坩堝(読み)ルツボ(その他表記)crucible

翻訳|crucible

デジタル大辞泉 「坩堝」の意味・読み・例文・類語

る‐つぼ【坩堝】

《「る壺」あるいは「炉壺」の意からか》中に物質を入れて加熱し、溶解焙焼ばいしょう・高温処理などを行う耐熱製の容器。金属製・黒鉛製・粘土製などがある。
熱狂的な興奮に沸いている状態。「会場が興奮の坩堝と化す」
種々のものが混じり合っている状態や場所。「人種坩堝
[補説]作品名別項。→るつぼ

るつぼ[戯曲]

《原題The Crucibleアーサー=ミラーによる戯曲。1953年、ニューヨークにて初演。17世紀の魔女裁判を主題としつつ、執筆当時のアメリカマッカーシズムを強く批判した作品。

かん‐か〔‐クワ〕【××堝】

るつぼ。

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精選版 日本国語大辞典 「坩堝」の意味・読み・例文・類語

る‐つぼ【坩堝】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 物質を強く熱するのに用いる耐熱性の容器。磁器・黒鉛・石英ガラス、または白金・銀・ニッケルなどの金属で作られる。金属の溶融、化学の実験などで用いられる。〔書言字考節用集(1717)〕
    1. [初出の実例]「いかけしがル壺こぼすや花卯木」(出典:俳諧・文化句帖‐元年(1804)四月)
  3. ( 比喩的に ) 熱気に満ちあふれている状態、また、激しく感情の高まった状態のたとえ。
    1. [初出の実例]「巴里全市を革命の坩堝(ルツボ)へ投げ込むことが」(出典:ブウランジェ将軍の悲劇(1935‐36)〈大仏次郎〉将軍の出発)
  4. 種々のものが混合している状態や場所、または混合・融合させるもののたとえ。「人種の坩堝」
    1. [初出の実例]「要するに浅草は〈略〉人間の喜怒哀楽を一つに溶け込ませる大きな歓楽の坩堝である」(出典:新版大東京案内(1929)〈今和次郎〉盛り場)

かん‐か‥クヮ【坩堝】

  1. 〘 名詞 〙 金属やガラスなどを入れ、高温にして溶かすのに用いる容器。るつぼ。
    1. [初出の実例]「日本の精神界の基本となれるものは寧ろ仏教にあらずして此『シバルリック』坩堝(カンクヮ)融解せし儒教なり」(出典:戦後の文学(1895)〈内田魯庵〉)
    2. [その他の文献]〔訓蒙字会〕

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改訂新版 世界大百科事典 「坩堝」の意味・わかりやすい解説

坩堝 (るつぼ)
crucible

物質を強熱するために用いられるわん(椀)形の耐火性容器。主として融解,焙焼(ばいしよう),煆焼(かしよう),灼熱,焼結,冶金などに用いられる。目的に応じて種々の形のものがあり,また取り扱う試料の種類,量その他に応じて各種の材質のものが用いられ,実験室用,工業用でも違いがある。

実験室では,白色磁器製のものが最も普通に用いられるが,その他材質の違うものとしては,アランダム,コランダムアルミナ石英,黒鉛,白金,金,ニッケル,銅,鉄,骨灰などがある。磁器製るつぼで,最も標準的なものは通常内容量10mlないし100ml,釉(うわぐすり)つきのもので1050~1100℃程度,素焼のもので1300℃程度までの加熱に耐えるが,急熱,急冷に弱く,割れやすい。通常の重量分析その他に多く用いられる。上記の欠点を補うため,溶融石英製のものもあるが,機械的な強度が劣り,また重量変動が大きく,定量分析には用いられない。またアルカリ融解,フッ化物などの取扱いには磁器製,石英製いずれも侵されやすいので使えない。このため,ニッケル,白金,銀などの金属製るつぼもある。なかでも白金るつぼは加熱による重量変化がきわめて少なく,王水以外の酸には侵されないので精密を要する定量分析に用いられる。ただ白金は還元炎中で熱するともろくなるし,また軟らかく,高価でもあるので,あまり精密さを必要としないときはニッケルや鉄が代用される。アルカリ融解などにはとくに銀るつぼが多く用いられる。ただし金属製るつぼは一般に酸に対して弱い。工業的な冶金などには黒鉛製,骨灰製などのるつぼがある。

 加熱以外の役割をもたせるるつぼには,ろ(濾)過るつぼやローゼるつぼなどがある。ろ過るつぼは底部が多孔質の磁器からなるものや,底部に穴をあけアスベストを敷いて使用するもの(グーチるつぼ)などがある(図2)。これらは沈殿をろ過し,洗浄してから加熱秤量する。同種のものでガラス製のものもあるが,これは強熱することができず,ガラスろ過器というのが普通である。ローゼるつぼ(図3)は,沈殿を水素その他の気流中で熱する目的に用いるもので,ガスを導入する素焼の細い管がついている。
執筆者:

工業用のるつぼは原理的には実験室用のものを大きくしたものである。金属やガラスなどを溶解する際に使用するため,高熱においても中の金属やガラスとほとんど反応しない材質を選択する必要がある。黒鉛は軽合金,銅合金とはほとんど反応しないため広く使用される。クレーボンド(黒鉛+粘土)およびカーボンボンド(黒鉛+炭化ケイ素)の2種類があり,急熱急冷,耐久性は後者のほうが優れる。軽合金では鋳鉄るつぼも使用される。また黒鉛と反応する鉄鋼の溶解では,シリカSiO2,アルミナAl2O3,マグネシアMgO,ジルコニアZrO2などの酸化物を単独あるいは混合して焼成したるつぼを使用する。るつぼを収容して重油,ガスなどの燃焼または電熱によって加熱する炉をるつぼ炉と呼ぶ。誘導炉の一型式をるつぼ炉と呼ぶこともあり,この場合は溝型誘導炉に対して使用される。
執筆者:


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普及版 字通 「坩堝」の読み・字形・画数・意味

【坩堝】かんか(くわ)

金属をとかすのに用いるるつぼ。坩鍋。〔天工開物、下、五金〕(銀)高爐の火中、坩鍋(堝)足し、少許を撒(ま)き、銅盡(ことごと)く鍋底に滯るを、名づけて銀銹と曰ふ。

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