翻訳|soil science
土壌を研究する学問には、生産性の追求を基本命題とする農学の立場にたつ農林土壌学、土木工学の面から力学的究明を中心とする土壌工学(または土質力学)の分野もあるが、狭義の土壌学は地球科学の観点からその生成過程を論ずる研究分野をいい、これをペドロジーpedologyとよぶ。土壌を地球の岩石圏の表面における自然生成物としてとらえ、物質としての理化学的および生物学的性質を調べるとともに、その生成環境を気候、植生、土地条件(岩石母材や地表の起伏、地下水など)の地域的特質と相違に基づいて考察する学問がこれである。したがってこの土壌学原理は、農林土壌学や土壌工学の基礎をなすものといえる。
土壌学(ペドロジー)の研究史は比較的短く、19世紀後半に始まった。帝政ロシア時代の研究者ドクチャーエフが土壌の理化学性に基づく土壌型の分類を行い、ヨーロッパにおける土壌の分布が気候帯の配列に対応することを明らかにした。これが土壌の成因論的研究(ペドロジー)の始まりで、このときに近代土壌学が成立したといわれている。以来、ヨーロッパ諸国とアメリカ合衆国でペドロジーの研究が進み、世界における土壌型の分類論の展開や詳細な土壌図の作成がみられた。地理学的視野のもとにいわゆる土壌地理学の研究もなされてくる。土壌学の発展に寄与した著名な学者には、ロシアのグリンカ、アメリカのマーブットC. F. MarbutやヨッフェJ. S. Joffeなどがあり、ゲラシモフはソ連の地理学会会長も務めた土壌研究の第一人者である。
なお学際的研究として、第四紀学があるが、地質、地形、気候、生物、考古学の各分野の接点にある土壌の研究はとくに第四紀研究のなかで重要である。また土壌汚染の原因や実態を公害防止の観点から究明することも、最近の土壌学の課題の一つに加えられる。
[浅海重夫・渡邊眞紀子]
『河田弘著『森林土壌学概論』(1989・博友社)』▽『松井健・岡崎正規編著『環境土壌学――人間の環境としての土壌学』(1993・朝倉書店)』▽『山根一郎著『土壌学の基礎と応用』改訂新版(1993・農山漁村文化協会)』▽『久馬一剛編『最新土壌学』(1997・朝倉書店)』▽『犬伏和之・安西徹郎編、梅宮善章・後藤逸男・妹尾啓史・筒木潔・松中照夫著『土壌学概論』(2001・朝倉書店)』▽『久馬一剛著『熱帯土壌学』(2001・名古屋大学出版会)』▽『松中照夫著『土壌学の基礎――生成・機能・肥沃度・環境』(2003・農山漁村文化協会)』
土壌を研究する自然科学の一分野で,農林業的立場からの植物培地としての見方が強く打ち出されているエダフォロジーedaphology(農業あるいは応用土壌学)と,地表面をおおっている独立の自然物質としての生成過程から土壌を把握してゆく立場のペドロジーpedology(土壌生成・分類学)に分けられる。エダフォロジーの立場からは,農耕地,草地,林地などの土壌について,植物の土壌化学性,土壌物理性,土壌生物性への依存関係の解明,植物生産のための土壌の管理,改良の方法の考究などが中心の課題となる。ペドロジーの立場からは,土壌の生成に関与する諸因子,生成過程における物理・化学・生物・鉱物学的変化,土壌の分類と分布,土壌調査法,土壌図の作成などがおもな研究対象とされている。また,研究の手段と対象から,土壌化学,土壌物理学,土壌地理学,土壌微生物学,土壌動物学,土壌生態学などに分類されることもある。
執筆者:高井 康雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新