精選版 日本国語大辞典 「国家社会主義」の意味・読み・例文・類語
こっか‐しゃかいしゅぎ コクカシャクヮイシュギ【国家社会主義】
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国家の手によって社会主義(厳密には社会政策)の実現を図ろうとする思想ならびに運動を意味する。社会主義的色彩の濃い国家主義statismの一種。固有の意味での国家社会主義は、19世紀後半、ドイツのF・ラッサールやJ・K・ロードベルトゥスらによって唱導された。それは、資本主義の発展に伴って発生する労働者の貧困の救済や労働条件の改善を資本主義体制の枠内で達成しようとする考え方で、社会主義体制の実現を目ざすものではない。具体的な提言は、銀行、保険、鉄道、ガス、電気など重要産業の国営化、国家の援助を受ける労働者生産組合の組織化、普通選挙法の実施などがあげられる。政治的実践の実例としては、たとえばビスマルクが社会主義勢力に対抗する必要上、A・H・G・ワーグナーやG・S・シュモラーら講壇社会主義者の見解を取り入れて、傷病、養老保険などの社会政策の実施を図ったり、第一次世界大戦後の資本主義の危機に直面して、ナチズムやムッソリーニのファシズムが国家社会主義的な考えを標榜(ひょうぼう)したことがある。ただファシズムの場合、古典的な西欧の市民的自由や議会主義の政治原理に対する徹底した否定の姿勢があり、その点19世紀の国家社会主義との明確な違いがある。
日本では国家社会主義の鼻祖として、大正・昭和初期に活躍した高畠素之(たかばたけもとゆき)の名がよくあげられるが、国家社会主義思想の紹介としては、すでに早く明治30年代前半に行われている。1898年(明治31)、民友社系の思想家竹越三叉(さんさ)が主宰する雑誌『世界之日本』に「国家社会主義」なる一文があり、「生活の自由を要す」る「第三級の人民」(「下等の人民」)の登場に注目しつつ、国家社会主義とは「国家の権力によりて社会主義を実行する者」と定義して、「大資本家と小資本家間の競争、資本家と職工の衝突、地主と小作人との抗争を政府の権力によりて調停し、社会の圧力が弱者を圧殺するを救はんとするもの也(なり)」と述べている。そして政治的改革を中心課題とする平民主義の勢力によっては解決しえない大資本の圧力、「金権政治、富豪政治」の弊害の除去を国家社会主義に期待している。また同じ民友社の歴史家山路愛山(やまじあいざん)らの国家社会党の結成(1905)にもその先駆をみることができる。
しかし、国家社会主義が一つの流行現象を形づくったのは昭和初期のことである。当時、社会主義から国家主義への転向現象が多く発生したことも手伝って、社会民衆党の赤松克麿(かつまろ)や全国労農大衆党の松谷(まつたに)与二郎らがそれぞれ脱党して、日本国家社会党を結成(1932)し国家社会主義を主張した。なお、国家社会主義の立場に共鳴する人々にはほかに、石川準十郎、近藤栄蔵、林癸未夫(きみお)らがある。そして高畠から北一輝(きたいっき)の『日本改造法案大綱』に至る国家社会主義理論は、純正日本主義(皇道主義)と並んで戦前の日本ファシズム運動の理論的基礎として機能したのである。このように、昭和初期のわが国において社会主義陣営からの転向組が中心になって国家社会主義が唱えられたのであるが、政治課題の実現に向けて、大規模に民衆を組織し動員する勢力にはならなかった。
[西田 毅]
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国家の手によって社会体制を改変し,あるいは社会問題を解決しようとする思想と運動。主として19世紀ドイツで展開された。ロートベルトゥスやラサール,講壇社会主義者の見解,ビスマルクの社会政策的傾向,またキリスト教社会党やナウマンの政策も国家社会主義とみなされる。ナチズムをさして使われることもある。
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大正中期以降におこり,日本の国家と社会とを改造して全体主義的に平等な国民生活の実現を意図したもので,国際的勢力拡充を前提としていた。1919年(大正8)大川周明・満川亀太郎らの設立した猶存(ゆうぞん)社を源流的なものとして革新右翼とよばれ,満州事変の勃発後に活発になり,内田良平の大日本生産党,大川周明会頭の神武(じんぶ)会などが有力であった。また無産政党の内部からもファシズム運動に影響されて国家社会主義が生じた。
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…明治以来の日本の国家主義は,当初の独立型から徐々に侵略的・攻撃的性格を帯び,最後には極端な形態である超国家主義に陥ったといわれている。 第3に,国家主義とは国家社会主義を意味する。すなわち,社会主義でありながらも資本主義そのものを打倒するのでなく,国家が積極的に社会主義的諸政策(国有化や公平な分配など)を行うことを主張する立場である。…
…改革された在郷軍人会を実行主体とし,天皇大権を発動してクーデタを行うというこの〈改造法案〉は,西田税を媒介にして主として陸軍青年将校の支持を得て,二・二六事件を招来したことは有名である。しかし北一輝がここで描く国家社会主義構想は,万世一系の天皇を現人神として絶対視したいわゆる超国家主義とは,大きく相違するものであった。第1に,ここでの天皇は,明治維新によって〈現代民主国ノ総代表トシテ国家ヲ代表スル〉に至った天皇であった。…
※「国家社会主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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