垂直分布(読み)スイチョクブンプ(英語表記)vertical distribution

デジタル大辞泉 「垂直分布」の意味・読み・例文・類語

すいちょく‐ぶんぷ【垂直分布】

生態分布の一。土地の高度水深との関係から見た生物の分布。⇔水平分布

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精選版 日本国語大辞典 「垂直分布」の意味・読み・例文・類語

すいちょく‐ぶんぷ【垂直分布】

  1. 〘 名詞 〙 ある地域における高度や水深など、地表に対して垂直方向にみた分布。特に、生物について用いる。⇔水平分布
    1. [初出の実例]「兎も角も気温や風の特異な垂直分布による音響の異常伝播と関係のある怪異であらう」(出典:化物の進化(1929)〈寺田寅彦〉)

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改訂新版 世界大百科事典 「垂直分布」の意味・わかりやすい解説

垂直分布 (すいちょくぶんぷ)
vertical distribution

一般に生物の標高による高度分布をいい(海・水面下の垂直分布は深度分布として区別し,ここでは陸上に限定する),水平分布の対語。植物の垂直分布は,植生の変化とそれによってつくり出される相観の変化によって,いくつかに区分されたもので,垂直分布帯と呼ばれる。日本ではふつう低地から順に,標高500m以下の照葉樹林域を地形によって低地帯,丘陵帯,標高500~1500mの夏緑広葉樹林域を山地帯,標高1500~2500mの針葉樹林域を亜高山帯,標高2500m以上の高木群落のないところを高山帯などと区別する。動物の分布は植生の垂直分布の変化に従って変わる。気温は高度100mごとに1℃低下するとされ,高地性の種は低温適応性であるが,鳥類など温度適応の幅の広い高等動物では,その適応性の範囲なり,生活環境としての植生選好が優先する。例えば,ノゴマは北海道の平地の草原にも大雪山高山草原にも繁殖する。富士山の溶岩流の青木ヶ原では,標高900mの下部でも亜高山性,低温性のヒガラやコガラ,小哺乳類では高山性のヒメヒミズが分布し,火山砂のため高地性のヤチネズミの住まない2000mの高地まで低地性のスミスネズミが進出している。しかし,森林鳥類では一般に森林の垂直分布に従って近似の生息種が入れかわる。例えば,クロツグミ→マミジロ→アカハラ,コルリ→コマドリ→ルリビタキ,センダイムシクイ→エゾムシクイ→メボソムシクイが低山地→山地帯→高山帯へと入れかわって分布する。なお,森林内でも,林冠部,中部,下層部,灌木,草本部,地上といった層別の垂直的な採餌すみわけ分布がみられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「垂直分布」の意味・わかりやすい解説

垂直分布
すいちょくぶんぷ

同一の地域でも、山に登ると気温が低下し、それに伴って植物の種類相や群落が変化する。このような高度による植物分布の様相を垂直分布という。その変化の状態はほぼ水平分布に対応している。海抜高度による植物分布の状態をみると、連続的ではなく、植生やフロラが急激に変化する所がある。そのような不連続によって区分したのが垂直分布帯である。本州中部では下から上に向かってシイ・カシ帯、ブナ帯、シラビソ帯、ハイマツ帯、ヒゲハリスゲ帯が区分できる。盆地などで冷気湖が形成される所では垂直分布帯が一部逆転することもある。

 垂直分布は山ばかりでなく凹地(くぼち)にもみられ、死海沿岸のように海面より低い所では、本来は亜熱帯であるが、気温が高くなり、熱帯の植生がみられる。

[大場達之]

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百科事典マイペディア 「垂直分布」の意味・わかりやすい解説

垂直分布【すいちょくぶんぷ】

高度分布とも。土地高度および水深に伴う生物の分布。水平分布の対。特に植物では明瞭。山岳では高度が100m増すごとに平均約1℃の気温の低下があり,この低下に対応して水平分布に似た群落の種類や外観の垂直変化がみられる。本州中部の太平洋岸の山岳では500m付近まで照葉樹林帯(低山帯),1500m付近まで夏緑林帯(山地帯),1500〜2500mまで針葉樹林帯(亜高山帯)となり,この上には森林や高木がない。この森林の上限を森林限界,高木の分布上限を高木限界という。この上は3000m付近まで低木や高山草原の発達するハイマツ帯(高山帯),さらに地衣帯(亜恒雪帯)になる。低木の分布上限を低木限界という。動物相も高度につれて変化するが,これは温度変化よりもむしろ植生の変化により強く依存している。また湖沼や海にも水深によって植物の帯状分布がみられる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「垂直分布」の意味・わかりやすい解説

垂直分布
すいちょくぶんぷ

生態分布」のページをご覧ください。

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