日本大百科全書(ニッポニカ) 「国際海上物品運送法」の意味・わかりやすい解説
国際海上物品運送法
こくさいかいじょうぶっぴんうんそうほう
1924年の船荷証券統一条約(ヘーグ・ルール)を批准し、これを国内法化するために、1957年(昭和32)に制定された法律。昭和32年法律第172号。船舶による物品運送で、船積港または陸揚港が本邦外にある、いわゆる国際海上物品運送に対して適用される。海上物品運送人の免責約款を制限して、その責任を強行法的に確立する。それとともに、海上企業を保護奨励するために、運送人の使用する者(船長、海員等)の航海上の過失や船舶における火災につき、運送人の責任を特約によることなく当然に免除する。運送人と荷主の利益の調整が図られている。本法の適用がある海上物品運送契約については、本法でとくに適用を認めている場合を除き、商法の適用はない。その後、海運界の状況の変化と社会経済の実態に即し、ヘーグ・ルールは、1968年の改正議定書(ウィスビー・ルール)および1979年の改正議定書(SDR議定書)により改正された(ヘーグ・ウィスビー・ルール)。1992年(平成4)に日本はこれを批准するとともに、国際海上物品運送法を改正した。その改正のおもな内容は、船荷証券の記載の効力の強化(証券責任の明確化)、損害賠償額の定型化、運送人の責任限度額の引き上げ、コンテナ運送の場合における責任限度額の算定方法の明確化、運送人等の不法行為責任の減免等である。2018年(平成30)の商法改正により、海上物品運送に関する規定について、国際海上物品運送法を参考にした見直しが行われた。それに伴って、国際海上物品運送法の重複する諸規定(船荷証券に関する規定等)が削除された(実質的な改正事項は、運送人の責任限度額の見直し等にとどまる)。
[戸田修三・平泉貴士 2020年9月17日]
『戸田修三・中村眞澄編『注解 国際海上物品運送法』(1997・青林書院)』▽『菊池洋一著『改正国際海上物品運送法』(1992・商事法務)』▽『松井信憲・大野晃宏編著『一問一答 平成30年商法改正』(2018・商事法務)』▽『箱井崇史著『基本講義 現代海商法』第3版(2018・成文堂)』