広義には変成岩の分布する地域。これは単に地表面の区域だけではなく、地下にまで広がりをもつ三次元的空間である。いわゆる造山帯の内部には、結晶片岩や片麻(へんま)岩が分布する長大な地域がある。その広さは、たとえば日本の三波川(さんばがわ)変成帯では、長さ700キロメートル、幅50キロメートルに及ぶ。変成帯は、狭義にはこのような帯状の広域変成岩分布域をいう。これは、造山運動に伴って、地殻の一部に地温勾配(こうばい)の大規模な変化と、岩石の著しい変形とがおこったために生じたもの、と考えられている。変成帯は温度勾配の大小によって、いくつかの型に分類され、それぞれ特徴的な鉱物や岩石を産する。温度勾配が高い場合には、温度に対する圧力の比(P/T)が低く、紅柱石や菫青(きんせい)石のような比較的低圧で安定な鉱物が出現する。日本の領家(りょうけ)変成帯はこの典型的な例である。一方、温度に対して圧力が高い、つまりP/Tが大きい変成帯では、高圧で安定な鉱物、たとえば藍閃(らんせん)石、ひすい輝石、ローソン石、アラゴナイトなどが出現する。日本の三波川変成帯やアメリカ西海岸のフランシスカン変成帯がこの例である。前記二つの中間的な地温勾配の下では、藍晶石、ざくろ石、十字石などで特徴づけられる中間圧力型広域変成帯が形成される。イギリスのスコットランド高地やアメリカのアパラチア山脈の変成帯はこれの代表である。低圧型と中間型の変成帯には、大量の花崗(かこう)岩が貫入しているが、変成帯内部の温度分布と花崗岩の分布とは、直接には関係がないようにみえる。一方、高圧変成帯には花崗岩の貫入がみられず、かわって蛇紋岩が広く分布している。
環太平洋の造山帯では、しばしば、低圧型と高圧型の変成帯が造山帯の延長に平行に並走している。そして、後者が太平洋側にあり、前者がその内側に位置している。たとえば、西南日本では、中央構造線を境として、その外側つまり太平洋側に三波川高圧変成帯が、内側に領家低圧変成帯が分布している。このように、温度勾配の異なる二つの型の変成帯が並走する場合、これらを「対をなす変成帯」ということがある。
火成岩マグマの貫入に伴って、周囲に接触変成岩が生じた場合にも、その分布域を接触「変成帯」ということがある。
[橋本光男]
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