精選版 日本国語大辞典 「外」の意味・読み・例文・類語
はず・れる はづれる【外】
〘自ラ下一〙 はづ・る 〘自ラ下二〙 ある範囲の外に出る。
[一] 位置が、ある範囲の外に出る。
① 範囲外に位置する。ある場所の外にあらわれ出る。はみ出る。外へそれて出る。
※平家(13C前)四「宇治河の水は、かみにぞたたへたる、おのづからもはづるる水には、なにもたまらずながれけり」
② 組み合わさったり締められたりして固定されているものが解け離れる。「戸がはずれる」「錠がはずれる」「ボタンがはずれる」など。
③ (「迦」の字を当てることがある) 欠落する。逃亡する。行方をくらます。
[二] ある基準の範囲外にある。
① ある長さや音程などの範囲外にある。
(イ) ある長さに及ばない状態である。
(ロ) ある長さを超える。ある長さ以上である。
※浜松中納言(11C中)五「御ぐしいとこちたうおほくて、たけなどのほどもおほくはづれ給へれば」
(ハ) 正しい音程にならないでいる。
※夜と霧の隅で(1960)〈北杜夫〉一「かなり調子の外れた声で唄っているのを聞いた」
② ある組織・仲間などの外にいる。加わることができなくなる。除かれる。もれる。
③ 結果が予測・期待や比較の対象とくいちがう。無駄になる。
※落窪(10C後)一「文一くだりやりつるがはづるるやうなければ」
④ 時間や機会を逸する。
※讚岐典侍(1108頃)上「年ころの御病をだにはづるる事なくあつかひ参らせて」
⑤ 目標からそれる。
※古今著聞集(1254)九「よく引てはなちたりければ、左の脇のしも五寸許のきてはづれにければ」
⑥ 抽籤などにもれる。
⑧ 状態や性行などがふつうと違う。
(イ) 他に同調しないで、離れた行動をとる。ひとりでいる。
(ロ) ふつうの状態と違う。
※歌舞伎・𢅻雑石尊贐(1823)四立「呼吸を外(ハヅ)れし息づかひ」
(ハ) 能力や技量などがふつうと違う。とびぬけている。「ひとなみはずれた腕力」
(ニ) 通例と違う。
※西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉九「西洋さかもりの例にゃア、はづれてゐるだらうが」
そと【外】
〘名〙
① 空間的、平面的に、ある範囲や区画、限界などから出ている部分、また、中心や手前から遠いほうをいう語。すなわち内側でないほうをいう。⇔うち。〔名語記(1275)〕
※謡曲・卒都婆小町(1384頃)「極楽の内ならばこそ悪しからめ、外はなにかは苦しかるべき」
② 囲みおおわれているものの外部。
(イ) おもてに現われた部分。外面。表面。
※玉塵抄(1563)二三「馬のつら、そとのきつさうのよい馬に似たはいらぬぞ」
(ロ) 御簾(みす)、局などの外部。
※枕(10C終)三六「そとのかたに髪のうちたたなはりてゆるらかなる程、ながさおしはかられたるに」
(ハ) 家、屋敷などの外部。門、垣などの外部。戸外。門外。
※出観集(1170‐75頃)夏「山人は花を踏みてや通ふらんうつきかきをのそとの細道」
③ 自分の家でない別の所。また、家庭や会社機関などの外部。よそ。
※浮世草子・傾城禁短気(1711)一「外(そと)に置かれて当座の花と眺めらるる分は、金が敵の世の中それは是非なし」
④ 家人や仲間以外の人。また、自分以外の人。他人。よその人。
※浮世草子・本朝桜陰比事(1689)二「外の見てさへ此女を悪めば」
⑤ 仏教以外の教え。儒教。
⑥ 考えに入れないこと。問題にしないこと。
※女工哀史(1925)〈細井和喜蔵〉一四「資本家も労働者も今は利害をそとにして只管国家の為めに働かねばならぬ秋である」
⑦ 向こう側。かげ。
※狂言記・盆山(1700)「あのちひさい盆山のそとへ隠れたとあって、見えまい事は」
[語誌](1)語源は、「そ(背)つ(の)おも(面)」(背面・北側・裏側)から転じた「そとも」(同)が「せど(背戸)」への類推もあって「も」を略したという説が妥当か。また、外部の意味で先行する「と(外)」に類似した二音節語が求められ、さらに「そと(背外)」という解釈が「そとも」からの変化を助けた可能性も考えられる。
(2)現代語で「そと」は「うち」と対義関係をもつが「うち」の対義語としては「と(外)」が古い。
(3)②(ロ)に挙げた「枕草子‐三六」は能因本では「そばのかた」とあり、確例としにくいことが指摘されている。
(2)現代語で「そと」は「うち」と対義関係をもつが「うち」の対義語としては「と(外)」が古い。
(3)②(ロ)に挙げた「枕草子‐三六」は能因本では「そばのかた」とあり、確例としにくいことが指摘されている。
はず・す はづす【外】
〘他サ五(四)〙
① 取りつけたり、掛けたりしてあるものを取り去る。はまっている所から抜き出す。取り除く。また、比喩的に、ある人をその位置から追いやる。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
※宇治拾遺(1221頃)一「箭をはづして火とりて見るに」
② つかまえそこなう。とりそこなう。機会などをのがす。また、あやまつ。
※宇津保(970‐999頃)国譲上「忍びて御許につかうまつらん。それをさへはづさせ給ふな」
※日葡辞書(1603‐04)「モウシ fazzusu(ハヅス)」
③ ねらいをそらす。矢などを射て、的(まと)と違う方向にそらす。
※宇治拾遺(1221頃)七「三人ながら召されぬ。試みあるに、大かた一度もはづさず」
④ 衣服などを身から離す。脱ぐ。「えり巻きをはずす」
※虎寛本狂言・茶壺(室町末‐近世初)「一方の肩をはづいてふせって居ましたれば」
⑤ その場から離れる。席を去る。避ける。よける。また、相手の攻撃、思惑などをかわす。「席をはずす」
※玉塵抄(1563)一五「坊主の曾子が弟子をひきつれてその難をはついたぞ」
⑥ 品物などをかすめとる。ちょろまかす。
※浮世草子・日本永代蔵(1688)二「豊嶋筵(てしまむしろ)をはづし、はじめて盗心になって行に」
⑦ 思わず屁(へ)や尿(にょう)をもらす。失禁する。
※咄本・軽口腹太鼓(1752)二「椽先で屁をひとつはづした折ふし」
⑧ 遊女が、商売気を離れて心から客と情事にふける。とっぱずす。
⑨ 琵琶の左手の使い方の一つ。左手のある指で柱を押え、右手の撥(ばち)で弦をかき鳴らしてから、左手の指を柱から離す。
⑩ 能・狂言などのうたい方の一つ。曲の拍子や調子を変えたり、わざと型にはまらない節でうたう。また、本来の調子からずれて音を出す。〔わらんべ草(1660)〕
⑪ 将棋で、ハンデを付けるために、上位者が駒の一部を取り除く。
※咄本・軽口あられ酒(1705)五「将棋は何と。そうけいに片香車はづし候」
はずれ はづれ【外】
〘名〙 (動詞「はずれる(外)」の連用形の名詞化)
① 場所や物などの、範囲の外にちょっと出たところ。末端の終わったその先。
※狭衣物語(1069‐77頃か)四「御几帳のはづれ、けざやかに見えさせ給へる御髪のかかり」
※太平記(14C後)一八「こぼれ懸りたる鬢の端(ハヅ)れより」
② おおい隠す物からあらわれ出たところ。また、その特徴。「つまはずれ(爪外)」の意では、手足の先。転じて、身のこなし、態度。
※御伽草子・鉢かづき(室町末)「たとへ化物にてもあれ、手足のはづれの美しさよ」
③ 長さ・大きさ・仕組などの規準外。
※西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉初「寸法はずれや引出し違へ」
④ ある範囲・仲間から除くこと。
※浮世草子・風俗遊仙窟(1744)三「向後は仙女の仲間帳面はづれなるべし」
⑤ 予測や目標からそれること。矢・鉄砲・くじなどがあたらないこと。
※付焼刃(1905)〈幸田露伴〉二「郊外を行かうなんていふのには、天気が外(ハヅ)れだった日には哀れなものだが」
⑥ かたわれ。末輩。
げ【外】
〘名〙
① 仏語。
(イ) 仏教以外の教え。また、仏教内でも自己以外の立場をさすことがある。⇔内(ない)。
※霊異記(810‐824)上「然れども外を学ぶる者は仏法を誹(そし)り、内を読む者は外典を軽みす」
※十善法語(1775)一「外の世界に桜桃棠梨の花あり」
(ロ) 色などの六境。六外処(げしょ)のこと。〔大般若経‐一一〕
(ハ) 内心に関しないもの。外形。外面。〔勝鬘経‐十受章〕
② 律令制で、外位(げい)を意味する語。
※霊異記(810‐824)下「讚岐の国美貴の郡の大領、外従六位上小屋県主宮手(をやのあがたぬしみやて)」
と【外】
〘名〙
① そと。そとがわ。ほか。屋外。
※万葉(8C後)一四・三三八六「鳰鳥の葛飾早稲を饗(にへ)すともその愛しきを刀(ト)に立てめやも」
※東大寺諷誦文平安初期点(830頃)「表(ト)は錦にして裏は布なり」
② 便所。かわや。
※日葡辞書(1603‐04)「Toye(トエ) マイル〈訳〉廁へ行く」
がい グヮイ【外】
〘語素〙 ある範囲に含まれない部分。そと。ほか。⇔内(ない)。「予想外」「問題外」
※虎明本狂言・楽阿彌(室町末‐近世初)「ふきおこすむじゃうしんの一曲、三千里外にちいんをぜっすとつくられたり」 〔白居易‐八月十五日夜禁中独直、対月憶元九〕
ほか‐
し【外】
〘形シク〙 (名詞「ほか(外)」の形容詞化) 異なるさまである。普通と違っている。
※新訳華厳経音義私記(794)「他形 保可之伎(ホカシキ)可多知」
はず・る はづる【外】
〘自ラ下二〙 ⇒はずれる(外)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報