因循姑息(読み)インジュンコソク

デジタル大辞泉 「因循姑息」の意味・読み・例文・類語

いんじゅん‐こそく【因循×姑息】

[名・形動]古い習慣に頼って、その場をしのごうとすること。また、そのさま。「因循姑息手段
[補説]明治文明開化期の流行語。おっぺけぺえ節にも「ちょんまげ頭を叩いて見れば、因循姑息の音がする」とうたわれた。

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精選版 日本国語大辞典 「因循姑息」の意味・読み・例文・類語

いんじゅん‐こそく【因循姑息】

  1. 〘 名詞 〙 古い習慣や習俗によりしたがって改めず、一時がれをすること。また、決断力に欠けていて、ぐずぐずすること。
    1. [初出の実例]「因循姑息 インシュンコソク」(出典:新令字解(1868)〈荻田嘯〉)

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四字熟語を知る辞典 「因循姑息」の解説

因循姑息

古いしきたりや今までのやりかたにこだわって改めようとせず、一時のがれに終始すること。また、消極的で決断力に欠けていて、ぐずぐずすること。

[使用例] 僕はあんな因循姑息なお嬢さんは嫌いです、あなた方はあの人を花やかだなんて云われるけれども、どこに花やかなところがあるんです、僕はこの縁談はキッパリお断りしますから今すぐ先方へその旨をお伝え下さい[谷崎潤一郎細雪|1943~48]

[使用例] 正吉青年は横浜の工場から帰国後、村の因循姑息な風習を見て慨歎し、何とか青年の力で村を潑剌たらしめたいと念じている一人だとの事だが、どこから手をつけて良いのか企画の端緒が見つからない[横光利一*夜の靴|1947]

[解説] 明治維新の頃、最も流行した新語は「文明開化」と「因循姑息」でした。「文明開化」は歴史で習いますが、「因循姑息」は知らない人も多いでしょう。
 当時の流行歌に「ジャンギリ頭(=短く刈った頭)をたたいて見れば、文明開化の音がする」というのがあります。その最初の文句は「はんぱつ頭(=ちょんまげのこと)をたたいて見れば、因循姑息の音がする」というのです。世の中が新しくなる「文明開化」に対し、「因循姑息」はその逆らしいことがわかります。
 「因循」の「因」も「循」も、昔からのものごとに従うこと。「因習」という熟語を思い出すとわかりやすいですね。
 「姑息」は、よく「卑怯」の意味で使われますが、本来は「その場しのぎ」のこと。「姑息な方法」といえば、「一時的な方法」ということです。
 「因循姑息」は、新時代になじめず、その場しのぎでごまかす様子を表します。そういうケースは、明治維新の頃だけでなく、現代でもしばしば目にします。

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