囂しい(読み)カシガマシイ

デジタル大辞泉 「囂しい」の意味・読み・例文・類語

かしがまし・い【×囂しい】

[形][文]かしがま・し[シク]中世までは「かしかまし」》
人声物音がうるさく感じられる。やかましい。騒々しい。
雨蛙の啼くのが前よりも繁く、―・く聞える」〈谷崎蓼喰ふ虫
口うるさい。
物言へば、ひがみたりと―・しう言へば、聞きにくし」〈落窪・四〉
[類語]かまびすしいうるさいやかましい騒騒しい騒がしいかしましいにぎやか口うるさい口やかましい小やかましい騒然喧騒喧喧囂囂けんけんごうごうけたたましい

かしまし・い【×囂しい/×姦しい/×喧しい】

[形][文]かしま・し[シク]大いに耳障りである。やかましい。かしがましい。「女三人寄れば―・い」
[派生]かしましさ[名]
[類語]うるさいやかましい騒騒しい騒がしいかまびすしいにぎやか口うるさい口やかましい小やかましい騒然喧騒喧喧囂囂けんけんごうごうけたたましい

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「囂しい」の意味・読み・例文・類語

かしがまし・い【囂・喧】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]かしがま〘 形容詞シク活用 〙 ( 古くは「かしかまし」 )
  2. 声や音が、耳ざわりなほど騒々しい。やかましい。かしましい。かまびすしい。
    1. [初出の実例]「秋の野になまめきたてる女郎花あなかしかまし花も一時〈遍昭〉」(出典:古今和歌集(905‐914)雑体・一〇一六)
    2. 「かしかましきまで追ひののしりて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)東屋)
  3. ちょっとしたことにもとやかく言う。口うるさい。
    1. [初出の実例]「わびしくさがなき朽嫗(くちをな)の、〈略〉かしかましきものなりければ」(出典平中物語(965頃)二七)
  4. いろいろ入りまじって煩わしい。
    1. [初出の実例]「言葉あらく景物おほく、かしかましきやうにて付けにくきは、下品の句也」(出典:連理秘抄(1349))

囂しいの語誌

( 1 )「かし」は「かしまし」の「かし」と通じ、「かま」は「かまし」「かまかまし」「かまびすし」の「かま」で、いずれもほぼ同意の語である。
( 2 )近世以後第三音節が濁音となったが、接尾語「がまし」との類推近接によるか。

囂しいの派生語

かしがまし‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

囂しいの派生語

かしがまし‐さ
  1. 〘 名詞 〙

かま‐びすし・い【囂・喧】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]かまびす〘 形容詞シク活用 〙 ( 古くはク活用。鎌倉初期ごろからシク活用があらわれたらしい。→かまびすし )
  2. (音や声が)やかましい。さわがしい。かしましい。かまみすし。
    1. [初出の実例]「波の音、常にかまびすしく、しほ風ことにはげし」(出典:方丈記(1212))
    2. 「先般来名古屋にて松平良七の松平慶承が公判を開かれしに、一般の評判囂すしく」(出典:東京日日新聞‐明治一六年(1883)八月三日)
  3. かまびすし(囂)

囂しいの語誌

ク活用の「かまびすし」は元来は漢文訓読語で、中古の和文では「かしがまし」が用いられた。中世以後も主に文語的文体の中で使われ、それに対応する口語は、中世では「かしまし」、近世では「やかまし」「さわがし」であった。

囂しいの派生語

かまびすし‐さ
  1. 〘 名詞 〙

かしまし・い【囂・姦・喧】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]かしま〘 形容詞シク活用 〙 やかましい。さわがしい。そうぞうしい。耳障りである。かしがましい。「女三人寄ればかしましい」
    1. [初出の実例]「あなかしまし。今は取り返すべき事にもあらず」(出典:落窪物語(10C後)三)
    2. 「ああかしましや、みみもとへよってかしましう仰られては、中々ふくのわたらせられぬ」(出典:虎明本狂言・鞍馬参(室町末‐近世初))

囂しいの語誌

挙例の「落窪‐三」が古いが、この箇所本文異同があり、九条家本などでは「かしかまし」となっている。同書には他に意味用法が同じ「あなかしかまし」が二例見え、「源氏」にも「かしかまし」や「みみかしかまし」の例はあるが「かしまし」はないところから、平安時代語とするには問題が残る。

囂しいの派生語

かしまし‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

囂しいの派生語

かしまし‐さ
  1. 〘 名詞 〙

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