精選版 日本国語大辞典 「問丸」の意味・読み・例文・類語
とい‐まる とひ‥【問丸】
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中世に港湾や都市に居住して、年貢物などの物資の保管、輸送や取引の仲介にあたった業者。「丸」は屋号や船号につけるのと同様の語。「問」ともよび、また15世紀ごろからは「問屋(といや)」ともよばれた。荘園(しょうえん)領主が、湊(みなと)の有力名主(みょうしゅ)などに問給(といきゅう)・問田(といでん)を与えて、問職(といしき)(問丸職ともいう)に任命し、年貢物の輸送・保管・委託販売を任せたのが問丸の始まりで、平安末期には、すでに淀(よど)、桂(かつら)、木津(きづ)に存在した。14世紀につくられた『庭訓往来(ていきんおうらい)』には「湊々の問丸」とあり、港湾には不可欠の存在となっていた。1458年(長禄2)高野山領(こうやさんりょう)備後国(びんごのくに)大田荘(おおたのしょう)の年貢物販売を委託された堺(さかい)の問丸は、年貢物を量るための「斗升(はかります)」を支給され、販売代銭551貫500文のうちから6貫文の「御問(おんといりょう)」を請求している。このころになると問丸は、複数の荘園領主と契約を結ぶようになり、兵庫、堺、敦賀(つるが)、桑名(くわな)、博多(はかた)などの重要な湊には、特定の物資を大量に扱う問丸が出現し、卸売商の機能をもつようになった。15世紀に成立した辞典である『節用集(せつようしゅう)』には「問屋 商人宿」とあり、港湾の問丸が船商人への宿所提供なども行っていたことがわかる。また問丸は、水路関(すいろせき)の機能を代行していたとも考えられている。当時の問丸の屋号には、「木屋(きや)」「薬屋(くすりや)」など取扱い商品にちなんだものや、「備中屋(びっちゅうや)」「豊後屋(ぶんごや)」など取引産地名にちなんだものがあり、卸売商としての専門化が進んでおり、これが近世の問屋へと発展した。戦国期になると、堺の問丸のなかから倉庫業を専門とする者(納屋衆(なやしゅう))が出現し、都市自治や海外貿易の担い手となり、豪商へと成長する者も現れた。
[鈴木敦子]
『豊田武他編『流通史』(1969・山川出版社)』▽『豊田武著『中世の商人と交通』(1983・吉川弘文館)』▽『阿部猛著『中世日本荘園史の研究』(1966・新生社)』
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中世,港湾や都市に居住して,荘園年貢や商品の輸送・保管・卸売・為替業などに従事した総合的な運送業者。たんに問ともいうが,語源は未詳。平安末期に水上交通の労力奉仕者として淀川流域などに発生し,鎌倉時代に入ると特定の荘園領主と結びつき,年貢米輸送を担当する荘官としての問職が登場した。鎌倉末期以降は年貢米の輸送だけでなく,その徴収や委託販売にたずさわる者も現れた。商品流通の発達にともない年貢以外の商品も扱う総合的な運送業者に成長。中世後期になると塩・魚・紙・材木など商品ごとに専門化し,流通・卸売を独占した。一部はのちの問屋に発展した。
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…商業も発達し,荘園の中心地や交通の要地では定期市が開かれた。物資輸送も盛んになり,河川や港湾では問丸(といまる)が発達した。問丸は元来荘園領主のために年貢輸送,保管,委託販売にあたる荘官であったが,一般商品をもあつかうようになり,商人的性格を強めた。…
…これら港津の納所は単なる倉庫業にとどまらず,しだいに租税徴収の請負い,役所など納入先への代納,収納物の交易(きようやく)・売買などの業務をも行うようになり,商人的性格を強めていった。鎌倉・室町時代の港湾の問丸は,この納所の発展したものと考えられる。このような納所の源流は,奈良時代の調邸などという国ごとの調庸物収納のための倉庫にあるが,律令制の衰退とともに民部省など諸国からの納入物を取り扱う役所の下級役人が,納入物の収納を私的に請け負うようになったのが,港湾の納所のはじまりと考えられる。…
※「問丸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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