改訂新版 世界大百科事典 「地磁気編年」の意味・わかりやすい解説
地磁気編年 (ちじきへんねん)
geomagnetic chronology
geomagnetic stratigraphy
各地層の年代的上下関係を調べたり,あるいは年代を測定することを編年という。地磁気は逆転を繰り返してきた。地層には,それが形成されたときの地磁気が記録されている場合が多く(自然残留磁気),地層の年代と地層の磁化のようすを多数測定することにより地磁気逆転の歴史を記録した〈地磁気逆転のタイムスケール〉が作られている。地磁気編年とは各地層の磁気のようすを測定し,このタイムスケールを利用して行う編年をいう。
以前より,地質編年といって,広く分布する化石を利用し,互いに離れた地層の時間的上下関係を相対的に決定することが行われてきた。次いで,放射性同位体の崩壊を利用する年代決定法(放射年代)が実用化され,相対的な年代の上下だけでなく,絶対的な時間目盛もつけられるようになった。さらに,1950年代より古地磁気学と放射性年代決定法を組み合わせた研究が進み,地磁気逆転のタイムスケールが過去400万年程度まで確立され,地磁気編年が可能となった。
現在の地磁気方向をノーマル,逆方向をリバースという。地磁気逆転は大きく100万年程度の期に分けられる。約70万年前から現在まではノーマルでブリュンヌ期,それ以前約240万年前まではリバースで松山期とよばれる。この約70万年前のノーマルとリバースの変り目を,松山-ブリュンヌ境界とよび,よく編年の鍵として利用される。期のなかには10万~20万年以下の反転していた時期が含まれ,イベントとよばれる。リバースの松山期にはノーマルのハラミロとオルドバイというイベントが含まれ,これも年代決定の鍵となる。
ある地層が逆帯磁していたとしても,この地層がどのリバースの時代にできたかはこれだけからでは判別できない。そこで,問題とする地域で現在から順に地層のノーマル,リバースのようすを詳しく調べ,タイムスケールとつき合わせるという方法を取る。もちろん,化石年代や放射年代を併用したほうが,編年はより確かなものとなる。
→年代決定法
執筆者:田中 秀文
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報