精選版 日本国語大辞典 「報道写真」の意味・読み・例文・類語
ほうどう‐しゃしん ホウダウ‥【報道写真】
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事件や事故など社会情勢や、世相、風俗、習俗など社会の表情を具体的に伝える目的で撮影される時事的な写真の総称。語源としては、1920年代のドイツでウルシュタイン社が発行していた日刊新聞や週刊誌に掲載された新しい写真ドキュメンタリーの形式・内容に、写真評論家の伊奈信男(いなのぶお)(1898―1978)が、報道写真の訳語をあてたもので、第二次世界大戦後、新聞写真を含め、社会的な題材を扱った写真すべてをこの名称でよぶようになった。広義のドキュメンタリー写真が自然、社会一般の現象を客観的に記録、伝達するのに対し、報道写真は題材を同じくしながら、速報性が重視され新聞・雑誌などの媒体で、読者に迅速な理解を促すように撮影、構成される。そこで、フォト・ジャーナリズム、グラフ・ジャーナリズムの写真様式のことをもさすようになった。
報道写真の歴史的展開は、1925年ドイツで開催された「新即物主義展」の客観主義に徹した写真表現に端を発し、題材を日常の事象に及ぼしたウルシュタイン社が、ドキュメンタリー写真を報道写真へと発展させたのであった。その後ナチスの台頭でアメリカに亡命した写真家たちが、『タイム』『フォーチュン』の発行者H・R・ルースによって36年11月23日に創刊された『ライフ』や、その6週間後に創刊された『ルック』などに報道写真のスタイルを導入し、編集者、記者、写真家が一体となった組織的な編集制作方法を確立した。『ライフ』はこれをフォト・エッセイとよんだ。『ライフ』は最盛期850万部を発行し、アメリカの政治、外交をキャンペーンする役割を果たすとともに、そのスタッフ写真家にはいずれもこの時代を代表する報道写真家を配し、テレビが発達するまで、社会的に強い影響力をもつ媒体であった。第二次世界大戦後はカルチエ・ブレッソンやロバート・キャパたちによる報道写真の通信社「マグナム・フォトス」も設立され、1960年代は報道写真のもっとも充実した時代であったが、テレビの発達などによる72年の『ライフ』休刊で、衰退期に入った。なお『ライフ』は78年に月刊誌として復活したものの、売れ行きの落ち込みにより、2000年に廃刊している。その後、アメリカのタイム・ワーナー社の雑誌出版部門であるタイム社が、2004年10月から『ライフ』を新聞の折り込み誌として復刊した。これは、提携した新聞の毎週金曜日版に折り込まれる無料週刊誌という形をとっている。
日本ではドイツで報道写真を学んだ名取洋之助が「日本工房」を設立(1933)し、その影響下から出た木村伊兵衛(いへえ)や土門拳(けん)が第二次世界大戦後も活躍した。その後、放送メディアの隆盛に押されて出版ジャーナリズムが衰退するなか、1980年代に入るとスキャンダル報道などセンセーショナルなニュースを扱う写真週刊誌の登場で、報道写真はふたたび注目されるが、2001年(平成13)にはその種の雑誌では草分けである『フォーカス』が休刊となった。しかしそうした一過性の報道ではなく、戦乱や人種問題などについて長期にわたる個人取材を敢行し、人間の普遍性を追求しようとする地道な報道写真家たちはなおも世界各地で活躍を続けている。
[重森弘淹・平木 収]
『中井幸一編『日本写真全集10 フォトジャーナリズム』(1987・小学館)』▽『A・ゴールドスミス解説『世界写真全集3 フォトジャーナリズム』(1989・集英社)』▽『徳山善雄著『フォト・ジャーナリズム――いま写真に何ができるか』(平凡社新書)』
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出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
…これは従来の印象批評を排して写真芸術の〈機械的メディアの特性〉を強調,写真の本質を追究したもので,日本に近代的な写真批評を確立した論文とされる。reportage photoを最初に〈報道写真〉と訳し,この分野の体系を明らかにした。第2次大戦後は評論活動のほか,日本写真協会常任理事などを務めた。…
…写真家,編集者。日本に最初に本格的な〈報道写真〉の理念と方法を紹介した人物として知られる。実業家名取和作の三男として東京に生まれ,慶応義塾普通部卒業後,1928年に渡独,独学でカメラの操作を学び,ウルシュタイン社の契約カメラマンとなる。…
※「報道写真」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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