変電所(読み)へんでんしょ

精選版 日本国語大辞典 「変電所」の意味・読み・例文・類語

へんでん‐しょ【変電所】

〘名〙 電圧電流変成および電力分配のための施設発電所から送られた電力を昇圧する第一次変電所、需要地の近くで降圧する第二次変電所、さらに需用家用に降圧する第三次変電所などがある。変圧所。
林泉集(1916)〈中村憲吉〉街上雑詠「変電所灯(ほ)なかのものの唸りより夏夜の街は明け易からむ」

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デジタル大辞泉 「変電所」の意味・読み・例文・類語

へんでん‐しょ【変電所】

発電所から送られてきた電力を変圧器によって必要な電圧昇降し、消費地に送り出す施設。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「変電所」の意味・わかりやすい解説

変電所
へんでんしょ

発電所からの電力を需要家に送る過程で、変圧器または整流機器などによって、構外からの交流電力を異なった電圧の交流または直流電力に変え、ふたたび構外に送り出す施設。前者の交流電力に変えるものは、一般の電力系統の変電所で、後者の直流電力に変える代表的なものとしては、電気鉄道用変電所がある。

 日本では、明治の中期に大都市に発電機を設置して、1000ボルト程度の交流配電が行われた。しかし、この年代のものは、規模からいって変電所の形態をなしていない。明治の後期になって、都市から遠く離れた水力発電所が建設され、数万ボルトの送電線によって送電され、現在いわれている意味の変電所が誕生した。電力需要が著しく増大し、大電力発電所が多数建設され、大電力の送電を行うにつれ、次々と高電圧が採用されている。当然、変電所も高電圧・大容量となり、また他系統との連系のため、きわめて重要な役割を果たしている。なお、水力発電所や火力発電所などでも、電力を送電線で送りやすいように、変圧器を用いて高電圧にあげているが、これは発電所の設備の一部とされている。変電所の電力系統における役割としては、送配電系統電圧の変換・調整、送配電線の保護、電力潮流の調整などがある。

[松田高幸]

分類

変電所の分類はあまり明確ではないが、普通、超高圧変電所(275キロボルト/154キロボルト、500キロボルト/275キロボルトクラスなど)、一次変電所(154キロボルト/66キロボルトクラス)、中間変電所(66キロボルト/22キロボルトクラス)、配電変電所(66キロボルト/6.6キロボルトクラス)に分類されている。

 制御方式によって分類すると、手動制御式、自動制御式、遠方制御式に大別できる。遠方制御式変電所は、遠方の変電所または制御所から制御される変電所で、中間変電所や配電用変電所ではこの方式が多くなっている。また、外観的な形態からは、屋内変電所、屋外変電所、半屋外変電所、地下変電所などに分類される。大都市ではほとんどが地下変電所である。

[松田高幸]

設備

変電所の設備としては、変圧器、電圧調整設備、遮断器および断路器、避雷器、計器、保護リレー、配電盤などがある。変圧器は電圧の変成を行うもので、単相型と三相型とがあるが、経済的に有利な三相型が用いられている。変圧器の容量は、超高圧変電所用の150万キロワットから配電変電所用の1万キロワット程度のものまで大きな差がある。電圧調整設備は、電力用コンデンサー、分路リアクトルなどで、変圧器のタップ切替え装置とともに電圧の調整に用いられる。避雷器は、送配電線から侵入する雷電圧などから変電所内の機器を守るためのもの。計器は、変電所の運転状態、負荷状態、回路電圧状態などを検知するもので、電流計、電圧計、電力計などである。保護リレーは、機器や送配電線の事故の際、事故点を回路から自動的に切り離すために、事故をすばやく検出し、遮断器に遮断信号を送るものである。また配電盤は、遮断器その他の機器を監視・制御するために、計器、リレー、各種警報装置を配列した盤である。

 電気鉄道用変電所は、数万ボルトの交流電力を受け入れ、これを変圧器によって千数百ボルトの交流電圧とし、さらに整流器によって1500ボルト程度の直流電圧をつくり、これを電車線に送るところである。交流区間では交流電圧をそのまま電車線に送る。

[松田高幸]


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百科事典マイペディア 「変電所」の意味・わかりやすい解説

変電所【へんでんしょ】

送配電のそれぞれに適した電圧に昇降するための施設で,同時に発電所の連絡や電力の配分などを行う。超高圧変電所,一次変電所,二次変電所,配電用変電所に分けられ,特殊なものに周波数変換を行うものもある。変圧器が中心で,ほかに遮断(しゃだん)器,避雷器,配電盤などを備える。多く運転は大電力系統の一環として行われ,遠方監視制御方式による自動化が進んでいる。
→関連項目配電

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「変電所」の意味・わかりやすい解説

変電所
へんでんしょ
substation

発電所から送られてくる電力をそれぞれの使用目的に合せた電圧に昇降させる場所。いわば発電所と最終需要地点を結ぶ中継基地で,発電所から一次送電線で送られてきた電力を最初に受電・降圧する一次変電所,そこから二次送電線によって送られた電力を降圧する二次変電所,さらに配電変電所がある (→電力系統 ) 。近年,変電所の役割は電圧の昇降だけでなく,発電と消費の総合的な調整の役割を果すようになってきた。変電所に設置されるおもな機器は変圧器,調相設備,避雷器,配電盤などで,屋外式と屋内式とがある。最近では配電用変電所は屋内式で無人のものが多い。

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世界大百科事典 第2版 「変電所」の意味・わかりやすい解説

へんでんしょ【変電所 substation】

発電所で作られた電気エネルギーを遠くの需要家まで効率よく送りとどけるには,なるべく電圧を高くして,送電線に流れる電流を少なくし,送電線の抵抗で失われる電力をできるだけ少なくする必要がある。一方,使うときには安全で使いやすい電圧に下げることが必要である。このように電圧を適切な値に変える役目を変電所は果たしている。さらに変電所はそこに接続される送電線を通して,各所より電気を集めて,必要な所に配分するとともに,電圧を適切な値に維持,調整している。

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