デジタル大辞泉 「大夫」の意味・読み・例文・類語
たゆう〔タイフ〕【▽大▽夫/▽太▽夫】
2 神主・
3
4 芸能をもって神事に奉仕する者の称号。
5 猿楽座の座長。江戸時代以降は、観世・
6 説経節および義太夫節などの浄瑠璃系統の音曲の語り手。また、義太夫など、名前としても使う。
7 歌舞伎で、
8 近世後期、大道芸・門付け芸などの芸人の称号。万歳の太夫など。
9 官許の遊女のうち最上位。松の位。
( 1 )日本における「大夫」には官職を意味する場合と、位階をさす場合とがある。前者は職の長官の場合で「だいぶ」と読みならわしている(「だいぶ」は別項)。八省の次官の大輔(たいふ)と区別するためという。後者は、一位から五位に通ずる尊称ともされるが、三位以上が卿と称されるのに対して、四位・五位をさすことが多くなり、大夫が本来、尊称であるところから、五位の場合はとくに多用され、五位の別称ともなった。
( 2 )五位は貴族の最下級であったが、門地のない地方の武士などにとっては、これに叙爵し、大夫を称することが栄光を意味した。遊芸人、神職、遊女の主なる者が大夫を称するのもこれに類した事情からであったと考えられる。なお、位階の場合の仮名表記は「たいふ」で、現代の発音では「たゆう」となる。
→「たいふ(大夫)」の語誌
もとは中国周代の官位として,卿(けい)の下,士の上の地位の名称。その後,中国歴朝における各種の官位の呼称となった(〈士大夫〉の項目参照)。日本でははじめ広く尊称として用いられ,令制以前には天皇の御前に侍して奏宣し,議政に参与した〈まへつぎみ〉にも〈大夫〉の字をあてた。令制では,一位以下五位以上を喚(め)す辞(ことば)として〈大夫〉の称を用いることを規定している。官職名でも中宮職・春宮坊・左右京職などの長官を大夫と称し,さらに大弁を〈長官弁〉とか〈弁大夫〉と称した例も記録に見える。ただ長官の場合は〈だいぶ〉と濁って読むのを故実とする。一方,三位以上を公卿と称する慣例が定着するとともに大夫は四位,五位の汎称となり,とくに五位の通称として広く用いられた。平安中期以降,官位相当制がくずれるに伴い,大外記・大史をはじめ八省の丞(じよう)や中宮職・春宮坊の進,近衛将監・衛門尉など,六位相当の官人が五位に昇る例が多くなり,官名に〈大夫〉を加えて称した。その場合,在官のまま五位に昇った者は,大夫外記・大夫史,あるいは大夫進・大夫将監・大夫尉など,大夫+官名の形をとり,それぞれの官の上首として重んぜられた。それに対し,五位に昇ってその官を去った者は,式部大夫・民部大夫,あるいは左近大夫・左衛門大夫など,官名+大夫の形をとり,蔵人(くろうど)も五位に昇って職を去った者は〈蔵人五位〉とか〈蔵人大夫〉と称して,五位蔵人と区別された。以上の用例は《枕草子》《今昔物語集》や諸記録に散見する。平安末期以降,売官売位の盛行に伴い,とくに栄爵(えいしやく)すなわち五位を買う者が多くなって,大夫の称は地方武士の間にまで広まった。また鎌倉時代末ごろ猿楽座の棟梁が従五位下の位を得て大夫と称してから,芸能の世界でも大夫が棟梁的地位を示す称となり,江戸時代には遊女の最上級者の呼称にまでなったが,その場合は〈たゆう〉と称するのを例とした。
執筆者:橋本 義彦
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古訓は「まへつきみ」。大化前後の時代に、大臣(おおおみ)、大連(おおむらじ)とともに朝政に参画し、また奏宣のことを行った官職。『日本書紀』の舒明(じょめい)即位前紀に、皇位継承に関する朝議に大夫が参加したことがみえ、また同前紀に「厳矛(いかしほこ)の中取りもてる事の如(ごと)くにして奏請する人等」とあるのは、天皇と臣下の間にたって中を取りもった大夫の職務をさしていったものと考えられる。律令(りつりょう)官制の整備に伴い、大夫の官職的な性格は失われ敬称化した。公式(くしき)令に、太政官(だいじょうかん)においては三位(さんみ)以上を大夫、寮以上においては四位を大夫、司(し)および中国以下においては五位以上を大夫と称する規定があるが、のちには五位の通称として大夫の語を用いるようになった。なお、中宮職(ちゅうぐうしき)、春宮坊(とうぐうぼう)、皇后宮職などの長官は「だいぶ」と読む。
[柳雄太郎]
大化前代のマエツキミの系譜を引く令制の五位以上の官人。マエツキミは大臣(おおおみ)・大連(おおむらじ)の下位にあって国政に参画する地位もしくはそのような官人層を意味したから,三位以上の公卿に対して四位・五位を大夫と称する場合もあった。さらに公式令によれば,場所により三位以上または四位以上に限って用いられることもあった。のちには四位・五位とくに五位の称として固定し,六位官に任じられている官人が五位に叙された場合,大夫外記(げき)・大夫史などと称し,また叙位と同時にその官を去った場合には,式部大夫・蔵人(くろうど)大夫などと称した。のちには,神主・禰宜(ねぎ)などの神職,能楽などの芸能の座長・主役,また最上位の遊女まで大夫(太夫(たゆう))と称するようになった。
古代,有力豪族の政治的地位をさした称号。6~7世紀においては,臣(おみ)・連(むらじ)姓をもつ畿内の有力豪族に与えられ,天皇への奏上や勅命下達,重要政務の合議を行った。推古朝の冠位十二階で大小の徳冠を与えられた階層にほぼ相当。律令制の形成とともに,大夫層は五位以上の位階を与えられる貴族官人に拡大・再編され,以後,大夫は五位以上ないし五位の官人の通称となった。
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…もとは中国周代の官位として,卿(けい)の下,士の上の地位の名称。その後,中国歴朝における各種の官位の呼称となった(〈士大夫〉の項目参照)。日本でははじめ広く尊称として用いられ,令制以前には天皇の御前に侍して奏宣し,議政に参与した〈まへつぎみ〉にも〈大夫〉の字をあてた。…
…一部芸能者の称号。大夫とも書く。元来は中国における五位にならって,日本でも五位の官人が芸能・儀式をとりしきるならわしが古代にあった。…
…もとは中国周代の官位として,卿(けい)の下,士の上の地位の名称。その後,中国歴朝における各種の官位の呼称となった(〈士大夫〉の項目参照)。日本でははじめ広く尊称として用いられ,令制以前には天皇の御前に侍して奏宣し,議政に参与した〈まへつぎみ〉にも〈大夫〉の字をあてた。…
…これ以後,歴史は楚を中心とする南と,晋を中心とする北との対立の形勢となり,両強国の間にあった諸国は,2国の抗争に巻き込まれ,戦いに明け暮れた。しかも諸国の内部では身分制が崩れて内乱が頻発したため,しだいに平和を求める声があり,前546年に宋の都で晋・楚など10ヵ国の大夫が集まり和平の誓いがなされ,10余年の平和が保たれた。この間,2国はそれぞれ諸国を集めて会盟を行い,しだいに国家連合が形成され,統一国家への気運が出はじめた。…
※「大夫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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