大菩薩峠(読み)だいぼさつとうげ

精選版 日本国語大辞典 「大菩薩峠」の意味・読み・例文・類語

だいぼさつ‐とうげ ‥たうげ【大菩薩峠】

[一] 山梨県塩山市と、北都留郡小菅村との境にある峠。笛吹川支流の日川と多摩川支流の小菅川との分水界。甲府盆地と多摩川上流域とを結ぶ甲州裏街道青梅街道)の難所秩父多摩甲斐国立公園の一部。標高一八九七メートル。
[二] 小説。中里介山作。大正二年(一九一三)~昭和一六年(一九四一発表未完幕末、虚無的な剣士、机龍之助を中心に展開する数十名におよぶ人物交錯と、人生流転諸相を描く。後の大衆文学に多大の影響を与える。

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デジタル大辞泉 「大菩薩峠」の意味・読み・例文・類語

だいぼさつ‐とうげ〔‐たうげ〕【大菩薩峠】

山梨県北東部にある峠。多摩川上流と甲府盆地とを結ぶ、青梅おうめ街道要所
中里介山長編小説。大正2年(1913)から昭和16年(1941)にかけて発表。作者の死により未完。幕末を舞台に、虚無的な剣士机竜之助をめぐる数十人に及ぶ人物の流転のさまを描く。

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百科事典マイペディア 「大菩薩峠」の意味・わかりやすい解説

大菩薩峠【だいぼさつとうげ】

山梨県東部,塩山(えんざん)市(現・甲州市)と北都留郡小菅村の境にある峠。標高1897m。北西には日本百名山にも選ばれている大菩薩嶺(2057m)がある。峠の名は後三年の役で奥州に向かった源義光当地で八幡大菩薩の加護によって通行できたことに由来するという。しかし難儀な峠越えであったため,無人の荷物引取りの習俗があり,大峰荷渡しとよばれる。秩父多摩甲斐国立公園に属し,笛吹川の支流日川(にっかわ),多摩川の支流小菅川の谷からハイキングコースがあり,秩父山地,富士山,南アルプスなどの展望がよい。中央線塩山駅から麓までバスが通じる。
→関連項目青梅街道雁坂峠

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大菩薩峠」の意味・わかりやすい解説

大菩薩峠
だいぼさつとうげ

山梨県北東部,甲州市小菅村の境にある峠。標高 1897m。北西に大菩薩嶺がある。秩父山地の大菩薩連嶺を越える峠で,近世までは青梅街道が通り,甲府盆地多摩川上流域を結んだ。奥秩父の山々や南アルプス富士山,甲府盆地を一望できる。秩父多摩甲斐国立公園に属する。中里介山の小説『大菩薩峠』で知られる。

大菩薩峠
だいぼさつとうげ

中里介山の大河小説。 1913年から 41年まで書き継がれたが,作者の死によって未完に終った。盲目の剣士机龍之助を中心に複雑にからみ合うさまざまな登場人物を配して,くしき因果と業にからまれて流転する人間模様を描いてゆく。ニヒルな美剣士を創造して時代小説の一つの型を定めたが,後半は次第に作者独自の大乗観を反映させて,怨念や恩讐をこえた新しい救済の世界を目指す思想小説に近づいた。近代化を拒んだ日本の土着を対象化した作品としても再評価されている。

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デジタル大辞泉プラス 「大菩薩峠」の解説

大菩薩峠

①中里介山の長編小説。1913年から1941年にかけて発表。作者死亡により未完。
②1957年公開の日本映画。①を原作とする。監督:内田吐夢、脚色:猪俣勝人、柴英三郎、撮影:三木滋人、美術:鈴木孝俊(第14回毎日映画コンクール美術賞)。出演:片岡千恵蔵、中村錦之助、月形龍之介、岸井明、波島進、大河内傳次郎、清川荘司ほか。1958・1959年に続編が公開されている。
③1966年公開の日本映画。①を原作とする。監督:岡本喜八、脚色:橋本忍、撮影:村井博。出演:仲代達矢、新珠三千代、内藤洋子、藤原釜足、中谷一郎、加山雄三ほか。

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世界大百科事典 第2版 「大菩薩峠」の意味・わかりやすい解説

だいぼさつとうげ【大菩薩峠】

山梨県北東部,秩父山地にある峠。標高1897m。西の笛吹川支流,東の多摩川上流の分水嶺で,北に大菩薩嶺(2057m)がある。甲州道中の脇往還,青梅街道の第一の難所であったが,明治初期に青梅街道が北側の柳沢峠(1472m)をまわるようになって街道からは外れた。中里介山の長編小説《大菩薩峠》によって有名になり,文学碑がある。富士山,南アルプス,秩父連峰の眺めがよく,ハイキングの適地。近くには山荘もあって宿泊ができ,中央本線塩山駅から登山口の裂石までバスの便がある。

だいぼさつとうげ【大菩薩峠】

中里介山の代表的長編小説。1913年に《都新聞》に連載されたのを皮切りに《東京日日新聞》《国民新聞》《読売新聞》《隣人之友》などに書き継がれ,書下ろしを加えて第41巻まで執筆されたが,44年に作者の病没で未完となった。 作者みずからこの作品の趣意を説明して〈人間界の諸相を曲尽して,大乗遊戯の境に参入するカルマ曼陀羅の面影を……うつし見ん〉と述べているが,特定の主人公はなく,音無しの構えの無明の剣客机竜之助も一点景にすぎない。

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世界大百科事典内の大菩薩峠の言及

【片岡千恵蔵】より

…戦中戦後の大映・東横時代を経て,51年,東映の設立に参加,東映の重鎮スターとして活躍した。〈遠山金四郎〉シリーズ,渡辺邦男および内田吐夢の監督で2度もシリーズ化された《大菩薩峠》(1953および1957‐59),戦後初の《赤穂城》を含む〈忠臣蔵〉映画,そのほか〈新撰組〉もの,オールスター任俠時代劇,内田吐夢監督と組んだ《血槍富士》(1955),《黒田騒動》(1956)等々の時代劇のほか,大映時代の《七つの顔》(1947)にはじまる〈多羅尾伴内〉シリーズ,〈金田一耕助〉シリーズ,《奴の拳銃は地獄だぜ》(1958)などのギャング映画と,現代劇も数多く,その千変万化ぶりは東映映画の魅力を象徴したといってよい。【山根 貞男】。…

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