翻訳|continent
地形学的には、地球上の広大な面積の陸地をいう。普通、大陸とよばれる陸塊は、この意味で用いられている。アジアとヨーロッパ(ユーラシア)、アフリカ、北アメリカ、南アメリカ、オーストラリア、南極大陸の七大陸がある。オーストラリアは島大陸とよばれることもあるが、世界最大の島グリーンランドの面積(217万5600平方キロメートル)の約4倍の広さがある。
地質学的・地球物理学的な意味の大陸は、花崗(かこう)岩質層が分布している範囲をさしている。この範囲の花崗岩質層の厚さは場所によってまちまちであるが、10キロから二十数キロメートルで、地震波のP波(縦波)の伝播(でんぱ)速度は毎秒6キロメートル程度である。花崗岩質層は、大陸上だけでなく、大きい海洋の周縁部にも広がっている。したがって、大陸を取り巻く海洋底を含めた範囲を大陸地域(大陸地塊)とよび、この地域よりも外側の海洋域を海洋地域(海洋地塊)とよぶこともある。大陸地域を形成している花崗岩質層と、海洋地域を形成している玄武岩質層とを分けている線状の地帯には安山岩が分布しており、大きい海洋の周縁域を取り巻いている。この線状帯は安山岩線とよばれ、日本列島はこの線の大陸側の域内にある。
大陸の形成は、地質時代における海進などの影響が要因となっている。たとえば、北フランスからオランダに及ぶ大西洋岸や北海南部地方は、新生代更新世(洪積世)の最終氷期(ヨーロッパ・アルプスのビュルム氷期)の最盛期後期に始まったフランドル海進の影響を受けたことが明らかにされている。この海進は後氷期の海進ともよばれ、約1万8000~6000年前の期間における陸地の沈降、海面の上昇期をさしている。ヨーロッパ以外の世界各地においても、この海進とほぼ同時期におこった陸地周縁の相対的沈水期が知られている。日本の有楽町海進はこれにあたる。これは先史時代の海進または縄文海進とよばれることもある。アメリカ合衆国東部のニュー・イングランドやイギリスのイングランドなどにおいても、フランドル海進の影響は詳しく調査されている。このような世界的海進の原因は、更新世末期以降の氷河の融水による氷河性海面変動と考えられている。海面の昇降運動(ユースタチック運動)は、更新世以前の地質時代にも行われた。また各大陸の相対的な位置も地質時代によって異なっていた。
[有井琢磨]
古くは1875年に提唱されたイギリスの地質学者グリーンL. W. Greenの四面体説がある。これは、地球の冷却によって、南極と北極両地方、ヨーロッパ・アフリカ両大陸と太平洋、北アメリカとインド洋などがそれぞれ反対側に生成したとする説であったが、アイソスタシーの事実に反することなどから顧みられなくなった。オーストリアの地質・古生物学者ジュースは、古くて硬い海成層からなる各大陸が、褶曲(しゅうきょく)や断層などを伴う地殻運動を幾度か受けたのち、現在の大陸が形成されたとした。また、ドイツの気象・地球物理学者ウェゲナーは、原始大陸すなわちパンゲアとよばれた単一の大陸が分裂・移動して現在の大陸になったとする大陸移動説を提唱し、イギリスの地質学者ジョリーは、地球内部の放射性物質の崩壊によって生じた熱の対流が、地表近くで冷却してふたたび沈下するという熱輪廻説(ねつりんねせつ)を唱えた。ウェゲナーの大陸移動説は、大陸を移動させる原動力の説明が物理的に不十分であったことから否定されていたが、しかし最近の古地磁気学、海底の熱流量、地磁気異常などの研究成果などから、ウェゲナーの説はプレートテクトニクス説によって修正、復活した。すなわち、大陸そのものは移動しないが、大陸地殻をのせたプレート(地球表面部の硬い板状物質)が、ベルトコンベヤーのように移動するという学説である。プレート移動の原動力としては、地球の最外部の地殻と中心部の核との間にあるマントル内の対流(マントル対流)のほかに、プレートの重さによる落ち込みの効果などが考えられている。
大陸の形容詞を付した名称のなかには、大陸の全域をさしていないものがある。たとえば大陸棚は、大陸の周縁部にある緩傾斜の海底である。また大陸弧は、大陸内にある弧状山脈をさし、大陸氷床は、大陸の一部を覆った氷河をさしている。
[有井琢磨]
『竹内均編『別冊サイエンス 特集・地球の物理 プレート・テクトニクス』(1975・日経サイエンス社)』▽『A・ウェゲナー著、竹内均訳『大陸と海洋の起源』(1975・講談社)』▽『都城秋穂・安芸敬一編『岩波講座 地球科学12 変動する地球Ⅲ』(1979・岩波書店)』▽『町田貞編『地形学辞典』(1981・二宮書店)』▽『A・ヴェーゲナー著、都城秋穂・紫藤文子訳『大陸と海洋の起源』全2冊(岩波文庫)』
地理学的には陸地のうち面積の大きなものを指す。実際にはユーラシア(アジア,ヨーロッパ),アフリカ,北アメリカ,南アメリカ,南極,オーストラリアの6大陸である。大陸の中心には先カンブリア時代の花コウ片麻岩などの古い岩層からなる楯状地が大陸核としてあり,その周囲に同心円状に順次外側ほど若い時代の造山帯が取り囲む構造を呈する。北アメリカ大陸に例をとれば,ハドソン湾周辺のカナダ(ローレンシア)楯状地,その外縁のグレート・プレーンズ,セントラル・ローランドなどの水平層古期岩の大陸台地,その外側のアパラチアなどの古期造山帯,さらに外郭のロッキー,シエラ・ネバダなどの新期造山帯,最外郭の海岸平野といったおおまかな同心円構造がみられる。上記6大陸は古生代石炭紀後期には,A.ウェゲナーがパンゲアPangaeaと名付けた一つづきの超大陸であったが,その後分裂して現在の配置になったと考えられている(大陸移動説,1912)。それに先立ち,1901年E.ジュースは,南アメリカ,アフリカ,インド半島,オーストラリア,南極など南半球またはそれに近く分散してある各大陸の地層や古生物の分布に共通的特色があるのに着目し,これらは中生代のある時期まで超大陸の一部分であったと考え,この超大陸をゴンドワナ大陸と名付けた。
執筆者:式 正英
大陸は地殻が海洋底に比べて厚く(平均35km),その上部に花コウ岩質層を有する地表の一部分で,地表全体の40%の面積を占める。そのうち73%は海面上に露出した陸地であるが,残りの27%は海面下にあって,大陸棚や大陸斜面,古島弧などをつくっている。大陸は衝突や沈み込み(サブダクション)が進行している造山帯と,それ以外の安定大陸Kratogenとに分けられる。安定大陸にはホットスポットの影響をうけた地点以外には地震も火山も存在しない。カナダ楯状地やバルト楯状地やオーストラリア内陸は安定大陸の典型である。安定大陸下のリソスフェアの厚さは100kmをこえる。花コウ岩質岩石中に含まれる放射性核種のために安定大陸の表層地殻熱流量は,リソスフェアが厚くて地球内部からの熱が流れ出さない割には大きく,全世界の海洋底平均値の1.2HFU(HFUは地殻熱流量の単位で,1HFU=10⁻6cal/cm2・s)とほぼ等しい程度である。大陸は密度が小さい地殻が厚いために全体としてアセノスフェアより軽いので,海底リソスフェアのようにマントル深部へ沈み込むことができない。したがって,もしプレート収束部の両側に大陸が存在すると,サブダクション帯はできずに,衝突が起こり,アルプスやヒマラヤのような褶曲山脈をつくる。そこでは,地殻は厚くなり,上面の地層ははげしく褶曲して高い山脈をつくる。
執筆者:小林 和男
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…最も外側の卵の殻に相当する部分が地殻であり,白身および黄身に相当する部分がマントルおよび核である。地殻は大陸部で平均30kmくらいの厚さをもち,その上部はおもに花コウ岩質岩石,下部はおもに玄武岩質岩石によって構成される。海洋部では平均5kmくらいの厚さをもち,堆積層と玄武岩質岩石により構成され,花コウ岩質岩石を欠く。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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