精選版 日本国語大辞典 「国民主権」の意味・読み・例文・類語
こくみん‐しゅけん【国民主権】
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主権すなわち国の最高意志は国民によって形成される、また国の最終意志を決定できるのは国民である、という民主主義的な政治・法思想。主権は君主にあるという君主主権論や、君主の権力は神から授かったとする王権神授説(神権説)に対する語。主権在民ともいう。日本では、大日本帝国憲法時代には、天皇は神聖不可侵で、統治権を総攬(そうらん)するという考え方がとられていたが、新しい日本国憲法では、主権は国民にあることが明記され、日本における民主政治の基礎が確立された。
国民主権という考え方は、17世紀中葉以降の二つのイギリス市民革命(ピューリタン革命と名誉革命)期に、ホッブズやロックによってまずその論理が形成された。古来、主権をだれがもつかによって、君主政、貴族政、民主政の3種に分類する方法がとられてきた。ついで、16世紀のフランスの政治思想家ボーダンは、立法権をもつ者が主権者であるとして、主権の内容をより明確にした。近代的な主権理論を構成したのはホッブズである。彼は悲惨なピューリタン革命を目の前にして、人間はその生命の安全(自己保存)を図るために、契約を結び政治社会を形成することに同意せよと述べ、さらに政治社会を形成した全成員を代表する者を主権者とよび、この主権者が制定する法律に従って平和に生きることを人々に勧めた。このことは、権力の基礎は人々の同意や契約によるという考え方(社会契約)を提示したものであって、ホッブズによって、国民主権的な考え方が近代において最初に登場したのをみる。続いて、ロックは、人々は所有権(生命・自由・財産)を保護するために契約を結び政治社会を形成したと述べ、この政治社会をうまく運営するためには、よき立法部が確立されなければならないとした。そして、この立法部こそ当時のイギリス議会にほかならず、こうしてロックは、イギリス議会は全国民の同意のもとに最高権力をもつという論理を巧みに弁証したのである。これに対し、ロックから70年ほどのちに『社会契約論』(1762)を書いたフランスの政治思想家ルソーは、イギリスの誇る議会政治を批判し、「一般意志」つまり「全人民の意志」は、いかなるものによっても代行されえないこと、あるいは、イギリス人は選挙のときにだけ自由であって、選挙が終わればふたたび奴隷状態に戻る、とも述べた。このことは、封建的・特権的なフランスの身分制議会(三部会)はもとより、当時、制限選挙制のもとにあったイギリス議会をも批判したのであって、「一般意志」の実現を保障するためには、結局は、全国民が政治に参加しなければならない、という人民主権論を唱えたものと考えられる。
ここにおいて、市民階級による国民主権の主張にみられる擬制概念は批判にさらされ、以後、各国において、真の国民主権とは、成年男子に普通選挙権を与えることとされ、さらには、成年男女による男女平等普通選挙権が実施されることによって、国民主権論は、名実ともに人民主権論へと発展したのである。したがって、現在では、国民主権論と人民主権論はほぼ同じ意味に用いられている。第二次世界大戦後、現代資本主義国家の多くは、普通選挙制を実施し民主政治が実現されたが、依然としてさまざまな社会的矛盾を抱えている。このため、社会主義国家の側からは、労働者・農民を中心とする権力を設立し、真の国民主権を実現せよ、という批判がなされ、それに呼応して、資本主義国家における社会主義諸政党は、議会を全国民的な利益を代表する機関に構造改革し、真に国民主権的な政治を実現しようという努力を続けている。
[田中 浩]
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…しかし,身分制議会は,一般意思を最終的に決定できる地位にはなく,主権者たる国王の諮問機関にすぎなかったので,近代的意味での国民代表府ではなかった。
[国民主権から人民主権へ]
議会が国民代表府として一般意思を決定するという考え方は,近代市民革命のなかで憲法に取り入れられた。そこでは,同時に,議員は全国民の代表であって特定の地域や身分などの代表ではない。…
※「国民主権」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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