地方税である法人事業税の一部で、大企業を対象に2004年度に導入された。一般的に法人関係税は所得に応じて課税するが、外形標準課税は資本金や給与額など企業の規模に応じて課すため、景気変動の影響を受けにくく、自治体の安定財源と位置付けられている。21年度の対象企業は約2万社で、ピークだった06年度の約3万社に比べ3分の2に減少した。減資や分社化で課税を回避する大企業が目立っている。
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納税者の担税力を間接的に推測することを可能とする、外部からみて比較的容易に把握できる課税標準に基づいてなされる課税。わが国では、地方税の一つである事業税の課税標準を求める際に問題とされることが多い。現行の事業税は、原則として所得および清算所得を課税標準としているが、これらは直接的に納税者の担税力を表す指標であると考えられており、かつ複雑な計理・計算によって導出されるものである。現行の事業税においても例外として電気供給業、ガス供給業、生命保険事業、損害保険事業に対しては収入金額という外形標準が採用されている。また、上記の業種以外の法人または個人の行う事業に対する課税標準についても、事業の状況に応じ、所得および清算所得によらないで、資本金額、売上金額、家屋の床面積もしくは価格、土地の地積もしくは価格、従業員数などを外形標準とし、または所得および清算所得とこれらの外形標準とをあわせて用いることができることになっている。
1949年(昭和24)に行われたシャウプ勧告においては、事業税が付加価値を課税標準とする外形標準課税の形態をとるように構想されていたが、実現には至らなかった。なお近年、財源難に悩む都道府県の一部より、現行の所得課税方式から、付加価値という外形標準に対する課税方式への移行の要望が強く出されている。2003年度(平成15)税制改正において、資本金が1億円を超える法人を対象に、法人事業税への外形標準課税の導入が決定した(実施は2004年度から)。これより以前の2000年に東京都、大阪府がそれぞれ資金量5兆円以上の銀行業等への外形標準課税導入の条例を成立させているが、これは期間を5年とする時限措置である。東京都は2000年事業年度より導入したが、2000年10月、対象となる銀行に提訴され、一審、二審ともに敗訴した。2003年9月、東京都は、税率を引下げ、課税期間を4年間(2000~2003年事業年度)とするなどの改正案を提示し、10月銀行側と和解した。改正前の税率による税との差額は還付加算金を加えて銀行側に返還することとなった。大阪府もまた2002年4月銀行に提訴され、5月には条例導入の見送りを表明している。
[林 正寿]
納税者の担税力を外部から推定して課税する方式。日本では,地方税の事業税について外形標準課税化が都道府県から提案されている。現行制度のもとでは主として法人所得が課税標準として採用されているが,資本金額,従業員数,床面積,売上高などの外形課税標準が代りに考えられる。日本において都道府県が事業税の外形標準課税化を提唱する理由は,直接的には1973年秋の石油危機後の不況による法人所得の急激な低下とそれに伴う事業税収入の大幅な落込みに対応するためであるが,租税原則の観点からも外形標準課税化を根拠づけることができる。現行制度のもとでは,税を納める企業は黒字企業だけであり,赤字企業は租税負担を免れている。しかし,国や地方公共団体の提供する財やサービスが企業の生産活動に不可欠であるとすれば,それに対応する租税負担もまた黒字企業によってのみならず,赤字企業によっても負担さるべきであろう。外形標準課税は支払能力を間接的に推定させるという点では能力説によって根拠づけることができるが,赤字企業といえども公共サービスの便益を受けているのだからその負担もすべきであるという点では,利益説によっても正当化できる。
執筆者:林 正寿
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(北山俊哉 関西学院大学教授 / 笠京子 明治大学大学院教授 / 2007年)
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…このように,本税はもともと物税として所得課税の補完税たる性格をもつべきものとされているが,現在の制度のもとでは,多くの事業に対して所得を課税標準とすることとされているために,所得税または法人税の付加税的な色彩が強く,本税に期待されている所得課税の補完的な性格はほとんど実現されていない。 そこで,所得に対する課税では応益税的な税配分が不可能であり,また赤字企業といえどもその事業活動を行っている限り当然公共サービスの利益を受けているはずだから,赤字企業も税を負担すべきだと主張して,事業税を所得に対して課税する税から,売上高,給与支払額,純資産額,付加価値額等の外形標準に対して課税(外形標準課税)する税に変えよという要求が地方団体側から強く出されている。この主張のきっかけは,1975年度の事業税収入が不況で大幅に減少し,各都道府県の財政が極度に窮乏したことにあった。…
※「外形標準課税」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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