国語(読み)コクゴ

デジタル大辞泉 「国語」の意味・読み・例文・類語

こく‐ご【国語】

一国の主体をなす民族が、共有し、広く使用している言語。その国の公用語共通語
日本の言語。日本語
国語科」の略。「国語の先生」
外来語漢語に対して、日本固有の言葉。和語大和やまと言葉。
[補説]書名別項。→国語
[類語]母語母国語邦語

こくご【国語】[書名]

中国の歴史書。21巻。左丘明の著といわれるが未詳。春秋時代を中心とするていの各国別の記録。「春秋左氏伝」と並び称された。春秋外伝

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精選版 日本国語大辞典 「国語」の意味・読み・例文・類語

こく‐ご【国語】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. ある一国における共通語または公用語。その国民の主流をなす民族が歴史的に用いてきた言語で、方言を含めてもいう。
      1. [初出の実例]「凡有物必有羅甸与国語、今所直訳、悉用和蘭国語也」(出典:解体新書(1774)一)
    2. 特に、日本の言語。日本語。みくにことば。邦語。
      1. [初出の実例]「日本にて文尾に必あなかしこと書き〈略〉あなとは国語にて発語の音、かしことはおそるることなり」(出典:随筆・秉燭譚(1729)二)
    3. 借用によらない、日本固有の語。漢語、外来語に対していう。和語。やまとことば。
      1. [初出の実例]「国語(コクゴ)で言へばつひわかる事を、漢語でむづかしくいふて」(出典:寄合ばなし(1874)〈榊原伊祐〉初)
    4. 学校教育の教科の一つ。日本の言語および言語文化を取り扱う。「漢文」と対置または併称され、またこれを内容に含む場合がある。〔文部省布達番外‐明治五年(1872)九月八日〕
  2. [ 2 ] 中国の史書。二一巻。魯の太史左丘明の著と伝えるが未詳。春秋時代の八か国の歴史を国別に記したもので、周語三巻、魯語二巻、斉語一巻、晉語九巻、鄭語一巻、楚語二巻、呉語一巻、越語二巻から成る。呉の韋昭(いしょう)の注がある。盲史。外伝。春秋外伝。左氏外伝。

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改訂新版 世界大百科事典 「国語」の意味・わかりやすい解説

国語 (こくご)

一般には〈日本語〉の意味で使われているが,〈何ヵ国語も話せる〉というような場合は,他と異なる記号の体系としての言語をさす。しかしより厳密にそれぞれの国の自国語という意味では,ある国家の公的な言語をさし,〈国家語〉あるいは,〈公用語〉ともいう。アイヌ語はこの意味で国語ではない。国家語をもたない国家はないが,ある言語が,2ヵ国以上の国家語となることはありうる。たとえば,英語はイギリス連邦諸国,アメリカ合衆国の国家語である。また逆に,1国家が数個の公用語をもつ場合がある。たとえば,スイスでは公用語としてドイツ語,フランス語およびイタリア語,レト・ロマン語の四つの言語がある。住民には一つのスイスの意識が強いにもかかわらず四つの公用語が存在するのは,各地方ごとに住民が民族的に相違し,各地方にはそれぞれ支配的な言語が一つしかないためと,この4言語が文化的水準を同じくするためとによる。フィンランドには公認の言語が二つあった。フィンランド語は農村住民が主として使い,スウェーデン語は昔の官庁語で,都市ブルジョアジーに使われた。しかし,フィンランド語を話す中産階級が進出し,その教養層が多数都市に集まり,現在ではフィンランド語が多数派となり唯一の国家語としての地位を固めつつある。ベルギーでは,その国家建設時の支配者たるブルジョアジーがフランス語を国家語とした。しかし農民および労働者が国政に参与するにつれてオランダ語フラマン語)をもフランス語と同等な国家語とすることを要求しそれが認められた結果,こんにち二つの同権の公用語をもっている。北部のオランダ語地区と南部のフランス語地区との言語境界線はスイスと同様,はっきりしている。
言語政策 →母語
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国語 (こくご)
Guó yǔ

中国,春秋時代の歴史を国別にまとめた書。21巻。著者は不明。孔子の門人の左丘明の作とする説があり,《左氏伝》を〈春秋内伝〉と言うのに対して,〈春秋外伝〉と称される。春秋時代には斉・晋・楚・呉・越がかわるがわる中国の覇権をにぎり,歴史はその興亡を主軸として展開された。本書はこの5国,いわゆる春秋の五覇に,旧大国である周・魯・鄭の3国を加えて構成されている。記載する年代は,周の穆(ぼく)王35年(前967)から貞定王16年(前453)までで,《春秋》が記載する年代(前722-前481)よりはるかに長い。資料のあつかいかたや記述に《左氏伝》と矛盾する部分もあり,また史話の構成や文章の技巧の点で《左氏伝》に劣るが,《左氏伝》に欠落した史実も少なくなく,歴史文献としては多くの価値をもっている。なお,本書を〈盲史〉と呼ぶのは,《史記》において,太史公が〈左丘,明を失いて厥(そ)れ国語あり〉と述べているのによる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「国語」の意味・わかりやすい解説

国語
こくご

次のようないろいろの意味で使われる。 (1) 1つの独立国家において公に認められた言語 (→標準語 , 共通語 ) 。国家語ともいう。フランスの「国語」はフランス語である。アイヌ語のような民族語は,この意味では「国語」ではない。また,スイスのように,ドイツ語,フランス語,イタリア語,ロマンシュ語の4つの国語をもっている国もある。また,日本,中国,韓国などのように漢字を用いる国では,他国の言語よりも特に重んじる意味で,尊厳の気持を加えて用いられることがある。 (3) を参照。 (2) 1つの独立国家における諸民族の言語の総体で,諸方言も含む。プロバンス方言もフランスの「国語」に属する。なお,日本では古く「国語」が「お国言葉」すなわち方言の意味で用いられたこともある。 (3) 日本語のこと。これが日本における通常の用法であるが,「国語」には日本だけのものといった排外的 (閉鎖的) 意味が伴いがちなので,より客観的に世界の言語の一つとして「日本語」と呼ぶ立場もある。 (4) 漢語外来語に対して,本来の日本語の意味。「和語」に同じ。 (5) 俗に教科の「国語科」の意。

国語
こくご
Guo-yu

中国,古代の歴史書。『春秋外伝』ともいう。 21巻。国別の春秋時代史。「国語」とは「各国の歴史物語」の意。『周語』 (3巻) ,『魯語』 (2巻) ,『斉語』 (1巻) ,『晋語』 (9巻) ,『鄭語』 (1巻) ,『楚語』 (2巻) ,『呉語』 (1巻) ,『越語』 (2巻) に分れ,それぞれが史談集という形で記されている。各国史ではあるが同時代の主要国はすべて含まれ,春秋時代全史でもある。古くから『春秋左氏伝』同様,魯の左丘明の著といわれるが,1人ではなく各国の史官の記録もしくは別々の著述を漢代頃編集したと思われる。三国呉の韋昭 (いしょう) の注が多く用いられる。

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百科事典マイペディア 「国語」の意味・わかりやすい解説

国語【こくご】

一般には日本語の意味で使われているが,それぞれの国家の自国語という意味では,当の国家の公的な言語を指し,国家語あるいは公用語ともいう。日本語を指す〈国語〉という言葉は明治の初期に生まれ,1894年上田万年が講演の題名〈国語と国家と〉に用い,〈国体の標識〉としての〈国語〉と表現してから定着した。日本(語)特有の表現であったが,中国,韓国,台湾などの漢字使用国でも用いられるようになった。これに近いヨーロッパ語は,フランス革命で生まれた〈langue nationale〉である。→日本語
→関連項目インドネシア語共通語言語政策標準語

国語(書名)【こくご】

中国,古代の史書。21巻。左丘明の著との説があるが不明。春秋時代(春秋戦国時代)の周,魯,斉,晋,鄭,楚,呉,越の8国の事跡を国別に記録したもの。《左氏伝》とともに春秋時代の史書として重要。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「国語」の意味・わかりやすい解説

国語(言語学)
こくご

一国の言語の意であるが、実際には日本、中国、韓国などに限られ、それぞれ日本語、中国語、韓国語などをさしており、主として国家の公用語として用いられる場合を意味している。日本語を国語と称した古い例は、すでに江戸時代の末ごろからみえるが、明治以後には初等教育の教科の名称としても広く用いられるようになった。言語の名称としての国語は、内容上からは日本語と同義であるが、純粋に言語学的立場からは、国家という政治的要素を排除する意味で「日本語」、その研究は「国語学」でなく「日本語学」とすべきだとする意見もある。言語政策の面からは「国語問題」「国語政策」などというのが普通である。

[築島 裕]


国語(中国古代の歴史書)
こくご

中国古代の歴史書。春秋時代の左丘明(さきゅうめい)の著書と伝えられるが、戦国時代中期から後期の儒家の一派が記したものであるとされる。21巻。西周の中期、ほぼ紀元前10世紀の穆(ぼく)王の時代から晋(しん)が3国に分裂(前453)するまでのことを記し、『春秋左氏伝』と重なるところから『左氏外伝』とも称される。しかし両書の間には差異も多く、『春秋左氏伝』を補う重要な史料となっている。構成は列国史の形をとり、晋国についての叙述(晋語)がもっとも詳しく、斉(せい)・鄭(てい)・呉(ご)・越(えつ)語がこれに次ぎ、秦(しん)については記載がない。三国呉の韋昭(いしょう)(204―237)の注本(国語韋氏解)が基本的テキストであり、その和刻本(『国語定本』)もある。近年の注釈書として徐元誥(じょげんこう)『国語集解(しっかい)』(1930刊)があり、また鈴木隆一編『国語索引』(1934初版)は労作である。

[尾形 勇]

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旺文社世界史事典 三訂版 「国語」の解説

国語
こくご

春秋時代における大国の国別歴史書
『春秋左氏伝』を『春秋内伝』というのに対し,『春秋外伝』ともいう。21巻よりなる。孔子の弟子魯 (ろ) 国の左丘明の撰といわれる。周・魯・斉・晋・鄭 (てい) ・楚・呉・越の前10世紀から前5世紀半ばごろまでの事跡を国別に記す。記事は各国史官の記録を収録したもので,記述に統一を欠く点もあるが,この時代の各国興亡の全容を知る上では貴重な書。

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