真言密教のよりどころの本尊。宇宙の真理そのものを体現しているとされ、
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真言(しんごん)密教の教主。大日とは「偉大な輝くもの」(サンスクリット語マハーバイローチャナMahāvairocanaの訳。摩訶毘盧遮那(まかびるしゃな)と音写)を意味し、元は太陽の光照のことであったが、のちに宇宙の根本の仏の呼称となった。『大日経』『金剛頂経(こんごうちょうぎょう)』など真言密教のもっとも重要な経の教主。思想史的には『華厳経(けごんきょう)』の毘盧遮那如来が大日如来に昇格したものと推定されるが、前者は経中で終始沈黙しているのに対し、後者は教主であるとともに説主でもある。普通、仏の悟りそのものの境地は法身(ほっしん)といわれ、法身は色も形もないから説法もしないとされる。けれども大日如来は法身であるにもかかわらず説法し、その説法の内容が真言(語)、印契(いんげい)(身)、曼荼羅(まんだら)(意)である。法身大日如来がこのような身・語・意の様相において現れているのが三密加持であり、これが秘密といわれるのは、この境地は凡夫(ぼんぶ)はもちろんのこと十地(じゅうじ)(菩薩(ぼさつ)修行の段階を52に分け、そのなかの第41から第50位をいう)の菩薩もうかがい知ることができないからであるとされる。しかし真言行者は瑜伽観行(ゆがかんぎょう)によってこの生においてこの境地に至るとされ、これは大日如来と一体になることを意味する。ゆえに大日如来は究極の仏でありながら衆生(しゅじょう)のうちに内在する。仏の慈悲と智慧(ちえ)の面から胎蔵界・金剛界両部の大日が説かれる。
[吉田宏晢]
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サンスクリットのマハーバイローチャナ(摩訶毘盧遮那(まかびるしゃな))の訳。光明遍照(こうみょうへんじょう)の意であることから,大日という。真言密教の本尊。あらゆる仏・菩薩の本地で,理智の法身であり,真理そのもの。一般に菩薩形をとるが,「金剛頂経」による金剛界曼荼羅(まんだら)と「大日経」にもとづく胎蔵界曼荼羅では形像は異なる。前者は金剛界五仏の中尊として白色で智拳印(ちけんいん)を結び,周囲に四仏を配する。後者は胎蔵界九尊の中尊として,黄金色で法界定印(ほっかいじょういん)を結び赤色の蓮華に座し,周囲に8葉の蓮弁上の4仏4菩薩を配する。奈良円成(えんじょう)寺・高野山金剛峰寺などの大日如来像が有名。日本の種々の塔は,それ自体が大日如来の象徴と考えられている。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…これはもともと人間のみそぎのように災厄を除こうとする民間信仰の強い要求が基底にあったからである。西日本では牛の守護神として大日如来の信仰が盛んであり,その縁日に牛をつれて参拝し,境内の草や樹枝を厩(うまや)にさしたり護符を牛小屋にはるなどの風習も広がった。また,農民は大日講,万人講などを結んで金銭を集め,それによって講員の耕牛を順次購入していく方式なども考えて実行していた。…
…その智慧の光明があまねく一切に及び,慈悲の活動が永遠不滅とされ,密教の体系ではすべての諸仏諸菩薩はこの如来より出生したとされる。《大日経》に説く胎蔵大日如来と,《金剛頂経》に説く金剛界大日如来の2種があり,両経が展開する説に基づいた,いわゆる両界曼荼羅の中心に位置する。すなわち胎蔵曼荼羅では中台八葉院の中心に,金剛界曼荼羅では成身会(じようじんえ)や一印会(いちいんえ)等の中心に描かれる。…
…この塔形は日本へ仏塔を伝えた中国,朝鮮半島にはなく,日本で創始されたと思われる。平安時代初め,空海は高野山で大日如来の三昧耶形(さまやぎよう)をモデルにして毘盧遮那法界体性塔(びるしやなほつかいたいしようとう)を建立したが,この塔は三昧耶形そのままの宝塔形式(円形平面の一重塔)に裳階(もこし)(庇)を付けた二重の形式で,下重は方5間で内部には円形に並ぶ12本の柱列が2通りあったらしい。これを大塔(だいとう)形式ともいい,はじめは空海に関係の深い真言宗寺院で建てられたが,密教の盛行にともない,小型・簡略化して下重を方3間とし,内部の円形柱列をなくした現在みられる形式の多宝塔が,天台宗をはじめ他宗の寺院でも広く建てられるようになったと推考される。…
…知行宛行状(あてがいじよう)に付属する文書で,知行地とその高(石高,貫高)の明細を書き記したもの。〈知行書立〉ともいう。知行宛行状では知行高の記載が国郡の範囲にとどめられているので,〈目録在別紙〉として知行目録でその詳細を示した。知行宛行状が将軍ないし大名自身の発給する直状(じきじよう)の形式をとったのに対し,知行目録は老中,勘定奉行,代官らの実務に携わる責任者の奉書の形で発給されるのが通例であった。…
※「大日如来」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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