精選版 日本国語大辞典 「地磁気」の意味・読み・例文・類語
ち‐じき【地磁気】
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地球がもっている磁気および磁場(磁界)のこと。地球磁気ともいい、同様な意味をもつことばとして地球磁場がある。磁場を表すには北向き、東向き、下向きの各成分を用いるのが普通であるが、測定法の制約などから偏角(水平面内で北から東回りを正にとる)、伏角(ふっかく)(水平面からの傾きで下向きが正)、全磁力(磁場の強さ)の三つの成分を用いることもある( )。
東京付近での現在の偏角は約マイナス6度、伏角は約49度、全磁力は約4万6000ナノテスラである。現在では、船や航空機の運航には全地球測位システム(GPS)を用いて位置や方向を求めるのが普通であるが、以前は航海のために、磁気コンパスによって方位を求める方法が広く用いられていた。こうした実用上の重要性もあって、かつてはイギリス、アメリカなどで数年ごとに磁気図を作成していた。磁気図は、地表で地磁気のある成分が同じ値をとる場所を連ねた地図である。偏角磁気図で等偏角線が集中している場所は、地磁気が鉛直下向き(伏角90度)、または鉛直上向き(伏角マイナス90度)の場所で、それぞれ北磁極、南磁極とよばれる。また伏角が0度となるところを磁気赤道という。伏角と全磁力の磁気図をみると、赤道から南北へ高緯度になるにしたがって伏角が正または負で大きくなり、また、全磁力も緯度によって系統的に変化していることがわかる。
こうした地球磁場の特徴は、1838年にドイツのガウスが創始した球面調和解析法によって数学的に示すことができる。球面調和解析とは、磁場をプラスとマイナスの二つの磁極からなる双極子、四つの磁極が集まった四極子、など単純なものから始めて、より複雑なものへと成分を分解する方法である。この方法を用いると、地球磁場の大部分(90%程度)は、地球の中心にあり回転軸から約11.5度傾いた双極子の磁場によって近似することができる。この磁気双極子の強さは現在8.0×1022Am2(アンペア平方メートル)である。もちろん、地球表面での複雑な磁場の分布を表すには双極子項だけでは不十分で、球面調和解析で得られる四極子項、八極子項など、展開の高次の項(まとめて非双極子項という)を含める必要がある。
しかし、こうしたモデルはいかに精密なものでも、波長3000キロメートル程度より短い変化は表せない。したがって、たとえば火山など強い磁化をもつ物質のつくる磁場は、一般的な地球磁場の成分に重畳して地磁気異常をつくる。逆に地磁気異常を解明すれば、その原因となっている磁化をもつ物体(たとえば火山体)の形や性質が推定できる。
[河野 長]
地球磁場は静穏なときでも、1日の間に20~50ナノテスラ程度の変動を示す。これは地球磁場の強さ(約3万~6万ナノテスラ)に比べると1000分の1程度の小さな変化である。この原因は高度50~250キロメートルにある電離層内を流れる電流であり、電流の流れ方が基本的には電離層の受ける太陽の輻射(ふくしゃ)エネルギーに支配されるために、1日を周期とする変化がおこるのである。
一方、磁気的に擾乱(じょうらん)の激しいときの典型的なものは磁気嵐(あらし)で、数日間も続くことがある。これは、地球磁気圏に太陽からとくに強いプラズマ流(太陽風)が吹き寄せたためにおこるもので、中・低緯度地方ではまず磁場の水平分力が急に強まり(磁気嵐の急始)、ついで水平分力が200~500ナノテスラも減少する(主相)。これは、太陽風プラズマが地球磁気圏内に侵入し、磁場の効果で電子とイオンが逆方向へ移動するために、結果的に地球半径の5倍程度のところに、赤道面に沿って東から西へ電流(赤道環電流)が流れることによるものである。太陽風プラズマの侵入によって、磁気圏内での荷電粒子の活動は活発になり、極地ではオーロラがみられ、磁気圏内には脈動とよばれる地磁気の変動が現れる。やがて太陽風プラズマの活動が衰えると環電流も弱まり、地磁気水平分力も徐々に回復する(終相)というのが磁気嵐のあらましである。
地磁気には、このほかにも長短さまざまな周期をもつ変化がある。黒点変動の周期である11年より短い周期をもつ変動は、いずれも太陽の活動によって引き起こされる、地球外に原因をもつ現象である。一方、それより長い周期の変動は、地球内部に原因をもつ地球ダイナモの固有のものと考えられる。周期が数十年から数千年の変動は永年変化とよばれる。さらに周期の長いところは、岩石のもつ残留磁化の研究分野である古地磁気学によって明らかにされたもので、もっとも顕著なものは極性の逆転である。これは、地磁気双極子の方向が数千年ぐらいの短い時間内に南向きから北向きへ、あるいはその逆に変わる現象で、過去数千万年については約20万年に1回の割合でおこっていることが明らかになった。
地磁気の逆転は、初め、陸上に噴出している火山岩の年代とその残留磁化の極性の研究から、過去300万年程度について明らかになった。その後「バイン‐マシューズ理論」によって、海嶺(かいれい)から広がる海底が交互に正または逆向きに帯磁していることが判明した結果、海上で観測される磁気異常を用いて、1億年以上前までさかのぼって地磁気の逆転の歴史が明らかにされている(
)。[河野 長]
地球の流体核は4000~5000℃の高温で溶融した鉄からできており、きわめてゆっくりした対流運動をしていると思われる。電気の良導体である流体が磁場中で運動すると、電磁誘導によって内部に電流が流れ、その電流がまた磁場をつくりだす。新たにつくりだされた磁場がもとの磁場を強めるようなものであれば、外から磁場がかかっていなくても、流体自身の発電作用によって電流、すなわち磁場を保持し続けることができる。このような自己励起的な発電の仕組みをダイナモ作用、また、ダイナモ作用によって地球磁場が維持されているという考えをダイナモ理論という。地球磁場の成因はダイナモ理論によって説明されるものと信じられている。
[河野 長]
『力武常次著『地球磁場とその逆転 70万年前磁石は南をさしていた!』(1980・サイエンス社)』▽『川井直人著『地磁気の謎 地磁気は気候を制御する』(講談社・ブルーバックス)』
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…地磁気(地球磁場)の観測を通して地磁気の性質や原因,地球の電磁気学的性質を研究する学問分野。なぜ磁石は北を指すかという素朴な疑問のためか研究の歴史は古いが,近代科学としての基礎を築いたのは19世紀のC.F.ガウスであり,詳細にわかってきたのはつい最近のことである。…
※「地磁気」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
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