日本大百科全書(ニッポニカ) 「地磁気異常」の意味・わかりやすい解説
地磁気異常
ちじきいじょう
magnetic anomaly
地磁気の実測値と地球全体の磁場を表現するモデルによる予測値との差をいう。地球の磁場は、大勢としては双極子磁場と14次程度までの非双極子磁場を加え合わせたモデルでよく表現される。しかし、このモデルに含まれる磁場はもっとも短いものでも波長が約3000キロメートルもあり、それより短い波長の変化は含まれていない。たとえば火山はその山体(大きさが直径100キロメートル以下)の磁化によって周囲に磁場をつくるが、この磁場の波長は100キロメートル以下であるため全球のモデルでは表現されていない。実測で得られた磁場強度から、地球磁場のモデルによって推定された値を引いたものを地磁気異常または磁気異常という。磁気異常の分布を解析すると、その異常の原因となっている岩体の形状、深度、磁化強度などを求めることができる。海上ではしばしば縞(しま)状の磁気異常が観測されるが、これは、海底地殻が海嶺(かいれい)で生まれたときの地球磁場の正逆の磁性に対応しているためであり、バインFrederick J. Vine(1939―1988)とマシューズDrummond H. Matthews(1931―1997)によって明らかにされた。これにより地磁気異常を用いて海底地殻の年齢を推定する方法が確立し、プレートテクトニクスの成立につながった。
[河野 長]