大陸棚(読み)たいりくだな(英語表記)continental shelf

精選版 日本国語大辞典 「大陸棚」の意味・読み・例文・類語

たいりく‐だな【大陸棚】

〘名〙 大陸周辺に広がる傾斜のゆるい海底。深さは平均約二〇〇メートル。漁場となっている所が多く、また地下資源も豊富。国際法上では、海岸に隣接しているが領海外にある水深二〇〇メートル以内(または海底区域天然資源開発可能なところまで)の海床および海底地下。一九五八年、ジュネーブの海洋法国際会議で採択された「大陸棚に関する条約」により国際法上の制度として確立。大陸棚に対しての探索と天然資源の開発に関しては、沿岸国が独占的な権利を行使することができる。陸棚。

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デジタル大辞泉 「大陸棚」の意味・読み・例文・類語

たいりく‐だな【大陸棚】

地理学上、大陸周辺にある、深海に向かう傾斜が大きくなる部分までの海底。おおむね水深約200メートルまでの領域。陸棚。
国連海洋法条約で認められた、各国海底資源を優先的に利用できる海底。その国の排他的経済水域(沿岸200海里)の外側150海里か、水深2500メートルの等深線から100海里のいずれか遠い方の範囲内で認められる。
[類語]岩棚

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百科事典マイペディア 「大陸棚」の意味・わかりやすい解説

大陸棚【たいりくだな】

陸棚とも。大陸周縁にある浅い平らな海底。平均傾斜0°07′,外縁は平均水深130mで傾斜の急な大陸斜面になる。面積は全海洋の7.4%。外縁水深はかなり一定だが,これは第四紀の最終氷期海水準低下の際に波浪により平たん化されたもの。陸上河川に続く溺れ谷(おぼれだに)や旧海岸線を示す海底段丘,粗粒堆積物が分布する。大陸棚各深度からの堆積物中の14C年代測定では外縁形成は1万8000年前で,その後6000年前までに急速な海水準上昇があったという。 第2次大戦後各国は大陸棚の天然資源に対する権利が沿岸国に留保されるという宣言を相次いで発し,1958年の海洋法会議で採択された大陸棚に関する条約も公海自由の原則と調和を保ちつつ大陸棚に対する沿岸国の排他的権利を認めた。さらに1982年新海洋法条約が成立。〈大陸棚とは沿岸国の領海をこえてその領土の自然の延長をたどって大陸縁辺部(コンチネンタル・マージン)の外縁まで延びている海面化の区域の海底およびその下部をいう〉と定義。ただし〈大陸縁辺部の外縁が領海の幅を測定するための基線から200カイリの距離まで延びていない場合には,当該基線から200カイリまでの海面下の区域の海底およびその下部を大陸棚とする〉,逆に〈大陸縁辺部が当該基線から200カイリを超えて延びている場合には,次のいずれかの線を大陸棚の外側の限界線とする。1.堆積岩の厚さが基線から大陸斜面(コンチネンタル・スロープ)脚部までの最短距離の少なくとも1%であるような最も沖合側の定点を結ぶ線。2.大陸斜面脚部から60カイリを超えない定点を結ぶ線〉,また〈限界線は,当該基線から350カイリ,または水深200mの等深線から100カイリ(のいずれか遠い方)を超えてはならない〉と定められた。地理学上の大陸棚を超えて大陸縁辺部まで含むものが国際法上定義されたが,二つ以上の国が向かいあっているか,隣接している場合の大陸棚の境界画定については,新海洋法条約でも明確な解決はなされなかった。
→関連項目海底地形海洋法条約海洋油田漁業漁場石油石油探査底引網漁業大陸メタン・ハイドレート

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「大陸棚」の意味・わかりやすい解説

大陸棚
たいりくだな
continental shelf

海岸の低潮線から沖合いに向け深さが急に増大する所までの地域。非常に傾斜が緩やかで、傾斜角は平均でわずかに0度7分にすぎない。深さの傾斜が急増する所(大陸棚外縁)の深さは、場所によって30メートルから600メートルぐらいまであり、大陸棚の幅も、ほとんどないに等しいものから1400キロメートルにも及ぶ所まである。平均すると大陸棚の幅は72キロメートル、外縁の水深は140メートルとされている。海底は非常に平坦(へいたん)で、比高20メートルを超える凹凸はほとんどないが、ときには海底谷や海底凹谷などが刻まれていることもある。

 大陸棚の成因については、氷河期が関係していることが定説となっている。もっとも一般的には、いちばん最近の氷河期、ビュルム氷期(約2万年前)のおり、海水は雪氷となって大陸上に滞留したため海面が低下し、その過程で波食により平坦面ができ、ふたたび海面の上昇により水没して大陸棚になったと考えられている。ビュルム氷期最盛期の氷河の広がりや厚さの推定を基にして、海面の低下を計算すると、現在より100~150メートル低かったことになり、大陸棚外縁の平均の深さと一致する。

 氷期の海面低下時に、河口部に発達した沖積平野が、海面の上昇により水没して大陸棚になったと考えられる場合や、氷河期に海に押し出された大陸氷河が海底を氷食して平坦面をつくり、氷河が溶けたあとに大陸棚となったと考えられる場合もある。

 大陸棚は、これまでも底引漁業や沿岸漁業の好漁場として利用されてきたが、最近ではさらに養殖漁業の場として活用される一方、海底油田や海底炭鉱などの海底資源の場、海上空港や埋立てによる臨海工業地帯の造成など海洋空間としての利用など、ますます価値が高まってきた。この大陸棚を自国の権益のもとに置こうとして、大陸棚の専有を宣言する国も相次いだ。しかし、その定義がまちまちで混乱がおこっているため、国連海洋法会議において統一が図られつつある。大陸斜面脚部の勾配(こうばい)変化の最大の所を基点とし、外側に60海里まで、または堆積(たいせき)層の厚みが基点からの距離の1%に減少する所までのいずれかとされている。ただし最小でも海岸から200海里まで、最大でも350海里または水深2500メートルの外側100海里以内とされている。

[安井 正]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大陸棚」の意味・わかりやすい解説

大陸棚
たいりくだな
continental shelf

陸棚ともいう。大陸や大きな島の周辺の深さ約 200mまでの傾斜がきわめてゆるやかな海底。しかし,水深は地域によって多様である。平均の傾斜角度は約6′で,海岸平野の延長部とみなされ,地質学的には海水におおわれた大陸といえる。全海洋面積の約 7.6%を占める。大陸棚が平坦な原因として,第四紀氷河時代の氷期,間氷期の海面変化による波食や土砂の堆積作用があげられる。大陸棚の基盤は陸地の延長部にあたり,石油,石炭など地下資源も埋蔵されている。海底炭田海底油田の開発はおもに大陸棚地域で行われている。また水産資源の宝庫である場合が多い。大陸棚は,1958年の大陸棚条約で沿岸国の天然資源の探査と開発のための主権を認められたが,その範囲は第3次国連海洋法会議において,大陸棚マージンの外縁までに拡大される傾向にある。

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世界大百科事典 第2版 「大陸棚」の意味・わかりやすい解説

たいりくだな【大陸棚 continental shelf】

大陸(あるいは島)に隣接する海底で,低潮線から始まり,大洋の深所に向かって傾斜の著しい増加がおこるところまでをいう。この傾斜変換点を連ねた地帯を大陸棚外縁shelf edgeという。大陸棚面積は全海洋面積の7.4%で,北半球では12%,南半球では3.9%である。三大洋のうち大西洋が9.9%,太平洋5.2%,インド洋4.2%である。大陸棚外縁の深さは30~600mにわたるが,多くは約140mである。大陸棚の幅は0~1400km,平均して約72km,平均傾斜0゜7′といわれる。

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知恵蔵 「大陸棚」の解説

大陸棚

大陸または島に隣接する棚状の海底。大部分は水深100〜200m、幅(低潮線から急に深くなる外縁までの距離)は平均72km、総面積は全海洋面積の7.4%。氷期の海面低下時の浸食作用で形成され、その後、堆積物に覆われてさらに平坦になったと考えられている。大陸棚海域は一般に好漁場で、海底石油や天然ガス、鉱物資源の埋蔵量も多い。

(小林和男 東京大学名誉教授 / 2007年)

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世界大百科事典内の大陸棚の言及

【海底地形】より

… 大陸斜面slopecontinental slopeisland slope―大陸棚外縁からコンチネンタルライズの始まるところまで,あるいは傾斜の一般的減少が起こる地点までの斜面。 大陸棚shelfcontinental shelfisland shelfinsular shelf―大陸に隣接する(あるいは島の周囲)地帯で,低潮線から始まり,大洋の深所に向かって傾斜の著しい増加が起こる所までをいう。 大陸棚外縁shelf edgeshelf break―傾斜の著しい増加が起こる大陸棚の外縁の狭い地帯。…

【海】より


[海の深さ]
 世界の海洋の深度は,平均約4000mであるが,世界で最も深い記録は,太平洋のマリアナ海溝にあり,1万0920mにも達する。一般に海面から約200mの深さまでは陸地の延長とみられ,大陸棚と呼ばれる(図2)。ここから約4000mまでの深さの海底の占める面積は小さく,その傾斜は急で,これを大陸斜面という。…

【海底地形】より


[大陸縁辺部]
 大陸(または島)の周辺には浅く平たんな海底があり,その外縁で急に傾斜を増大し深海に達している。この平たん部が大陸棚,急斜面が大陸斜面,傾斜変化部が大陸棚外縁である。大陸斜面下部には大陸性堆積物が大洋底に向かって広がっている階段状あるいは緩斜面の地形があり,コンチネンタルライズといわれる。…

【海洋法】より

…最近の海洋利用は質量ともに目覚ましいものがあるが,それを反映して海洋法の規制する範囲も多岐に及んでいる。すなわち,(1)公海,領海,排他的経済水域などの水域で構成される海洋秩序,(2)海洋や海峡における航行や上空飛行の問題,(3)生物資源や鉱物資源などの開発の問題,これに関連して大陸棚や深海底などの新たな法制度,(4)海洋汚染,海洋環境保護の問題,(5)海洋の科学的調査,海洋技術の開発と移転の問題などである。海洋法は,国際法のなかでも最も古い歴史をもつ分野であるが,〈海洋法Law of the Sea〉という言葉が用いられたのはごく最近である。…

※「大陸棚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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