民法で定められた借地権の一つ。他人の土地を借りて建物などの工作物や木々を所有するために、その土地を使用する権利。民法上、土地の貸借権は20年が上限だが、地上権には上限がない。地下や空間にも設定が可能。地主の承諾がなくても登記や譲渡、転貸ができるため、借り主には貸借権よりも一段強い権利がある。
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工作物(建物,地下鉄,高架鉄道など)または竹木を所有するために他人の土地を使用する物権(民法265条~269条ノ2)。原則として地主との契約によって設定されるが,古くからの借地関係で性質の不明なものが地上権と推定される場合があり(〈地上権に関する法律〉。1900年公布),また法律上当然に地上権の設定ありとみなされる場合もある(法定地上権,388条)。民法典の起草者は,工作物所有のための土地貸借は原則として地上権になると考えていたようであるが,現実には,地主は賃借権より強力な利用権である地上権の設定を好まず,地主の経済的・社会的優位という力関係のもとで,借地関係の多くは賃貸借が使われた。したがって,宅地の借地権を俗に地上権とよぶことがあるが,法律上真正の地上権はまれにしか存在しない。その後,建物保護法,借地法(借地)により賃借権の強化が図られたが,その際,地上権も一括してこれらの法律の対象とされた。このため,地上権についても賃借権と同様の特別の保護が与えられている。すなわち,たとえ地上権の登記がなくても,地上に所有する建物の登記のみで地上権を第三者に対抗できるし(建物保護法1条,借地借家法10条1項),存続期間についても,地主との契約条項にかかわらず法律上長期の存続が保障されている(借地借家法3条)などである。これらの法律により,建物所有を目的とする地上権と土地賃借権との差は小さくなっており,地上権の場合にはそれが物権であるため地主の承諾なしに自由に譲渡・転貸をなしうるなどの点に違いが見られるにとどまる。なお,1966年に,工作物の所有を目的とする地上権は,地下または空中の一部分にも設定することができるとする条文が追加された(269条ノ2)。その目的は,土地の立体的利用を容易にすることにあり,これにより,地下鉄,地下街,高架道路などのために,同じ土地の地下・空間に複数の地上権を設定することが可能となった。この場合の地上権を,地下権,空中権,また両者を総称して区分地上権ともいう。
執筆者:内田 貴
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他人の土地に建物・橋などの工作物または竹木を所有するため、その土地を使用する物権(民法265条~269条)。建物を建てるため、あるいは植林のために利用されることが多い。古くから他人の土地を使用している関係において使用者の権利が地上権であると推定される推定地上権(地上権ニ関スル法律1条)があり、今日でも法律上当然に地上権が認められる法定地上権(民法388条など)があるが、普通は当事者間の契約(設定行為)により地上権が設定される。しかし、地上権による土地使用はまれで、ほとんどが賃貸借契約によっている。地上権者の権利のほうが賃借権者の権利よりも強いので、地主が地上権の設定をいやがることにその原因がある。
今日、他人の土地を使用する関係において俗に地上権とよばれているものがあるが、たいていは賃借権であって、民法に規定されている地上権ではない。しかし、民法制定後の借地人保護のための特別立法では、建物を建てるために他人の土地を使用する権利につき、それが地上権であるか賃借権であるかに従って異なった扱いがなされていたわけではない(建物保護ニ関スル法律、借地法。この二つの法律は1991年に制定、1992年施行された借地借家法により廃止)。借地借家法では、建物を所有することを目的として他人の土地を使用する権利は借地権という名でよばれ、地上権と賃借権とが同じに扱われている。したがって、建物の所有を目的とした他人の土地の使用に限定していえば、今日では、地上権と賃借権との間に大きな差異はあまりなく、おもな相違は、賃借権者が地主に無断で賃借権の譲渡や転貸(また貸し)ができないのに反し、地上権者はそれができるという点にある。
[高橋康之・野澤正充]
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…学説は,日本の場合も,ドイツ民法やスイス民法と同様に解釈すべきであるものが多い。しかし他人の土地の上下を利用するについては,土地所有権の効力が及ぶとされるので,たとえば地下鉄を地下深く通すときでも,その土地を任意買収するか,土地収用法に基づき強制収用ないし強制使用をするか,または,任意に地下目的の地上権(これを地中権ともいう。民法269条ノ2)の設定契約を結ぶかするほかはない。…
※「地上権」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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