精選版 日本国語大辞典 「垣内」の意味・読み・例文・類語
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垣内は地方によって、ケート、カイチ、カイツ、カキウチ、カキナイ、カクチなどともよばれ、ことばとしては現在ほぼ全国にわたって分布している。また、垣内という漢字をあてるほかに、海渡、街道などさまざまな当て字が行われている。
〔1〕垣内の意味する内容は、全国を通じてみればきわめて複雑多岐にわたっているが、およそ次のように類別できる。(1)地域結合、(2)集落の共有山林、(3)同族集団、(4)屋敷の一部名、(5)一区画の屋敷地、(6)屋号、(7)区画された一団の耕地、(8)一区画の原野、(9)地字(ちあざ)名。古くは一つであったと思われる垣内の意味が、各地でこのように分化してきた道筋と理由が問題になる。
〔2〕垣内が固有名詞として用いられる場合、通例その上に種々の名を冠してよんでいる。その呼び名は、ほぼ次の7通りに分けられる。(1)方角名を冠するもの。東垣内、上(かみ)垣内など。(2)地形を示すもの。谷垣内、原垣内など。(3)樹木名を冠するもの。栗(くり)垣内、柿木(かきのき)垣内など。(4)人名を冠するもの。平七垣内、伝五郎垣内など。(5)職業名を冠するもの。鍛冶(かじ)垣内、紺屋(こうや)垣内など。(6)社寺関係を示すもの。宮垣内、寺垣内など。(7)その他。百垣内、むじな垣内など意味のとりにくいもの。垣内に冠せられた名称によって、命名の動機をうかがうことができ、垣内の性格を考えるうえに有効な手掛りとなる。
〔3〕全国の垣内をその地形的な位置によって分類すると、次の三つの形態になる。(1)平野に分布する平地垣内。(2)山麓(さんろく)に分布する山麓垣内。(3)山間に分布する山間垣内。この三つの形態にも発達の順序があったはずである。
各地の垣内を比較して気のつくことは、古くは垣内が一つの特権であったらしいということである。個人名および職業名を冠する垣内の存在が、このことを推測させる。人名は垣内の創始者であり、職業名は彼らに垣内を与えて村に定住させた事情を示すものであろう。垣内の原初形態は、耕地ならびに付属草地(緑肥採取のため、また将来の開墾予定地として)を囲んだ新開墾の一区画にあったと推測される。それが出作(でづくり)小屋としての田屋(たや)を媒介として、住居を内包した個人垣内に移った。このように屋敷化した垣内は、一方において同族垣内あるいは隣保垣内さらには集落垣内へと拡大の方向をたどるとともに、他方では屋敷の一部名あるいは屋号、さらに単なる地字名として痕跡(こんせき)をとどめる程度にまで細分化する方向をたどったものと考えられる。和歌山県熊野山地には、現在でも一戸で占めているか、最近まで一戸で占めていた個人垣内の形態が多くみられる。また個人垣内が拡大して、数戸によって占められる隣保垣内や同族垣内の事例も認められる。垣内の成立と変貌(へんぼう)の過程は、大小の差こそあれ、中世の荘園(しょうえん)の発達とよく似ている。両者がどのような関連にあるかは、民俗学と史学との提携が期待される興味ある問題である。垣内をある時期からの開拓様式と考えた場合、条里制との関係が問題になってくるが、少なくとも垣内の起源は、条里制に基づく、あるいは条里制以後のものではなく、条里制施行以前にすでに長い歴史を背負っていたということができよう。柳田国男(やなぎたくにお)は、荘園という漢字の日本名が、もとはカキツまたは垣内であったかもしれないという説を示しているが、なぜに両者を呼び分ける必要があったのか、また荘園とは別に、垣内は垣内として存続した事情はなんであるのか、が問われるべき課題として残るであろう。
[直江広治]
『「垣内の話」(『定本柳田国男集29』所収・1964・筑摩書房)』▽『直江広治「垣内の研究 1・2」(『東京教育大学文学部紀要』所収・1958、60)』
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古代~中世,周囲に垣をめぐらして私的占有地であることを示した小規模な開発地。本来は畠を中心としたものだったが,開発にともなって屋敷が設けられ,周囲の林や水田なども含むものになった。数個の垣内が複合して小集落を形成することもあり,この集落も垣内とよぶ。全国にあるカイト・カイチ・カイドなどの地名は,こうした耕地や集落の名に由来する。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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