精選版 日本国語大辞典 「国粋主義」の意味・読み・例文・類語
こくすい‐しゅぎ【国粋主義】
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広義には一国家ないし国民の人種(民族)的文化的特性を他国のそれと区別して強調する考え方をいい、それはまた、民族の歴史的栄光や伝統的価値の強調と結合して主張されることが多い。民族主義、国家主義、国民主義などと同じくナショナリズムnationalismないしナショナリティnationalityの訳語の一つとして理解されている。
近代日本における国粋主義の源流は、19世紀後半の幕末期に外圧に直面して台頭してきた尊王攘夷(じょうい)論や西洋文明の排除にみられる。こうした土着主義的な固有文化の価値の自覚は、やがて明治時代に入って、明治政府の推進する条約改正交渉や「鹿鳴館(ろくめいかん)」に象徴される皮相的な欧化政策への反発となって現れた。
すなわち、明治10年代後半から20年代にかけて結成された各種の国粋派グループや、思想集団政教社のメンバーたちによって唱導された「国粋保存旨義(しぎ)(主義)」運動がそれである。ところが明治中期の国粋主義は後年の排外的な国家主義(ナショナリズム)とは異なり、欧化それ自体に反対を示すものではなかった。志賀重昂(しがしげたか)のことばを用いれば、「徹頭徹尾日本固有の旧分子を保存し旧原素を維持せんと欲するものに非(あら)ず、只泰西(ただたいせい)の開化を輸入し来るも、日本国粋なる胃官を以(もっ)て之(これ)を咀嚼(そしゃく)し之を消化し、日本なる身体に同化せしめんとする者也(なり)」(「『日本人』が懐抱(かいほう)する処(ところ)の旨義を告白す」)という、わが国の文明を発達させるための主体的な西洋文明の選択的摂取にその特質があった。しかし、このようないわば開かれた視座をもつ健康なナショナリズムとしての国粋主義は長くは続かず、やがて、高山樗牛(ちょぎゅう)や木村鷹太郎(たかたろう)らによって提唱された日本主義、大正中期の右翼的な国家主義団体の叢生(そうせい)(猶存(ゆうぞん)社、行地(こうち)社、大日本国粋会など)そして昭和初期の満州事変から日中戦争にかけて、青年将校らと協働したファッショ的政治運動へと進展してゆく。とりわけ太平洋戦争の時期にかけては、国粋主義は偏狭な国家主義、排外主義のイデオロギー(皇国史観や日本精神論)として猛威を振るった。このような昭和初期の歴史的事情から、往々にして国粋主義即ファシズムないし超国家主義という一元的な理解がなされやすいが、それはかならずしも正しい把握の仕方とはいえないであろう。
[西田 毅]
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明治中期,憲法・民法や改正通商航海条約などが制定・実施される時期,伝統文化否定の西洋化政策を批判して,「国粋保存」すなわち西洋文化の批判的摂取を主張した思想運動で,1888年(明治21)創立の政教社に代表される。政教社の指導者三宅雪嶺(せつれい)・志賀重昂(しげたか)と,新聞「日本」の主宰者陸羯南(くがかつなん)が指導的理論家。雪嶺はのちの大正デモクラシー期に長谷川如是閑(にょぜかん)・丸山幹治・鳥居素川(そせん)らとともに指導者として活動するように,この時期の国粋主義は大正末~昭和期の排外的国家主義とは異なる。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…明治初年の啓蒙思想と文明開化はその最初の高まりであるが,そこでは独立の危機が深刻に自覚されればされるほど,それだけ急激に欧化が推進された。1880年代半ばになると,この急激な欧化に対する反動として国粋主義が興隆し,天皇の神聖性や家族的・共同体的秩序など伝統の保守を強調するが,〈採長補短〉という言葉が示すように,それも西洋の〈長所〉の導入には必ずしも反対でなかった。それ以後,欧化主義と国粋主義とは対立しつつ併存し,それぞれのしかたで近代日本の国家体制を支える。…
… この困難を補う点で重要な役割を果たしたのが民族主義であり,民族国家,国民国家が歴史の流れとなるなかで国家主義は民族主義との融合をとげ,その理念を補完することになった。実際,日本では従来,国家と民族との重なりがほぼ自明視されてきたこともあって,国家主義,民族主義,国民主義,国粋主義といった言葉はほとんど同義に用いられている。したがってこれらの語は国家主義の第2の内容をなすといってよい。…
※「国粋主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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