問う(読み)トウ

デジタル大辞泉 「問う」の意味・読み・例文・類語

と・う〔とふ〕【問う】

[動ワ五(ハ四)]
わからないことやはっきりしないことを人に聞く。また、相手の考えを知ろうとして、ある事をたずねる。多くの人に判断を求める。質問する。「安否を―・う」「真意を―・う」「選挙で民意を―・う」
(多く受身の形で)人の能力物事の価値などを改めて試す。「指導力が―・われる」「真価が―・われる」
責任の所在や犯罪の事実などを追及する。「責任を―・う」「殺人罪に―・われる」
(下に打消しの語を伴って)ある資格や条件を問題として取り上げる。「年齢・性別は―・わない」「過去は―・わない」
話しかける。もの言う。
「さねさし相模の小野に燃ゆる火の火中ほなかに立ちて―・ひし君はも」〈・中・歌謡〉
占いをして結果を求める。
夕占ゆふうらを我が―・ひしかば」〈・三三一八〉
求婚する。
「一人もちたる姫をも―・ふ人もなし」〈伽・鉢かづき
[可能]とえる
[類語](1尋ねる聞くはかただ問い質す聞き質す問い合わせる聞き合わせる聞きただす問い返す聞き返す聞き直す尋ね合わせる照会打診質問する発問する借問しゃもんする試問する下問する問い質疑設問諮問問答問題疑問押し問答水掛け論禅問答一問一答自問自答質疑応答/(3ただ追及する問責する糾問する詮議する(謙譲)伺う

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「問う」の意味・読み・例文・類語

と・うとふ【問・訪】

  1. 〘 他動詞 ワ行五(ハ四) 〙
  2. [ 一 ] ( 問 ) 他にものを言いかけたり、調べたりする。
    1. 話しかける。もの言う。
      1. [初出の実例]「さねさし 相模(さがむ)の小野に 燃ゆる火の 火中(ほなか)に立ちて 斗比(トヒ)し君はも」(出典古事記(712)中・歌謡)
      2. 「獼猴と白象と此に於て相ひ問(トハ)く」(出典:大唐西域記長寛元年点(1163)七)
    2. 質問する。問いたずねる。また、判断を求める。
      1. [初出の実例]「道斗閇(トヘ)ば 直(ただ)には告(の)らず 当芸麻道(たぎまち)を告る」(出典:古事記(712)下・歌謡)
      2. 「宮こ人いかにととはば山たかみはれぬ雲ゐにわぶとこたへよ〈小野貞樹〉」(出典:古今和歌集(905‐914)雑下・九三七)
    3. ( 「占(うら)を問う」などの形で ) うらなってみる。うらないの結果をもとめる。
      1. [初出の実例]「何時(いつ)来まさむと 玉桙の 道に出で立ち 夕占(ゆふうら)を 我が問(とひ)しかば」(出典:万葉集(8C後)一三・三三一八)
    4. 訊問する。詰問する。罪を取り調べる。問いただす。
      1. [初出の実例]「又曷(いづ)れの神を遣はしてか、天若日子が淹留(ひさしくとど)まる所由(ゆゑ)を問(とは)む」(出典:古事記(712)上)
    5. 追及する。罪や責任を、その人について追及するのにいう。「反逆罪に問われる」「委員長の責任を問う」
    6. ( 打消の語を伴って用いる ) 問題にする。あることについて、それを区別の基準にする。「年齢・学歴・経験を問わず」「男女を問わない」
      1. [初出の実例]「遠近の差は少い。又此場合に問(ト)ふ所でも無い」(出典:雁(1911‐13)〈森鴎外〉二三)
  3. [ 二 ] ( 訪 ) 目的をもってある人や場所をたずねる。
    1. 捜しに行く。たずね求める。
      1. [初出の実例]「天皇崩(かむあが)りまして後、天の下治(し)らす可き王(みこ)(ましま)さず。是に日継(ひつぎ)知らす王を問(とふ)に」(出典:古事記(712)下)
    2. 訪問する。おとずれる。
      1. [初出の実例]「真木の上に降り置ける雪のしくしくも思ほゆるかもさ夜問(とへ)吾が夫(せ)」(出典:万葉集(8C後)八・一六五九)
      2. 「ひぐらしの鳴く山ざとの夕ぐれは風よりほかにとふ人もなし〈よみ人しらず〉」(出典:古今和歌集(905‐914)秋上・二〇五)
    3. 求婚する。
      1. [初出の実例]「下(した)どひに 我が登布(トフ)妹を 下泣きに 我が泣く妻を」(出典:古事記(712)下・歌謡)
      2. 「よもすがらつまとふ鹿の鳴くなへにこはぎが原の露ぞこぼるる〈藤原俊忠〉」(出典:新古今和歌集(1205)秋下・四四六)
    4. 見舞う。機嫌や安否をたずねる。
      1. [初出の実例]「とはぬをもなどかととはでほどふるにいかばかりかは思ひ乱るる」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夕顔)
      2. 「とへかしなかたしく藤の衣手に涙のかかる秋のねざめを〈藤原通俊〉」(出典:新古今和歌集(1205)哀傷・八四六)
    5. 弔問する。とむらう。
      1. [初出の実例]「それうせたまひて、安祥寺にてみわざしけり〈略〉山のみなうつりてけふにあふ事は春の別れをとふとなるべし」(出典:伊勢物語(10C前)七七)
      2. 「亡き跡弔(と)はれ参らせつる」(出典:謡曲松風(1423頃))

問うの補助注記

「と」は上代では、[ 一 ][ 二 ]は甲類音(「万葉集」では乙類も)であるが、[ 二 ]は乙類音。本来同語であったものが意味分化したとする説もあるが、「質問する」意味の場合は甲類、「訪問する」意味の場合は乙類と、本来は意味の違いにより別語として区別されていたものが音と意義類似から混用されるようになったものか。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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