出されている。飼料や食品としてなどの安全性の確認作業が科学的に行われているのは遺伝子組み換え作物についてだけである。

(川口啓明 科学ジャーナリスト / 菊地昌子 科学ジャーナリスト / 2007年)

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世界大百科事典 第2版 「品種改良」の意味・わかりやすい解説

ひんしゅかいりょう【品種改良 breeding】

作物,家畜などの新品種を創出すること。〈改良〉という言葉が慣用的に使われているが,実際には創出というほうが近い。育種とほぼ同義語だがその定義にはかなり幅がある。育種が家畜や作物の遺伝的な改良を意味するのに対し,品種改良では環境条件の改善による生産性の向上をも含む広い意味で用いることが多く,一方,この語を既製品種の改良に限定して用い,新品種の作出は含まないとする場合もある。作物,家畜の生産は優良な品種を利用して初めて高い収益を上げることができるため,品種改良に対する期待はきわめて大きい。

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世界大百科事典内の品種改良の言及

【育種】より

…生物の遺伝質を人工的に変えて,一段と利用価値の高い新しい型のものを作り出すこと。品種改良とほぼ同じであるが,やや学術用語の感じが強い。新しい地域に従来なかった新種,新品種を導入することや,全く新しい生物種を創出することも含む。…

【系統選抜】より

…動植物の品種改良(育種)の基本的な操作の一つ。作物では1個体からたくさんの種子が採種できることが多い。…

【集団選抜】より

…作物・家畜の品種改良(育種)で実施している選抜方法の一つで,個体選抜や系統選抜と違い,集団として選抜個体群を維持していく方法をいう。もともと交雑育種法とは異なる分離育種法で行われてきた選抜操作の一つで,他殖性動植物のために考案されたものであるが,現在は種々の育種の場面に応用されている。…

【農業】より

…(4)自然条件の変動の影響,それに左右されることの大きさ 農業生産とくに作物栽培は,気温の急変,降水量や日照量の多寡やその急変によって,豊凶が支配されることが著しく大きい。自然条件の変動によるこの豊凶の大きな幅は,品種改良や農業技術の進歩,灌漑・排水設備の整備などによって,ある程度まで縮小することはできるが,その変動を完全になくすることはできない。 農業生産の第3の技術的特質は,有機的な生物生産行程と無機的な機械・工学的行程の二つの行程が併存し,両者が結びついて生産が行われることである。…

※「品種改良」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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