地球を対象とする複合科学としての自然科学を地球科学という。地質学、鉱物学、古生物学、自然地理学、地球物理学、地球化学がそのおもな分科学である。海洋学、火山学なども地球科学に属する。これらの多くは地球よりも小さい研究対象をもつ。これに対して地球物理学、地球化学は物理学的ないし化学的研究手法で特徴づけられる。しかし地球物理学のなかにも、地震学、気象学のように対象によって分けられた分野がある。また、火山学は地球物理学、地球化学、地質学などの協同によって成り立ちうるし、海洋学は、これらの分科学はいうまでもなく、普通は地球科学に属するとされない生物学の協力も必要である。この場合、生物学も地球科学の分科学とみなしうる。地球科学は異なる対象と手法とに基づく分科学の寄せ集めとしての複合科学である。地質学、鉱物学その他は本質的に、多少の差はあれ、物理学的、化学的手法を必要とする。地質学のうちの岩石学は固体地球化学であるといいうる。
このように、地球科学の各分科学の内容はお互いに複雑に絡み合っているので、寄せ集めにとどまることはないし、地球科学を統一的体系として提示することも容易ではない。地質学、海洋学などの異なる研究対象をもつ分野の研究を総合して、より大きい地球を対象とする統一的な科学体系を組み立てうる。地学とよばれているもののなかには、そのような観点にたったものがある。地球物理学はその手法に他の分科学との違いがあるとされており、たとえば地質学と比べると、主たる研究対象領域も異なる。
地質学は、鉱物、岩石、地層がもつ性質や生成原因を明らかにし、それを基にして地質現象を明らかにしようとするので、研究の過程を通じて、直接接しうる物質から離れて考察を進めることはできない。研究の主体はおのずから地殻、とくにその上層部となる。そこには過去の地球に関する膨大なデータが残されており、地史学的考察もなされる。これに対して地球物理学は、地震波、地磁気といった現在の現象についての観測データの解析を主たる研究手段とする。地質学が扱う対象に迫りえない場合がある一方、地質学が及びえないところ、たとえば地球内部をも対象とすることができ、地球的スケールをそのままに取り扱うことができる。手法ではなくて、時間、空間を異にする対象についての研究の総合に、地球科学としての統一的体系がみいだされるであろう。
[木村敏雄]
地球を対象とする自然科学の総称.従来,地球を対象とする学問は,それに関連する個々の学問の発展過程に規定され,それぞれの得意とする研究方法,手段を駆使してばらばらに発展してきた.たとえば,物理学部門から地球物理学,地震学,火山学,海洋学,陸水学など,地学部門から地質学,岩石学,鉱物学,地理学など,化学部門から無機化学,分析化学,地球化学など,第二次世界大戦後の自然科学,とりわけ境界領域についての学問の進歩は,従来の学問体系の枠を破って発展し,これまでの枠を取り払いつつある.そのような気運のなかで,おのおのの専門の主体性を守り,それら個々の学問を包含する,より高い次元での,総合的な地球に関する学問体系として地球科学の確立が求められている.
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… 20世紀に入ると,物理学的な研究手段によって,地殻,地球に関する物理量を測定し研究する地球物理学と,地殻中の化学元素の分布の研究からはじまる地球化学とが発達してきた。地質学はこれらに対して,地球,地殻の階層性と歴史性に基礎をおくという特徴を保持しているが,現在では,これら諸科学分野が総合され,地球科学とよばれる傾向が強まっている。さらに月や惑星の探査がすすむ中で,それらの表面の構成物質を地質学的な見方で研究する月の地質学や宇宙地質学も進みつつある。…
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