売る(読み)ウル

デジタル大辞泉 「売る」の意味・読み・例文・類語

う・る【売る】

[動ラ五(四)]
代金と引き換えに品物権利などを相手に渡す。「商品を―・る」「土地を―・る」⇔買う
自分のことを世間に知られるようにする。また、有名になる。「顔を―・る」「名を―・る」「味で―・る店」
自分の利益のために、味方を裏切って敵の利益のために働く。「仲間を―・る」「国を―・る」
相手に行動させるよう仕掛ける。また、押しつける。「恩を―・る」
別の目的に利用する。口実にする。
「ぬけ参りの者に御合力と、御伊勢様を―・りて」〈浮・永代蔵・二〉
[可能]うれる
[動ラ下二]う(売)れる」の文語形
[下接句]油を売る男を売る恩を売る顔を売る国を売る喧嘩けんかを売るこびを売る名を売る情けを売る身を売る羊頭ようとうを掲げて狗肉くにくを売る
[類語]販売発売押し売り売却身売り専売直売通信販売セールスセールリリースひさぐ売り払う売り捌く売り付ける売り込む売り急ぐ売り切れる売り渡す売り飛ばす売り繋ぐ・売り歩く売り出す売れる払い下げる卸す

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「売る」の意味・読み・例文・類語

う・る【売】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙
    1. 代金を受け取って品物や権利を他人に渡す。また、買い手を求める。販売する。ひさぐ。⇔買う
      1. [初出の実例]「彼の比丘尼〈略〉酒を沽(ウル)」(出典:斯道文庫本願経四分律平安初期点(810頃))
      2. [その他の文献]〔史記‐貨殖伝・任氏〕
    2. 女が代金を受け取って男に身を任せる。ひさぐ。⇔買う
      1. [初出の実例]「太夫、どうじゃ。売りゃるの売りゃるの。俺にも一つ売ってたも」(出典:歌舞伎・傾城壬生大念仏(1702)上)
      2. [その他の文献]〔五雑俎‐人部・四〕
    3. 自分の利益のため、属する国、団体、仲間などの所有物、情報などを敵対する側に渡す。信頼を裏切る。また、自分の信念をまげる。
      1. [初出の実例]「ソノデシ ノ ウチ イチニン ヨリ vrare(ウラレ)」(出典:サントスの御作業の内抜書(1591)一)
      2. 「僕は親友の恋してゐる女を横取りには出来ません。それは友を売ることです」(出典:友情(1919)〈武者小路実篤〉下)
      3. [その他の文献]〔墨子‐号令〕
    4. 本当のところを隠して、別の事を理由や目的だと見せかける。口実にする。かこつける。
      1. [初出の実例]「ぬけ参りの者に御合力と御伊勢様を売(ウリ)て此十二三年も同じ偽(うそ)にて世を過る女あり」(出典:浮世草子・日本永代蔵(1688)二)
    5. ( 「名を売る」「顔を売る」などの形で用いられる ) 自分のことを広く人々に知らせるようにする。人の注意をひくような態度を表わす。
      1. [初出の実例]「お前さんも人に知られた方なりゃァ、私もちったァ、顔も売(ウ)った女で御座いますから」(出典:人情本・恋の若竹(1833‐39)初)
    6. ( の意の自動詞的な用法 ) 人に知られる。
      1. [初出の実例]「地方では立派な紳士で売って居るらしい服装(みなり)はして居る」(出典:魔風恋風(1903)〈小杉天外〉前)
    7. けんかを)しかける。
      1. [初出の実例]「喧嘩を売ったのは繁太の罪だけれど」(出典:銀の匙(1913‐15)〈中勘助〉前)
    8. ( 「恩を売る」「媚(こび)を売る」などの形で用いられる ) 押し付ける。
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙うれる(売)

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